『ベアトリスとベネディクト』@アン・デア・ウィーン劇場

マレーナ様はすでにバーデン・バーデンでの『ドン・ジョヴァンニ』リハーサルに余念が
ない現在、ウィーンの『ベアトリスとベネディクト』レポなど、ほとんど今更の感があるが、
備忘録として一応残しておこう。
実演鑑賞したのは既に1週間半も前のことである。記憶はかなり薄れてしまっている。
記憶に残りにくいというのは、『ベアトリスとベネディクト』がオペラ作品としてかなり
特殊な部類に属するものであるということも大きな理由だと思う。

c0188818_533637.jpgBéatrice et Bénédict
Opéra-comique in zwei Akten (1862)
Musik und Libretto von Hector Berlioz
Nach der Komödie "Much ado about nothing" von William Shakespeare

Musikalische Leitung Leo Hussain
Inszenierung Kasper Holten
Bühne Es Devlin
Kostüme Moritz Junge
Licht Bruno Poet

Béatrice Malena Ernman
Bénédict Bernard Richter
Claudio Nikolay Borchev
Héro Christiane Karg
Ursule Ann-Beth Solvang
Somarone Miklós Sebestyén
Léonato Thomas Engel
Don Pedro Martin Snell
Une femme Madeline Ménager-Lefebvre
Orchester ORF Radio-Symphonieorchester Wien
Chor Arnold Schoenberg Chor (Ltg. Erwin Ortner)

2013年4月24日@アン・デア・ウィーン劇場

c0188818_5365075.jpg


ベルリオーズ作曲のこのオペラの予習としてCDを繰り返し聴いたのだが、ほとんど頭に
残らない。通常、仕事しながらとか家事をしながらのながら聴きでも、耳にたこが出来る
くらい聴いてるうちに序曲とか主要アリアとかのメロディーはいやでも耳に残り、追い
払っても頭の中を巡るものである。
しかし、このオペラは通して聴きにくいのだった。仕事とこの曲の両立は無理だった。
なぜかというと、各場面ごとに物語の説明のような語りの部分が入るからで、その語りの
部分は音楽とは切り離されていて器楽演奏もなくなるのだ。そしてそれがまた、聴くものを
イライラさせるような朗読調のフランス語で前後の音楽と全く相容れない。まるでTV番組
の途中に入るCMみたいな違和感があり、パブロフの犬的反応でトイレに行きたくなったり、
思わず別の局(曲)にリモコンを合わせたくなる。かなりうざったく、不快にさせるので
あった。

実演の方は、その点まだマシだった。ト書きみたいな台詞の朗読ではなく、舞台上で歌手が
台詞をしゃべるし、しかもかなり演技の上手い歌手ばかりだから思わず席を立ちたくなる
ことはない。しかし、音楽が途切れてしまうのはCDと同様だ。レチタティーヴォのように
音楽の一部というか続きのような風にはいかない。オペレッタ風と言えようが、台詞の部分が
かなり多くオペラというより芝居に近い。

歌手としては、こういう作品を歌い・演じるのはいかがなものだろうか。思うに、しゃべる
のと歌うのとでは相当喉の使い方が異なるから、台詞と歌唱とをスムーズに往復しつつ落差を
感じさせないというのは大変なことだ。喉への負担はいかがなものだろうか。そういう心配を
させるような作品なので聴く方も音楽にのめりこみにくい。また、音楽自体もぶちぶちと
途切れてしまうのだ。

c0188818_68171.jpg


カスパー・ホルテンは、このオペラらしくないオペラを、割りとオーソドックスに芝居また
はオペレッタ風に演出した。それらしくかなりベタなオーヴァー・アクション満載である。
舞台の造りは、背景が半円状の劇場客席のようになっていて、中央に回り舞台。その中心に
回り舞台を半分に分割するミラー状の壁というか襖のようなものがあって、場面によって
高さが変わる。
それが、男女を分かつ壁になったり、テニスのネットになったりする。
舞台上の客席に上る階段とそして沢山の椅子。セットも機構の使い方も、アン・デア・
ウィーン劇場のこれまでのプロダクションで見たことがあるようなものばかりだ。う~む、
かなり予算をけちったのか。

