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歌劇場でのコスチューム・セール参戦記@リエージュ

歌劇場で不要になり場所塞ぎの衣装を放出するセールというのは、リエージュでは大体、
3年おきくらいにあるように思う。
アムステルダムの歌劇場では、知ってる限り今までに1回あった。
興味は大いにあっても、なかなか実際にセールに出かける機会に恵まれなかった。
満を持して、本日、リエージュまで行ってきた。同行したのは、ファンションに関しては情熱を
共有するPである。

実は、昨日、Pといっしょにマーストリヒト市内にあるウェディング・ドレスや式典およびパーティ用の
服専門店のセールに出かけた。オートクチュールで、オーソドックス過ぎず遊びのあるデザインと
素材およびシルエットで満足できるジャケット2着をゲットしたばかりだ。オペラやコンサートやパー
ティーにピッタリ。しかし、おかげで懐はあまり暖かくない。

リエージュでは、いつかヴェネツィアのカーニヴァルで着るためのドレスを狙うことにした。

歌劇場でのコスチューム・セール参戦記@リエージュ_c0188818_644663.jpg

       事前に目を付けていたのは、『ユグノー教徒』のマルグリット・ド・ヴァロワ
       役でアニク・マッシスが着たドレス。

一体いくら位になるのか見当が付きかねたが、100ユーロを上限と決めた。オークションと同様に
セールに参戦する時には、自分の決めた上限を絶対に超えないことを厳守する。そうでないと、
その場の熱気に押されて、どうでもいいようなものを安いからという理由で買って後悔することになる。

セールに勝つための鉄則はシンプルで、誰よりも早く、狙っているもの目がけて突撃することだ。

しかし、まず、出だしで躓いた。
11時開始のセール会場、すなわち歌劇場に到着したのが11時20分ごろ。出遅れている。
すでに入り口から黒山の人だかりで、恐れていた通り、デパートのバーゲン・セールのような様相を
呈している。開場前から並んで待って入った人が多いのだろうな、と思う。

ホール、フォアイエ、廊下などに、木製のコンテナのような衣装保管および移動用のケースが立ち
並び、その中に様々な衣装がハンガーにかかっている。全部で800点ほどだという。
試着室などないから、男女入り乱れて、その辺の廊下で真剣に試着している。すごい熱気である。
目指すタイプのドレスは、もうほとんどしっかりと誰かの腕に抱えられていて、探しても見当たらない。
そして、主役用の手の込んだドレスは大体、200ユーロくらいと、お安くない。

歌劇場でのコスチューム・セール参戦記@リエージュ_c0188818_6145799.jpg

     一番欲しかった、やはりマルグリット・ド・ヴァロワのドレスは、今回の
     目玉商品のようで、レジ近くのマネキンが着て立っていた。凝った
     素晴らしい素材(シルク)とデザインが光っていて、実物は工芸品の趣。
     さすがに300ユーロ。しかもバニエなし。


わたしの手が届きそうな値段のドレスは、その他大勢の合唱団員が着ていたようなものだ。
それでも120から160ユーロはする。そして、もうあらかた残っていない。
かろうじて、これならばと思えるドレスを一着見つけた。『ランメルモールのルチア』の結婚式の
場面で招待客の一人が着ていた衣装で、赤のロング・ドレスにブロカードのロングのガウンと
同布の帽子のセット。

歌劇場でのコスチューム・セール参戦記@リエージュ_c0188818_6285544.jpg

       左手後ろの方に立ってる女性が着ている衣装を試着。

このドレス・セットは、ワインカラーに黒で模様を織り出したブロカード素材でルネッサンス風提灯袖の
ロング・ガウンと、下の赤のロング・ドレスの胴の部分にヴェネツィアのカーニヴァル用仮面そのものの
デザインの鳥の羽とライン・ストーンを使った豪華でアーティな飾りがポイントになっている。
シルエットはオーセンティックだが、ディテールが凝っていて、全体的に派手で、ヴェネツィアの
カーニヴァルで着たいという目的にどんぴしゃだ。
ドレスの上半身部分は、デコルテがスクエアに開いていて、ビスチュエのようにしっかりした作りで、
背中は交差した紐を縛って結ぶようになっている。
スカート部分が安っぽい透けるようなオーガンジーなのだけが不満であるが、丈もウエストもぴったり。

ロングドレスはいずれもコルセットのようになった紐を後ろで締めるデザインになっていて、1人で着る
のは不可能なので、着付け部屋みたいなところで着せてもらえる。『風と共に去りぬ』の主人公が
小間使いにギューっとコルセットの紐を締められているところを思い出してもらいたい。
フォアイエの両面にある鏡の前に立って、着姿をチェックしてみた。かなり楽しいコスプレである。

買うべきかどうかかなり悩んだのだが、お値段が120ユーロで、予算を20ユーロ・オーヴァーした
ので、原則を貫いて諦めた。カメラを持っていかなかったので、着姿を写真に収められなかったの
が、返す返すも残念だ。


歌劇場でのコスチューム・セール参戦記@リエージュ_c0188818_6561941.jpg

       『エルナーニ』で使用された帽子その他をPはゲット。

Pとは、目指すものが異なるから、時間を決めて出口で待ち合わせることにした。
彼女はなんと、帽子5つ、ワンピース、エプロン、スカート、ショールの計9点を合計65ユーロで
ゲットした。(わたしは、結局何も買わなかった)

実際に舞台で着用されたものだから、全てに、歌劇場の名前、演目名、役名、そして歌手の名前の
タグがブランド・ラベルの代わりに縫い付けられている。
それを読むだけでも楽しい。

例えば、Pがゲットした帽子の一つは、『エルナーニ』でドン・リッカルドが被っていたものだし、
刺繍が素敵な大判のロング・ショールには、アンナ・カテリーナの名前が書かれているから、
「もしかしたら、アンナ・カテリーナ・アントナッチが使ったもの?」とか、物自体からストーリーが
発せられるのだ。
シャーベット・トーンのペール・グリーンのシザルで出来たつば広帽には、「コジ、フィオルディリージ、
ハーヴェマン」と書かれたタグが付いているので、そのプロダクションではバーバラ・ハーヴェマンが
フィオルディリージ役だったのだと思われる。果たして、彼女のバイオを読むと、ORWでコジ・
ファン・トゥッテに出演と書いてある。

どれも手作りの一品物、オートクチュールだから、手仕事を確かめるという楽しさもある。
その他大勢の着る衣装は、素材こそ高いものではないだろうが、結構デザインや細工が凝って
いて、縫製にも手が抜かれていない。

12時過ぎにセール会場を出る頃には、レジは長蛇の列。ホールやフォアイエを埋め尽くしたケースは
あらかた空になっていた。たったの1時間である。今日一日でほとんど全て捌けて、かなりの売り上げに
なったろう。
オペラの衣装にフィーヴァーする人たちの多いのに目を丸くしたが、マーストリヒト近辺はカーニヴァル
が盛んな地域である。皆、カーニヴァルのコスチュームをゲットするために来たんだろう。
カーニヴァルの衣装は、専門店で買うと、ちゃちなものでも結構な値段である。
手作りする人も多いが、時代もののコスチュームは、やはり専門家の手になるオペラの衣装だと
本格的であるから、100ユーロほどで手に入るなら、お値打ちともいえる。
by didoregina | 2012-11-24 23:32 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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