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Lorraine Hunt Lieberson の歌うNeruda Songs その他

この夏のセイリングはイタリア南部のティレニア海、サレルノからエオリア諸島を経てトロペアまでの
ワン・ウェイだ。
エオリア諸島(なんと美しい響き!)といっても、活火山のストロンボリ島ぐらいしか名前は知ら
なかった。寄港予定地を調べたら、映画『イル・ポスティーノ』の舞台になったサリーナ島も
含まれている。

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映画はもうずいぶん前に観たので内容はあまりよく覚えていないが、チリ人詩人ネルーダが住む
イタリアの孤島での、詩人と朴訥な郵便配達人とのふれあいを美しい自然の中に描いたものだ。
ぶらぶらと単調な生活を送っていた郵便配達人だが、詩人との交流から詩心が芽生え世界が広がり、
人を愛することや共産主義に目覚めていくというお話だったと思う。夏までに、もう一度観たい。





ネルーダつながりで、昨年秋にゲットしたCDのことを思い出した。
ロレイン・ハント・リーバーソンの歌う『ネルーダ・ソングス』である。
彼女の夫であるピーター・リーバーソンがパブロ・ネルーダの詩に音楽をつけ、ロレインが歌う。
初演されたのはロレインの死の1年前で、CDは2005年のボストンでのライブ録音。

Lorraine Hunt Lieberson の歌うNeruda Songs その他_c0188818_18104450.jpg


収められたネルーダの詩、5編は全て、恋人に捧げる愛の賛歌である。情熱がほとばしり熱い。
(詩はスペイン語で書かれていてそれに曲が付けられているのだが、第一曲目の英訳を載せる)

If your eyes were not the color of the moon,
of a day full of clay, and work, and fire,
if even held in you did not move in agile grace like the air,
if you were not an amber week,

not the yellow moment
when autumn climbs up through the vines;
if you were not that bread the fragrant moon
kneads, sprinkling its flour across the sky,

oh, my dearest, I could not love you so!
But when I hold you I hold everything that is -
sand, time, the tree of the rain,

everything is alive so that I can be alive:
without moving I can see it all:
in your life I see everyghing that lives.

愛する女性の身体と彼女への愛を表現するのに、はっとするほど巧みで斬新、しかし難解でない
比喩が散りばめられていて、美しい。

しかし、煌くエスプリに溢れた詩に付けられた音楽は、なんだかブリテン風でかなり暗いのである。
(ロレインの歌う動画が見つからなかったので、サラ・コノリーによるバービカンでの2010年ライブ)



サラ様の歌唱および声質のせいで暗さは少し抑えられて、情感みなぎっている。

この歌集は、ピーター・リーバーソンからのロレインへの愛の発露であるが、現代音楽に付きまとう
暗さから逃れられないのはいかがなものだろうか。詩だけ読んでる分には、とても心地よいのに。


このCDを含め10枚のCDを昨秋、市立図書館の放出セールで一枚1ユーロでゲットした。
1ユーロは安い!と浮き足立って、両手に抱えたCD30枚ほどの中から10枚を選りすぐった。
マイナーな演奏家や歌手や作曲家や作品が多く、ほとんど借りた形跡がないようなものも。
それらを改めて並べてみると、詩に曲をつけた作品が多いことに気が付いた。

その他選んだCDは
● 南アフリカの詩人イングリッド・ヨンカーの詩にフランス・エールハルトが曲を付けオランダ人ソプラノ
 のシャーロット・マリギオーノが歌っているCD Hierdie Reis
● ジェラルド・フィンレーが歌うサミュエル・バーバー歌集 Songs by Samuel Barber
● カサロヴァが歌うシューベルト、ブラームス、シューマンのリート集
● ドビュッシーの『アッシャー家の崩壊』他
● ドビュッシーがD.G.ロセッティの詩に曲を付けた『祝福されし乙女』他
● カルダーラの『ミサ・ドロローサ』『スターバト・マーテル』
● ジェズアルド・コンソートによる『オランダの古楽 1400年から1600年』
● 向山朋子(Pf)他によるワーゲマンス曲集
● アンスネス(Pf)とバイエルン放送響による北欧・東欧作曲家の『沈黙の影』

これらのCDは、家に1人でいるときに聴くのにはいい。仕事するときのバック・グラウンドにもいい。
しかし、聴かせられた人の感想は大概、「暗い」というにべもないものであった。
by didoregina | 2013-03-19 11:05 | CD


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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