『ゴーラのアマディージ』@アン・デア・ウィーン劇場

4月のウィーン遠征日程は、マレーナ様主演の『ベアトリスとベネディクト』と演奏会形式の
『ゴーラのアマディージ』を二日続けて鑑賞できる!ということで決めたのだった。
なぜかというと、当初のキャストはイエスティン・デイヴィスのアマディージということになって
いたからだ。生の彼をウィーンで最初に聴いたのはかれこれ2年前の『怒れるオルランド』で、
やはりマレーナ様主演の『セルセ』と連荘できたのだ。

ところが、キャスト発表からチケット発売開始までの間に、イエスティン君は降板してしまった。
代わりはソニア・プリーナ女史である。ええ~、イエスティン君とプリーナ姐とではあまりに
声質もキャラも異なるではないか。そうしてキャストは全員女性になるし、メリッサ役はロベル
タ・マメリ、指揮はアラン・カーティス。う~む。(この一言で、わたしの心境が分かる人には
わかってもらえるだろう)

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          オペラ遠征も、命綱が頼りのビルの外壁メンテも、びくびくもの。


さて、チケットを買おうかどうしようか迷っていると、今度は新たに心躍るニュースが入ってきた。
なんと、ダルダーノ役をフランコ・ファジョーリが歌うらしいと!彼のサイトには載っていないが、
所属プロダクションのスケジュールには記載されていた。
それで、またまた行く気満々になった。しかし、劇場サイトにはフランコのフの字も出ていない。

『ベアトリスとベネディクト』のチケットは発売開始日に即ゲット。二泊三日の予定でフライトも
予約した。
しかし、『ゴーラのアマディージ』チケットだけはぎりぎりまで買わなかった。劇場サイトでは、
ダルダーノ役は、デルフィーヌ・ガルーになっていたからだ。事務所サイトのからもフラちゃん
『ゴーラのアマディージ』出演公演予定はいつのまにか消えていたし、公演3日前になっても
キャストは代わらず。今回はカウンターテナーが1人も出演しないのが残念だが、それは諦めよう。
ようやく重い腰を上げて、当初の予定通りチケットを購入したのだった。

c0188818_18564157.jpgAmadigi di Gaula
Opera seria in drei Akten (1715)
Musik von Georg Friedrich Händel (1685-1759)
Libretto unbekannt, wahrscheinlich Nicola Francesco Haym oder Giacomo Rossi

Musikalische Leitung Alan Curtis
Amadigi di Gaula Sonia Prina
Oriana Emoke Baráth
Melissa Roberta Mameli
Dardano Delphine Galou
Orchester Il complesso barocco

25.04.2013 @ Theater an der Wien







二年前にアン・デア・ウィーン劇場で演奏会形式の『怒れるオルランド』を鑑賞した時は、背後の
『セルセ』舞台セットを見せる形式だった。オケ・ピットに入っていたのは、『セルセ』同様に
スピノジ指揮のアンサンブル・マテウスで、スピノジはラ・フォリアのヴァイオリン・ソロも披露
してくれた。

今回も演奏会形式であるが、カーテンが下りていて歌手はその前に立って歌う。
オケ・ピットに入っているのは、カーティス指揮のイル・コンプレッソ・バロッコである。
今回は例のCTでもあるというロシア人コンマスではなくて、女性のコンミスだった。第一
ヴァイオリン4人、第二3人という小編成なのでチェロも1人。それと通奏低音はチェンパロに
テオルボ。
まるで室内楽のようにに器楽演奏者たちはコンミスの呼吸に合わせて息のあったアンサンブルを
作り出していて、例の四角四面のカーティスの指揮を見ている人はいないようだった。

古楽器では金管が特に難しくて、トランペットやホルンなどよく音が外れて聴こえたり、出だし
が上手く決まらないのだが、ここのトランペット奏者は、ソロ部分の出だしでも全く余裕しゃく
しゃくでびっしりと決めてくれた。バロックでトランペット・ソロを安心して聴けるというのは
得がたい。

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       左からソニア・プリーナ、エメケ・バラート、ロベルタ・マメリ。
       プリーナ姐の髪型は、忌野清志郎やシド・ヴィシャスを思わせパンキッシュ。