ストーリー自体がたわいのないコメディなので、ストレートな演出だと、つける演技もオー
ヴァーになるのもやむを得まい。そういうコメディエンヌ的オーヴァー・アクションは、
マレーナ様の得意とする
ものではあり、演技はべらぼうに上手いのだが、どうも喜劇専門のワン・パターンに陥って
いるような気もする。ファンとしては、オペラ・セリアで深刻そうな表情のマレーナ様を久
しぶりに見たい。

前半はとにかく歌が少ないのが残念で、またオックス男爵みたいなキャラのソマローネが
ドイツ語の台詞をしゃべったりする場面が長くて退屈だった。ベアトリスとベネディクトの
テニスのシーンなどは見ていて楽しいのだが。
後半になって、待ちに待ったアリアやデュエットを続々聴くことが出来、前半のだれた雰囲
気から一気に舞台も締まった。歌が相対的に少ないオペラだから、マレーナ様は喉をセーブ
する必要がなく、演技しながら歌うシーンも最初から最後までパワフルだった。
しかし、ここぞと自慢の喉を披露できるソプラノは得である。特に贔屓でもないがクリス
ティアーネ・カルグは声を出し惜しみせず盛り上げたので、カーテン・コールでも一番拍手を
貰っていた。嫌味のない歌唱と声の持ち主なのだが、どこか意地悪そうで老けて見えるルック
スが好みではない。
ベネディクト役のベルナルド・リヒターは、背丈もルックス的にもマレーナ様とは美男美女の
組み合わせでヴィジュアル面では文句ない。歌はあまり印象に残っていないが、問題もない。

c0188818_6505731.jpg

         すらりと長身のマレーナ様は、また少し痩せたような気がする。

今回のオペラ鑑賞には、義母と義妹も同行した。前半は台詞が多いのに閉口していた二人だが、
後半の歌には堪能できたようだ。そして、コメディエンヌのマレーナ様には感嘆していた。
だから、終演後には二人も楽屋口での出待ちに誘った。
さほど待つこともなくマレーナ様が出てきた。平日ということもあり、出待ちしていたのは
私達三人の他は、スウェーデンから来た初老の女性2人組だけである。丁度、私達の前の座席
に座っていた。
外に出てきたマレーナ様に声をかけると、向こうからハグ。これで何度目?という回数の
おっかけと出待ちだから、御覚えめでたいのも当然。
マレーナ様は、翌早朝バーデン・バーデンへ飛んでリハーサル、そして翌々日にはまた
ウィーンに戻り舞台出演という忙しさだと言う。
義母と義妹もマレーナ様に紹介。翌朝早いから、皆でわいわいどこかに繰り出すというわけ
にもいかない。またハグして、次回はバルセロナでの再会を期して別れた。

c0188818_78681.jpg

            桜の花びらの散る小紋に砂子で金を撒いた袋帯。
            花びらに合わせて、白地に桜の花びらの模様の
            帯揚げと白に近い象牙色の帯締め。草履も白。
[PR]
by didoregina | 2013-05-06 00:11 | オペラ実演 | Comments(6)
Commented by 守屋 at 2013-05-06 18:46 x
おはようございます。

