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グザヴィエ・ドランのスタイル極めつけ Les Amours Imaginaires

グザヴィエ・ドラン監督第二作目である。
三作目の2012年作 Laurance Anyways(邦題《わたしはロランス)》は去年ヨーロッパで
公開され、独特の感性あふれる映像と胸がきゅんと締め付けられるストーリーに感嘆したものだ。
日本公開が決まったようで喜ばしい。

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監督: Xavier Dolan
出演: Xavier Dolan (フランシス), Monia Chokri (マリー), Niels Schneider (ニコラス),
脚本: Xavier Dolan
制作: Xavier Dolan, Carole Mondello, Daniel Morin
撮影: Stéphanie Anne Weber Biron
編集: Xavier Dolan
2010年 カナダ







上記クレジットを見て驚かない人はいないだろう。撮影以外は、主演も含めてドラン自身が
ほとんど全て担当。(衣装デザインを含むアート・ダイレクションもたしか彼だった)
なにしろ1989年生まれ、本作撮影時は弱冠21歳である!自分自身や自分の息子と比べても仕方
ないが、この年齢でこういう映画を作れてしまうというのは天才としか思えない。子役時代が
長いが、早熟、というより根っからの映画・映像・ドラマ育ちなのだろう。音楽家と同様に
幼い時からこの世界で純粋培養された成果の結実かもしれない。
いや、これはやはり彼自身の才能の賜物だろう。
                 
              ↓は、ポスターにもなってる俳優グザヴィエ・ドラン
グザヴィエ・ドランのスタイル極めつけ Les Amours Imaginaires_c0188818_19255397.jpg


ルックスはひたすらチャーミングで、若いころのジョニー・デップを思わせ、少年ぽさが面影に
残る。
そして、ゲイでもある彼自分のスタイルへのこだわりが映画に結集されている。

天使のような金髪の巻き毛クルクルの美青年ニコラスに恋してしまったマリーとフランシスの
三角関係をスタイリッシュに描いたもので、《わたしはロランス》でも感嘆させられたドランの
クールでポップな映像美が小気味よいストーリーにマッチして冴えている。

少女漫画のコマ割りを思わせる構図(中クローズアップされた人物が中央にいる場面が多い)の
ポップでファンタジーあふれる背景(マシュマロの雨!)の中に、主要人物がくっきりとした
輪郭を伴って撮られたカットの連続が新鮮で洒落ている。
そして、スローモーションの多用。スローな動きの体全体や表情から、人物のその時々の様々な
心象(自己陶酔、落胆、恍惚、満足などなど)が読み取れるようになっている。その絶妙さ!

グザヴィエ・ドランのスタイル極めつけ Les Amours Imaginaires_c0188818_19441635.jpg

            3人でベッドをシェアすることになってドキドキのマリーとフランシス

マリーとフランシスは、センス、スタイル、生活信条面で共感するソウル・メイトの関係だ。
(マリー役が老けて見えるので、最初は姉と弟かと思ってしまった。)
二人それぞれ別に肉体関係を持つ恋人のような人物がいる。それなのに、二人ともニコラスに
魅かれ、理想を見出してしまったのだ。
三人の関係はぎこちなくユーモラスだが、いかにもイノセントでナルシストのニコラスには二人
の感情が伝わっていない。
ナルシストといえば、三人ともがそうなのだ。そして、ドラン本人こそナルシストの第一人者
だろう。
このまま成長したらドリアン・グレイを経てオスカー・ワイルドの域に達するだろう、と思わ
せるほど。
恐るべき才能とナルシシズムの真骨頂。衒いも嫌みもなく見せてしまうゲイの本心やちょっと
きわどいシーンなど、ドランでなくては表現しえないだろう。

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            マリーは、オードリー・ヘプバーン気取り。

ニコラスの好きなヘプバーンに自己を投影するというより物まねしてしまうマリーだが、25歳
という設定よりは老けてるルックスなので、ヘプバーンのキュートさはなくてジュリエット・
グレコやアンナ・カリーナに似ているなあ、と思ってしまった。
それは、実存主義やヌーヴェル・バーグのミューズのような彼女の翳りのある佇まいのせいでも
あるし、多用されるスローモーションやわざとコマを飛ばせてクローズアップするなどのカメラ・ワークのせいでもある。
50年代、60年代に理想美を求めるマリーとフランシスの審美眼という設定が反映されてもいる。

結局、恋は人の心を盲目にさせるというのが結論で、夢から醒めた二人のクールな反応がほろ
苦い。
甘酸っぱさとほろ苦さが青春のシンボルなどと言ってしまうとあまりにクサいが、この映画に
クサさは微塵もない。
確固たるスタイル重視で、その審美眼の範疇から外れるものに未練も容赦もないのである。


by didoregina | 2013-05-30 13:15 | 映画


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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