出演歌手はたったの4人で、女性ばかりである。

アマディージ役はソニア・プリーナ。録音で聞く彼女の声は独特で、硬い芯を中心に表面は
まろやかな輪郭で覆われた、ある意味女性らしい艶があるがドスの利いたアルトである。
いかにもイタリア人らしい発声の女性らしさを感じさせるアルトというのがイマイチ好きに
なれず、積極的に生の声を聴きたいと思ったことがなかった。
それが、実際に生の声を聴くと、録音では好きになれなかった要素がまるで異なる印象を与え
たのだった。即ち、豪華絢爛・金襴緞子のような色彩が放出される声質が心地よく、夜空を彩る
原色の花火にも似たドッ派手さが潔い。

好きなタイプのアルトというと、キャスリーン・フェリアーやナタリー・シュトゥッツマンの
光沢はあっても暗い色合いのビロードのような声、サラ・ミンガルドのように薄手ウール・
スカーフのような滑らかで軽く暖かい声、マリヤーナ・ミヤノヴィッチのように麻のように
爽快感のある声などで、いずれもシンプルでベーシックな質感が命だ。プリーナ姐のそれとは
全く正反対のしっかり地厚で素材感よりは色彩感の
勝る帯地のような生の声に触れて、はっとする思いであった。歌唱という芸でも群を抜いている。
その新発見ができただけでも、遠征してこのオペラを鑑賞した価値があるというものだ。


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          ソニア・プリーナに敬意を表してポスターとツーショット。


そして、やはり生の声に接して感嘆したのは、ロベルタ・マメリ女史である。彼女の歌唱も
濃~いタイプなので、今まで録音ではなんとなくヒケてしまっていたのだが、ほとんどめっけ
もの新発見。
こってりと熱い歌唱で盛り上げるのだが、生舞台ではこのくらいやっても差し支えない。
同じイタリア人同士のソニア姐との競演はまさに色彩の饗宴で、ゴージャスこの上ない。
マメリ女史はルックスもゴージャスで、この日のメイクとドレスのおかげで某高級時計の
イメージ・モデルであるケイト・ウィンスレットそっくりなのだ。
バロック歌手というと、一般オペラ・ディーヴァと比べるとストイックで質素なイメージが
あるのだが、この二人は違う。この色彩感はイタリア人独特なのではないだろうかと思える。
ここにフラちゃんが加わっていたらどれほど豪華絢爛になっただろうか、とそれだけが惜しま
れた。
それにしても、今まで敬遠していた二人の歌唱に開眼できたので、食わず嫌いで損していたなあ、
と反省することしきりだ。


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          左から、マメリ、カーティス、デルフィーヌ・ガルー。


もう1人のソプラノ、エメケ・バラートは、いかにもお姫様役にふさわしい正統清純派バロック・
ソプラノで、可憐なのだが、このアクの強いメンツの中にいると霞んでしまって印象に残らない。
ストイックな歌い方と声質なので、どちらかというと硬質で温かみの少ない声のCTとの相性の
方がいいのではないかと思う。

ダルダーノ役というのは、出番が少なくて損だ。そんなつまらない役をフラちゃんがふって当然。
そして、ガルーは声も体格も線が細すぎて、舞台栄えしない歌手である。すらりとしていて
ズボン役など一見似合いそうだが、全く押し出しが弱いから、舞台での男性役には向いていない。
声の飛ばし方に問題があるのだろうか。客席に響いてこないのだ。前回かなりがっかりさせられ
たので、彼女には期待していなかったが、今回も印象を塗り替えることはできなかった。
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by didoregina | 2013-05-10 13:37 | オペラ実演 | Comments(16)
Commented by 守屋 at 2013-05-11 06:42 x
こんばんわ。プリーナはまさに「姐御」って感じでした、ウィグモアでも。おそらく旦那さんらしき男性が一人で感極まっていたのが印象に残っています。来シーズンもウィグモアでリサイタルがあるのですが、晦日なのでいけるかどうかまだ判りません。
Commented by アルチーナ at 2013-05-11 11:36 x
なるほど!私も録音で聴くプリーナはちょっと声に特徴がありすぎて。。という印象だったのですが、生で聴くと印象が違うのですね。マメリも度々来日しているものの私はまだ聴いていないので今度は聴きに行きたいと思ってます。確かポッペアの戴冠で来日予定があったはず!私はマメリもインヴェルニッツィも濃いとは思わないのですが、結構皆さんそう仰るので濃いんでしょうね。演奏は・・いかがでした?最近はカーティス指揮でも評判が良いようで。。コンマス・ミスのおかげなのかな?なんて思ってますが。。
Commented at 2013-05-12 07:29 x
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Commented at 2013-05-12 07:30 x
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Commented at 2013-05-12 07:30 x
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Commented at 2013-05-12 07:31 x
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Commented at 2013-05-12 07:34 x
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Commented at 2013-05-12 07:35 x
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Commented by レイネ at 2013-05-12 17:22 x
守屋さま、プリーナ姐の生の迫力に圧倒されました。

