マドリッドで絵を見る その1

ケルン遠征の翌々日にマドリッドへ飛んだ。主人と二人で4泊のシティー・トリップである。
二人ともマドリッドは初めてなのだった。

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      ケルンに引き続き、マドリッドでもデザイン・ホテルに泊まった。
      屋根裏部屋で、隅のほうは天井が低いが、広さは非常にある。
      キッチン・ブロックとソファー、ライティング・デスクが置かれている。
      バス・ルームには、ビデはあってもバスタブがないのがスペインらしい。

このホテルを選んだのは、テアトル・レアルすなわち王立歌劇場に至近距離だからだ。

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      12月の演目は、チェルニャーコフ演出のヴェルディ『マクベス』。
      しかし、安い席からどんどん売れていってしまい、気が付いたら100ユーロ
      以下の席はなくなっていた。125ユーロの席でも「舞台がよく見えない」と
      表示が(親切にも)出てくるので、買う気が萎えてしまって、とうとう
      オペラには行かずじまいだった。二人分で250ユーロも出してよく見えない
      席なんて。。。
 
それで、マドリッドでは主に町をぶらついたり、美術館巡りをした。

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まず王宮見学と、宮殿内のゴヤの特別展に。

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         マドリッドの王宮

ゴヤという画家はかなり多作だし、作風が時期や素材や依頼主によって様々に変化し多岐に渡る。
宮殿での特別展は、Goya and the Infante Don Luis: Exile and the Kingdomと題され、
ドン・ルイスという悲運の王子の家族の肖像を中心に同時代の作品を集めたもので、親しみを
覚える絵の数々だった。

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        前面で横顔を見せるドン・ルイスは、フェリポ5世の5番目の王子
        でカルロス3世の末弟。

この絵は、普通のブルジョワ一家のワン・シーンのようで家庭的な空気に満ちている。
骨肉相食むような権力闘争に敗れた不運の王子に対する、ゴヤの判官贔屓のようなシンパシーが
感じられ微笑ましい。


似たような構成の国王一家の肖像画と比べてみて欲しい。↓

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       プラド美術館所蔵のカルロス4世一家の肖像画。

王宮内にあるカルロス4世と王妃の肖像画や、プラドにある有名な国王一家の肖像画には、ぎらぎらと
した権力および奢侈と倣岸さへの画家のあからさまな嫌悪と非難の感情そのままに、尊大そのものと
しか言いようのない人物たちが冷徹かつ酷薄に描かれているのに対して、上掲のドン・ルイスやその
家族の目付きは穏やかで温かく、それは画家の彼らに注ぐ視線の温かさをそのまま反映していると
思われる。


ゴヤの絵以外では、壮年だが太る前のファリネッリの肖像画を見ることができたのがうれしかった。

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        Carlo Broschi, Farinelli (1705 - 1782)
       1750年ごろ Jacopo Anigoni (1682 - 1752)

ファリネッリは、古今のカストラート中のカストラートで、歌手としては神に等しい存在であった。
スペインのフェリペ5世とフェルナンド6世に仕えたから、スペインとは縁が深い。

現代版カストラートと言えなくもないカウンターテナー歌手たちの競演を、ケルンで鑑賞した後だった
だけに、ファリネッリの肖像画は、「カウンターテナーを極める」年を締めくくるのにふさわしい。
しかし、CT追求は機会を逃さずに今後も続けていくつもりだ。
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by didoregina | 2013-01-04 16:29 | 旅行 | Comments(2)
Commented by bonnjour at 2013-01-05 01:32
テアトル・レアルで舞台が良く見えない125ユーロの席という噴飯ものの座席が存在するのは、オペラハウスには演目を見に行くのでなく、美しく着飾った自分を見せにいくお金持ちが存在するからなのでしょうか? この劇場で上演されたPJ&チッチ&ドゥニース嬢出演の「ポッペア」を見にいったとき、2回見たうちの1回は安めの天井桟敷でしたが、上から俯瞰するので結構よく見え、聞こえました。

比較のため引用されているカルロス4世一家の肖像画を、王妃マリア・ルイサは気に入っていたそうですが(ぶっ太い腕が自慢だったそうで…なんか現代人とは美意識が違う?)、そこに込められた画家の皮肉な視線を感じることができない鈍感さと傲慢さにはお手上げですね。

ファリネッリの肖像画、フェロモン系に進化中のフラちゃんと面影が似てる。もちろんフラちゃんは「取られて」ないですが(ホッ)。
Commented by レイネ at 2013-01-05 03:54 x
bonnjourさま、この歌劇場の演目や演出はかなり面白そうなんですが、出遅れてしまい、安くて良く聴こえ舞台もよく見える席は全て売切れで。迂闊でした。。。
歌劇場周辺(つまりホテル周辺)は、クリスマス商戦たけなわでやたらと人出が多くてげっそり。なんだか渋谷みたいで疲れました。

ゴヤのカルロス4世夫妻の肖像画は王宮にもあって、プラドの家族の肖像にそっくりで倣岸そのものなのに、しっかり飾ってあるのはよほど依頼主の気に入ったのでしょうね。
一方、暗い絵は、プラドに2夜通ったにも関わらず見ることができませんでした。他の絵に長くかかずらわってしまって。

次に生フラちゃんを聴けるのはいつになるかわかりませんが、2月になんと近場のデュッセルドルフでサバドゥスが『セルセ』!しかも、ヘアハイム演出で昨年のコーミシュ・オパー・ベルリンと同じやつ!これは見逃し・聞き逃すことは許されません。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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