イエスティン・デイヴィスのリサイタル@ケルン

昨年末から各地で様々な演目・曲目で聴いているイエスティン・デイヴィスだが、
このリサイタルはまさに集大成、ほとんど全て聴かせます!という内容だった。

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2014年5月17日 @ Kölner Philharmonie

Iestyn Davies Countertenor
Malcolm Martineau Klavier

Henry Purcell / Walter Bergmann / Michael Tippett
"Music For A While" (1692)
aus der Musik zum Schauspiel "Oedipus, King of Thebes" Z 583 von John Dryden und Nathaniel Lee. Gesetzt für Singstimme und Klavier

Henry Purcell / Benjamin Britten
"Sweeter than Roses" Z 585/1
aus "Pausanias, the Betrayer of his Country" Z 585. Bearbeitung für Singstimme und Klavier

Henry Purcell / Benjamin Britten
"Lord, what is man?" (A Divine Hymn) Z 192 (1693)
für Singstimme und Klavier (1947)



John Dowland
"In darkness let me dwell"
für Singstimme und Klavier

Thomas Adès
Darknesse Visible (1992)
für Klavier

Henry Purcell / Thomas Adès
"Full Fathom Five"
für Singstimme und Klavier. Text von William Shakespeare

Michael Tippett
Songs for Ariel (1962)
für Singstimme und Klavier. Texte von William Shakespeare

Franz Schubert
Der Tod und das Mädchen op. 7,3 D 531 (1817)
für Singstimme und Klavier. Text von Matthias Claudius

Johannes Brahms
Alte Liebe op. 72,1. Text von Karl Candidus
aus: Fünf Gesänge op. 72 (1876–77)

Johannes Brahms
Unüberwindlich op. 72,5. Text von Johann Wolfgang von Goethe
aus: Fünf Gesänge op. 72 (1876–77)

Pause

Johann Sebastian Bach / Benjamin Britten
Five Spiritual Songs
für hohe Stimme und Klavier (1969/1971)

Nico Muhly
Four Traditional Songs (2011)
für Singstimme und Klavier

Benjamin Britten
The Salley Gardens
aus: Folk Song Arrangements. Vol. I British Isles (1941–42)

Benjamin Britten
"There's none to soothe"
aus: Folk Song Arrangements. Vol. III British Isles (1945–46)

Benjamin Britten
Oliver Cromwell
aus: Folk Song Arrangements. Vol. I British Isles (1941–42)


まず最初の3曲は、パーセル作曲だがピアノ伴奏と声楽用にティペットやブリテンらが
現代風にアレンジしたもので、Music for a while とSweeter than roses は昨年11月と
12月にも聴いている。
拙ブログ名もそう名付けているほど愛着のある、Music for a while で始まるコンサート
には弱い。
これは通常のパーセル作曲のヴァージョンでチェンバロ伴奏などで歌われると、内省的な
歌詞と陰と陽が巧みに絡み合う曲調とによって、悲痛の中に希望の灯がまたたくようで、
胸に痛みと喜びを交互に感じる。
しみじみと心に沁みる余韻を残すから、どちらかというとアンコール向けの曲ではないか
とも思える。
だがティペット編曲になると、男性的な力強さのあるイエスティン君の歌声とピアノ伴奏
とも相まって、この曲のイメージが切々とした心情の吐露とは全く別のものなるのである。
聴く者に勇気を与える方法のアプローチが異なるとでも言おうか、物思いに沈む者を現実に
引き戻して最後には突き放すようなそっけなさがあって、まるで「風たちぬ、いざ、生きめ
やも」という思いにさせる。自分の力で、上を向いて生きろと肩を押されるような気分に
なるのである。

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今回のピアニスト、マルティノーによる伴奏は、音量が非常に控えめで歌唱の邪魔をせず、
主張しすぎたりリードを取ることもなく、いい具合に寄り沿っていて、好感度大であった。