>おそらく旦那さんらしき男性が一人で感極まっていたのが印象に残っています。
どういうシーンが展開されたのか。。。カーテンコールでの総立ちとか花束贈呈でしょうか。なんだかほほえましい感じ。
Commented by レイネ at 2013-05-12 17:25 x
アルチーナさま、プリーナもマメリも、いかにもイタリア人って感じの濃さなんですよ。あのあくの強さが舞台だと丁度いい。だから、ガルーの影がより霞んでしまって。カーティスはいてもいなくても気にならないというか、コンマス・コンミスに任せとけば大丈夫。
Commented by didoregina at 2013-05-12 18:00
鍵コメさま、今昔のウィーンのお話から様々のお役立ち情報、ありがとうございます!ベートーヴェン・ホテルに泊まる場合は、アン・デア・ウィーンの休憩時にはホテルまで戻ってトイレを使用してました。劇場カフェでは、昨年8月の『湖上の美人』終演後、マレーナ様のおっかけファン数名とマレーナ様、旦那様などといっしょに反省会(飲み会)で盛り上がったのも楽しい思い出。
子供達には、ウィーン工科大学およびウィーン経済経営大学の大学院進学を勧めてるんです。カリキュラムが充実して学費が安いのも魅力。
Commented by Vermeer at 2013-05-16 18:52 x
実際に生の声を聴くと、録音では好きになれなかった要素がまるで異なる印象⇒
そういった事よくありますね。マリリン・ホーンの1992年シュヴェツィンゲン・フェスティヴァルにおけるライブ録音が届いたので聞いてみました。全19曲オール・ロッシーニという作曲家生誕200周年にふさわしい、他の誰にも真似できないプロ(オペラ・アリア3曲含む)でした。

残念ながら実演では接することの出来なかった名メッツォなのですが、日本ではオペラ批評の泰斗がクソミソに貶すのでいま一つ欧米での正当な評価が伝わりにくい歌手でした。実際のところはどうだったのだろう、さぞ素晴らしい声だったのでは…、と考えながら日本茶飲料の宣伝ではありませんが、批評家の悪意にも負けない自分の耳を持ちたいと思いました。

アルチーナさんの情報にある来年の『ポッペア』(マメーリがポッペア?!)、モンテヴェルディの全マドリガル録音を果たしたクラウディオ・カヴィーナ指揮ヴェネクシアーナも含めて非常に期待しています。
Commented by レイネ at 2013-05-17 22:59 x
Vermeerさま、好みに合わない声や歌唱の歌手には、ついついキツイことを書いてしまいますが、人それぞれ好き嫌いのテイストは色々なので、一方的な批評態度はよくないなあ、と反省。まあ、わたしのブログ程度なら影響力はほとんどないし、個人的好みだと理解いただけるかとは思いますが、影響力の大きい批評家から貶されると歌手生命も危ないですよね。それに、誰もが歌手の生の声に接する機会が持てるわけでもないので、難しいところです。大事なのは、やっぱり自分のテイストや耳を信じることですよね。

『ポッペア』は、音楽的に妙に現代的に聞こえたり、ストーリーは勧善懲悪の正反対で人間というものが上手く描かれていて、古臭さを感じさせない傑作オペラですよね。素材として料理(歌唱・演奏・演出)のしがいがあるから手を変え品を変え登場するので、鑑賞も楽しみ。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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