Britten Sinfoniaによるヨハネ受難曲@コンセルトヘボウ

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2014年4月17日@Concertgebouw

J.S. Bach - Johannes-Passion, BWV 245

Britten Sinfonia Voices
Britten Sinfonia
Jacqueline Shave (viool/leiding)
Nicholas Mulroy (tenor, Evangelist)
Matthew Brook (bas, Christus)
Julia Doyle (sopraan)
Iestyn Davies (countertenor)
Jeremy Budd (tenor)
Eamonn Dougan (bas, Pilatus)

オランダ・バッハ協会による『マタイ』の2日後に、アムステルダムのコンセルトヘボウでの
イギリスの団体Britten Sinfoniaによる『ヨハネ』コンサートに行った。
前者のネームバリューが各段に高いのに対して、後者の名前は寡聞にして知らなかったし、
イギリスの楽団は中庸の美徳を重んじるかのようでスリリングな演奏にはぶち当たったことが
ほとんどないから、あまり期待せずにいた。
ハッキリ言うと、今年はとにかく生のイエスティン・デイヴィスを聞き逃したくないという理由から
チケットを買ったのであった。『ヨハネ』の方が耳なじみがよくて好き、という理由もあるが。
案の定、チケットの売れ行きはほとんど直前まで芳しくなかったが、当日、少なくとも平土間
席は埋まっていたと思う。

しかし、結果は期待を上回るどころの話ではなく、聞く前になんだかしょぼそうとか言っていた
自分を恥じ土下座して謝りたいほどの素晴らしくエネルギッシュな演奏だったのだ。
ヴァイオリンの最初の音がちょっとばらけているように聞え、あららやっぱり、などど一瞬だけ
思ったのを除くと、スリリングかつドラマ性のあるオケの演奏は冴えていた。
チェンバロ奏者が指揮を兼ねているのかと思ったらそうではなく、コンミスのジャクリーン・シェイヴ
女史がきびきびとリードして、オケ全員がまるでソリストのように主張溢れかつ室内楽風に親密で
息のあったまとまりを作り上げていた。
脱帽である。

↓にBritten Sinfoniaのプロモ・ヴィデオを貼るので、ご視聴あれ。




なぜ、わたしは『ヨハネ』が好きかと言うと、最初にガツンとくるHerr, unser Herrscherで
否応なく熱い音楽の渦中に引き込まれ、こうべを垂れる思いになり、最後まで緊迫感溢れる
ドラマが無駄なく進行して続くので、コンパクトにきゅっと詰まった緻密な音楽の中に自分が
閉じこまれたような感覚になるのがたまらなく気持ちいいからだ。
そして、コラールの部分にどこか中世的な土臭い匂いが感じられ、ホッとできる部分がちゃんと
ある。聴く方にも緊張だけを要求しないのである。
それでいて劇と音楽の融合性と密度が高いため、途中で飽きたり他のことを考えたりする余裕を
与えない。
その晩の演奏は、まさにそういう密度が高く結晶化したかのようで、弛緩した部分が全くない
理想的な姿なのだった。

コンセルトヘボウで聴く受難曲というのは初めての経験だったのだが、それも期待以上であった。
音響的にモダンでドライすぎたりすることなく、大きな教会で聴くように合唱が団子になってしまう
こともなく、ソロ・パートはクリアでよく響き、隔靴掻痒感が全くない。
荘厳さと言う点では教会で聴く受難曲に勝るものはないという思いもあるのだが、音楽として聴く
にはこのホールはやはりさすがの素晴らしさである。

もう一つ期待していたのは、コンセルトヘボウの大ホールで聴くイエスティン君の歌唱である。
彼は声の飛ばし方が大変よく大ホールの隅々まで届くはずだし声量もしっかりあるから、去年
11月に小ホールで聴いたときには会場が狭すぎて響きすぎるし、もっと大きなホールで聴きたい
なあと思ったものである。
その期待は裏切られなかった。彼の声の魅力は、確固とした男性的な芯を内包しつつ外側も
ふやけたりぼやけたりしたところがないが優しさを感じさせ、ストレートな直球で勝負という歌唱の
小気味よさである。
てらいがなく、またある意味カウンターテナーらしからぬ男性的なアプローチなのである。
小柄ながら胸板が厚そうなので、胸声の幅が広いのかもしれない。だから、特に中音域にその
精華が詰まった歌唱を聞かせるのだが、高音にもその特徴が現れている。高音域でもあまり
ファルセットっぽい声ではないところが、ちょっと一般的にCTに期待されるものとはずれるかも
しれないが、それが彼の個性だと思う。

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ソロ歌手は皆若く、先日の『マタイ』でも思ったように重厚さよりも爽やかさが勝る。
福音史家の歌手も若いが堂々と安定したものである。バスは渋みのある重々しい声で説得力も
あった。そして、ソプラノの軽く清々しい歌唱がとても光っていた。
合唱もソロも全体的に、非常にハイレベルなのに驚かされた。

そういうわけで、今回の『ヨハネ』は、演奏の小気味よさもさることながら感動レベルも高い、近年
稀に遭遇するコンサートなのだった。
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by didoregina | 2014-04-23 13:01 | コンサート | Comments(0)


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