カーニヴァルからのエクソダスでハーレムへ

南部のカーニヴァルの騒音・雑音から逃れるため、土曜日に北部まで出かけた。
オランダ鉄道の安売り切符(1日全区間乗り放題2枚で25ユーロ)の使用期限が今月末まで
と迫っていたからでもある。

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どこに行こうかと主人と相談すると、第一候補は新装オープンしたアムステルダムの市立美術館。
しかもその日なら、筋向いのコンセルトヘボウでルセ指揮タラン・リリクとヘレンベリその他の歌手に
よるバロックの魅力的なマチネ・コンサートもある。
しかし、いい座席のチケットはすでにほとんど売り切れ。P席や平土間の前3列など、音響的にも
視覚的にもイマイチの席しか残っていない。最近は、そういう視覚的に難がある場所だと情けなく
なってくるから避けたい、という気持ちが強いのだ。
市立美術館は、増築部分のインテリアをじっくり見たいと二人とも思っていた。現在は特に面白そうな
特別展はない。それでいて入場料は1人17ユーロ50セントも取られる。う~む。

すると、またもやオランダ鉄道からオファーが来た。フランス・ハルス美術館に1人分の入場料金で
チケット2枚どうぞ、というヴァウチャーである。
それで行き先をハーレムに変更した。いや、どこでもかまわない、オランダを南北に分割する大河
より北側のプロテスタント地域にさえ逃避できれば。そこはカーニヴァルとは縁のない静地である。
予想通り、北に向かう電車は空いていたし、途中で乗り換えたアムステルダム中央駅でもハーレム
駅でも仮装している人は1人も見かけなかった。

ハーレムは、北オランダで一番好きな町だ。オランダの黄金時代そのままにしっとりとした美しさが
街並みに残っていて落ち着ける。そして、一番美しいオランダ語が話される町でもあるのだ。
しかし、ハーレム駅前広場は、バス・ターミナルとしての機能重視を第一としているらしく、恐ろしいほど
醜くつまらない広場に変貌してしまっていた。
駅前広場をさっさと通り過ぎて町の中心に向かうと、あちらこちらに素敵な建物がある。

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        ハーレムに現在でも残るホフュの一つ。Hofje van Oorschot

ハーレム出身の知人が、「ハーレムにはホフュが今でも沢山残っているのよ。建てられた当時は
貧しい人たちのための住居だったけど、今では人気があって入居するのが難しいほど」と、以前
教えてくれた。彼女のオランダ語も美しい発声なので聞いていて気持ちがいい。彼女も結婚前まで
ホフュの中の一軒に住んでいたのだった。

ホフュとは、中庭を囲む形で建てられた30戸ほどの集合住宅で、ハーレムには盛時には全部で40の
ホフュがあったが、現在でも20残っている。基本的に貧しい老人や寡婦などの老女を救援するための
公共住居で、一番古いものは13世紀、新しいものは19世紀に建設された。
現在は一般の人が入居しているが、いずれのホフュも観光名所として敷地は開放されている。
(週末には門が閉まるが、平日は10時から17時まで庭などの敷地が一般公開されている)
17世紀や18世紀の豪商が残した遺産を 貧者救済の目的に使うようにとの遺志を守って建てられた
ホフュだが、当時の入居条件として一般的だったのは、50歳とか60歳以上の老女でカルヴァン派を
信奉する人ということだった。

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   フランス・ハルス美術館の建物も17世紀のホフュ。こちらは男性老人用。


聖バーフ教会のあるマルクト広場から、フランス・ハルス美術館のある通りまでは、賑やかな商店街
から一筋横の道を歩くと情緒があっていい。ひょいと見える横丁や路地にオランダ黄金時代の庶民
生活の息吹が今でも感じられるような気がする。

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         ハルス美術館の口の字形の建物に囲まれた中庭。いかにもホフュそのもの。
     

美術館の向かいの建物は17世紀の元聖エリザベト施療院で、ハルスが描いた病院理事達の肖像
画もフランス・ハルス美術館にある。

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             聖エリザベト施療院


その右隣につながる家並みを、現在ブログのスキン写真にした。
ハーレムのこういう通りを歩いて、ハルスの時代からある建物内の美術館で当時の養老院理事や
町の自警団の肖像画などを見ていると、その頃の地霊が今もそこに宿っているのが体感出来る。
フランス・ハルス美術館に関しては、また別の記事にしたい。
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by didoregina | 2013-02-12 12:55 | 旅行 | Comments(2)
Commented by sarahoctavian at 2013-02-13 21:14 x
カーニバル終わりましたねー。レイネさんたら、北部に逃避行してたとは。。でもこんなステキな町に行けてよかったわね(笑)。そういえばちょっと前にオランダに遊びに行った義妹が、ハーレムを絶賛していたっけ。
ホフュという集合住宅にはちょっぴりアウグスブルクのフッゲライを連想しました。
Commented by レイネ at 2013-02-13 21:55 x
sarahoctavianさま、カーニヴァルが正式に終わった灰水曜日の今日はこちらでは別名「ニシンを食べる日」です。カーニヴァルから逃れて行ったフランス・ハルス美術館で『ペーケルハーリング氏』(塩漬けニシン氏=カーニヴァル精神を体現してる)の絵に対面したときは、うっと思いました。

ハーレム絶賛の義妹さん、目の付け所がよろしい!変に観光地化してないのが好ましいオーセンチックな町なのよ。
そして、ホフュ=フッゲライという連想も当たりです!まさに同じコンセプトよね。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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