ダウランドの In darkness let me dwellといえば、メランコリーの真骨頂だ。
2月3月4月に立て続けにリリースされたイエスティン君のCDの中でも、リュートのトマス・
ダンフォードと組んでのダウランドのリュート・ソング集 The Art of Melancholyは白眉
である。
今回はモダンピアノ伴奏だったのだが、リュートに劣らないほどデリケートで切々とした
ピアノ演奏とイエスティン君のシンとした暗さをたたえた歌唱がとても自然にマッチして
いた。途切れたように終わるエンディングが見事で、メランコリックでありながら、
じめじめしたところがなく、さわやかである。

アデス作曲のピアノ曲 Darknesse Visibleもはかなげな美しさを湛えたいい曲であった。

今回のリサイタルにはピアノ曲による水増しがほとんどなく、ソロ・リサイタルだから
ほぼ出ずっぱりで次から次まで様々な曲を歌うわけで、歌手にとっては大変だろう。
特にびっくりし興味を惹いたのは、プログラムにシューベルトとブラームスの歌曲が入って
いることだ。

イエスティン君は歌詞の内容を非常に重要視し、明瞭な発音を心がけているのが、毎度
印象に残る。曖昧さを嫌うのであろう。言葉の持つ重みや意味を直に聴衆に伝えたいという
使命感のようなものさえ感じさせる真摯な態度が表れているのである。
それは英語のみならずドイツ語の歌詞の発音にも当てはまり、同行したドイツ人の友人、
語学および哲学教師もイエスティン君の歌唱の発音の明瞭なことと美しさには感心していて、
意見の一致を見た。

会場はケルンのフィルハーモニー・ホールで、舞台が中央下方にあるヴィンヤード型だ。
カウンターテナーによるリサイタルには客席数が多すぎるきらいがあるが、音響的に何の
問題もなかった。ピアノ伴奏は控えめなのに弱音まで聴きとれるし、イエスティン君は声の
飛ばし方がうまいので、大ホールや大きな歌劇場でも全く不安を感じさせない。安心して
聴くことができるのである。

後半は、バッハや古謡を現代作曲家がアレンジした歌曲である。
特に印象に残っているのは、ニコ・マーリーが編曲したFor Traditional Songsだ。
スコットランドやヨークシャー地方などの古謡を現代的にアレンジしたもので、歌の
導入はいつもア・カペラで、そのあとからピアノ伴奏がそっと寄り沿う。フィリップ・
グラスを思わせるようなミニマルな美しさのある曲たちである。
物語を紡ぎだすような書法で作られた曲であり、歌詞自体にもヴィジュアルなストーリーが
はっきりあることと明瞭な発音の歌唱のため、耳から入ってくる音楽が頭の中で可視化され
るような気分になる。まるで映画を見ているような具合で、荒涼とした風景が眼前に現れる
のだった。
ニコが古謡をイエスティン君のために、彼の声が一番美しく聞こえる音域に編曲したものと
思しく、彼の透徹した高音の美しさを再発見させられた。

持ち駒を全て包み隠さず見せたかのような意欲的な内容のコンサートで、イエスティン君
の魅力が存分に発揮されていた。

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by didoregina | 2014-05-20 17:26 | イエスティン・デイヴィス | Comments(2)
Commented by ロンドンの椿姫 at 2014-05-21 23:37 x
盛だくさん! 私も彼の歌を色々聴きましたが、シューベルトやブラームスは聴いたことないです。
サイン会の表情もいいですね! すっかりお馴染みになったレイネさんへの親しみが込められてるようで。
Commented by レイネ at 2014-05-22 04:32 x
ロンドンの椿姫さま、彼のレパートリーとしては珍しいドイツ語のリートにはうっとり。そして、いつものように真摯な歌唱を聴かせてくれる素晴らしいリサイタルでした。十八番のヘンデルが入ってないのがまたレア。
また、ファンの一人一人と十分に時間をとってくれて、和やかなサイン会でした。「また来月ウィグモアでね!」とアピッたら、「同じピアニストなんだよ」と。マルティノーさんには初めて会ったのですが、彼もとってもフレンドリーでした。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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