>どこか意地悪そうで老けて見えるルックスが好みではない
 来シーズンのウィグモアに、カルクはかなり出演します。全く名前の知らない歌手だったので、どうしてウィグモアがそれほどプッシュするのか判りません。呼んで欲しい他の歌手はたくさんいるのに。で、カタログに掲載さているカルクの写真から感じた印象がレイネさんの印象と全く同じです。
Commented by レイネ at 2013-05-06 19:45 x
守屋さま、そう、この歌手最近なぜかよく名前を聞くような気がします。バロック・オペラにぴったりのくせのない澄んだ声も声量も文句ないのですが、ルックスのせいでお姫様役なんて難しそう。。。面食いなので特に好きにはなれないと思います。
別件ですが、大英博物館でのポンペイ展に主要作品が行っちゃうのとポンペイの遺跡自体が修復のためかなり閉鎖されるようで、どうしようかと迷ってます。
Commented by 守屋 at 2013-05-06 22:21 x
こんにちは。別件についてですが、10年以上も前にアマルフィに行った時の記録を張り付けました。一般論としては判りませんが、アマルフィへは陸路、もしくは船でしか行けないので、仮に陸路で行って交通渋滞に巻き込まれる可能性があると思います。僕が滞在した時は、サレルノ、アマルフィ、そしてポジタノを結ぶ連絡船が有りました。
Commented by レイネ at 2013-05-06 23:48 x
守屋さま、リンク記事拝見しました。ありがとうございます。陸路は渋滞の心配があるけど、去年アマルフィからサレルノに連絡船で行こうとしたブログ友は荒天で出港中止にあったり。どうも、これは現地での出たトコ勝負になりそうです。でも、ポンペイからアマルフィなら距離的にそれほどないからなんとかバスで往復できそう。ポンペイ~サレルノ間は電車もあります。
Commented by Mev at 2013-05-13 06:36 x
珍しい舞台だったのですね! なかなかこういうオペラはかからないと思います。そういう意味でも、貴重な遠征と言えたのではないでしょうか?
なにより、マレーナ様、健康で好調そうで、ほんとによかったですね!
お覚えめでたいし!
Commented by レイネ at 2013-05-13 15:02 x
Mevさま、アン・デア・ウィーンならではの演目といえましょう。来シーズン、マレーナ様はウィーンで出演予定がないので、わたしもこれでウィーン遠征はしばらくなくなりそうです。ウィーンはわたしのための町、と思えるほど気に入ってますが。
今は、バーデン・バーデンの『ドン・ジョ』で、大物歌手と伍して遜色のない歌唱ができるよう祈るのみ。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


最新のコメント

Vermeerさま、多分..
by レイネ at 01:38
トマスのソロ・コンサート..
by Vemeer at 01:25
Vermeerさま、この..
by レイネ at 20:56
詳細なレポート、楽しく拝..
by Vermeer at 18:02
ロンドンの椿姫さま、それ..
by レイネ at 17:03
大満足のマスタークラスで..
by ロンドンの椿姫 at 23:41
鍵コメさま、ヴェロニカ・..
by didoregina at 18:57
Mevrouwさま、北海..
by レイネ at 18:46
レイネ様も怒涛の更新で、..
by Mevrouw at 23:33
Mevrouwさま、サー..
by レイネ at 22:10
Mevrouwさま、夏の..
by レイネ at 22:05
新作オペラに挑むのは本当..
by Mevrouw at 20:56
クロアチア~ベネチアを自..
by Mevrouw at 20:27
Mevrouwさま、ご高..
by レイネ at 20:19
ようやく一息つける日なの..
by Mevrouw at 19:57
Mevrouwさま、癒し..
by レイネ at 16:49
このところネットからも音..
by Mevrouw at 16:37
斑猫さま、もうすでにパリ..
by レイネ at 16:57
ロンドンの椿姫さま、まさ..
by レイネ at 16:54
こんにちは CT研究会..
by 斑猫 at 00:16

以前の記事

2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月

タグ

最新のトラックバック

究極の愛を描いたワーグナ..
from dezire_photo &..
バッハが人類に残したメッ..
from dezire_photo &..
バッハが『ロ短調ミサ曲』..
from dezire_photo &..
ルター派のプロテスタント..
from dezire_photo &..
ダンテの『神曲』 ”地獄..
from dezire_photo &..
ポン=タヴァン派、総合主..
from dezire_photo &..
倉冨亮太さんの繊細な美し..
from dezire_photo &..
ダイナミックで刺激的な多..
from dezire_photo &..
贅沢と快楽に生きる娼婦な..
from dezire_photo &..
バッハとヘンデルの音楽性..
from dezire_photo &..

カテゴリ

全体
バロック
映画
オペラ実演
オペラ映像
オペラ コンサート形式
着物
セイリング
コンサート
美術
帽子
マレーナ・エルンマン
イエスティン・デイヴィス
クイーン
CD
20世紀の音楽
旅行
料理
彫金
ビール醸造所
ベルギー・ビール
ハイ・ティー
サイクリング
ダンス
ハイキング
バッグ
教会建築
カウンターテナー
演劇
未分類

検索

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

音楽
映画

画像一覧