深まる秋には蔦葉模様の大島紬と縮緬の染帯

秋に入って、コンサート・シーズンたけなわというのに、そしてほぼ毎週コンサートには行っている
のに、着物を着る機会になかなか恵まれない。
なんと、9月中旬のロッテルダムでの『さまよえるオランダ人』で、Mさんとgさんと3人揃っての着物
姿でネゼ=セガンに突撃して以来、昨日が今シーズン二度目の着物でお出かけであった。

思い返せば、アムステルダムとロッテルダムの2都市のコンサートを一日で梯子するという日には、
その日の大半を電車やトラムで移動しなければならないので、着物は最初から諦めた。
また、コンセルトヘボウでの、友の会会員向けリハーサルというのもあったが、リハにまで着物で
行くわけにはいくまい。
そして、日本に飛ぶ前日の晩にも、万難を排して(アクシデントに見舞われたが、ぎりぎりまで諦め
なくてよかった、と強運を神に感謝したほどの)ロッテルダムでの18世紀オケによる『コジ・ファン・
トゥッテ』コンサート形式を鑑賞したのだが、もちろん着物どころではなかった。
しかし、日本でのクリスのリサイタルには着物で行くつもりで用意万端整えていた。ところが、またも
急用が入ってしまい、名古屋にはぎりぎり到着で、着物に着替える時間はなかった。コンサート開始
時間に間に合っただけでもよしとしなければ罰が当たる。

そして、先週末の金曜日には、丁度オーストラリアに行っているTの定期会員チケットが余っている
からと、Hから、地元オーケストラ(今シーズンより国による財政補助が減って合併を余儀なく
された地元オケLSOとブラバント・オケの新星オケによる最初の)コンサートに誘われた。自転車で
行く予定だったので着物は用意しなかった。
だが、日曜日のマルコ・ビーズリーのリサイタルには着物で行くつもりで、秋らしいコーデをじっくり
考えて準備していたのだが、なんと当日は大雨強風の天気予報。着物は避けるのが無難だろう。
ああ、残念無念。次に着物を着るのは11月中旬のバルセロナ遠征時か、と思っていたところ、昨晩
またもや、Hから、Tの分も買ってあったチケット発見の知らせが。モダン・ダンスのスカピーノ・バレエ
団の公演である。
マルコ・ビーズリーのリヴェンジのチャンス到来!
日曜日に準備したが着ることができなかった着物のコーデをそのまま流用して出かけた。

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         秋には必ず袖を通したくなる、蔦葉模様が縦に織り出された大島紬。


公演会場には、思ったよりも早く到着したので、開演前にお茶を飲むことにした。
普段行くコンサートとは異なり、若い人が目につくのがダンス公演のうれしさ。一階のカフェは熱気
むんむんで混み合っている。
相席にさせてもらった年配の女性が、「まあ、お着物が素敵ね。日本人?」と声をかけてきた。
着物を着てコンサートに行くと、見知らぬ人から褒められるというのは、オランダではよくあることだ。
だが、この人の場合、単に着物の美しさを褒めてくれたのではなく、彼女が日本へ行った時の思い出
話が続いた。
「1970年に初めて日本へ行ったのよ。万博の年でした。いえ、大阪だけでなく、3週間色々な
場所を回ったのよ。教育関連の視察旅行だったのでね、半分は学校などの仕事関係で、半分は
観光。その時、京都でだったかしら、生まれて初めて着物を着た女性を見たの。そのエレガントさ!
ヨーロッパ以外の外国への旅行は、それが初めてでしたし、何を見ても珍しくびっくりしたけど、
日本人の訓練の行き届いて全てがしっかり機能している社会に接して感嘆したものよ。新幹線や、
電車が時間通りに発着して、きちんとホームのドアの位置に停まるのにも。学校の生徒たちも折り目
正しくきちんとしていて。お店に入れば、下にも置かれないほど大事にされるし、包装の丁寧で美しい
こと!ヨーロッパの外でこんなに文化的にも社会的にも発展している国があることに驚きました。
本当にいい経験をさせていただいて、楽しく美しい思い出ばかり残っているのよ。」
という具合に、43年前の美しい日本の思い出を熱っぽく語るのだった。

1970年の大阪万博には、当時10歳だったわたしももちろん行った。そこで、初めて世界各国の
外国人を目にした。未知との遭遇に等しいものであった。
当時、日本は高度成長の頂点に達して、何の不安も見当たらず未来は明るく輝いて、日本は世界に
その繁栄を誇ることのできた時期である。ああ、過ぎ去った日本の美しい姿よ、いまいずこ。

c0188818_4274883.jpg

           渋い大島には、明るく甘めの珊瑚色のロウケツ染め縮緬帯を合わせた。
           帯揚げ以外は、すべて母の箪笥からだから、多分昭和のもの。
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by didoregina | 2013-11-02 20:40 | 着物 | Comments(2)
Commented by ロンドンの椿姫 at 2013-11-05 09:01 x
地味な色でも、やっぱり着物は華やか!特に大島は着心地も良くていいですよね。
着物姿の私にオペラハウスで声掛けて下さる方の大半が日本に行ったことがあるようです。皆さん日本を褒めて下さって嬉しいです。
Commented by レイネ at 2013-11-06 07:11 x
ロンドンの椿姫さま、久しぶりに着物でコンサート会場(モダン・バレエの公演でしたが)に行くと、やっぱり気分が高揚しました。洋装じゃ、こんなにちやほやされないし。ちょっと冷めてた着物熱ががぜん再燃しました。
わざわざ声かけて褒めてくれる人たちは、ファッションや文化にひとかたならぬ興味を持ってる人なんだと思います。もしくは日本に対する思い入れですね。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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