アイセル湖を横断してウルクへ  オランダ一周セイリング記その4

アムステルダムのシックス・ハーフェンに3泊して荒天を遣り過ごした後、アイセル湖へ
帆を進めた。

c0188818_1651848.jpg

          アイセル湖を行く3本マストのバーケンチン

もともとはZuiderzeeという名の大きな湾状にオランダ北部に抉れた形で入り込む海だった
北部入り口とワデン海の間に、1932年大堤防Afsluitdijkが築かれた。
その結果、淡水化および干拓されて形成された汽水湖が IJsselmeer(アイセル湖)だ。

本日の目的地は、アイセル湖の東北岸にある漁師町ウルク(Urk)で、干拓が始まる前までは
ザウダーゼーに浮かぶ島だったが、1939年に後背の元海底が北東ポルダーとして干拓され
たので本土と繋がっている。

アイセル湖の南半分は正式にはMarkermeer(マルカー湖)と呼ばれる。やはり堤防で
区切られているので、北部のアイセル湖とは区分されている。

船でアイセル湖に入るには北部からでも南部からでも堤防を越えないといけない。つまり、
水門を通過することになる。
いや、その前、アムステルダムを出港してすぐに、アイ湾からオレンジ水門を通ってマルカー
湖に入ったのだが。

マルカー湖からアイセル湖に通じる水門に入ると、大きな2本マストのケッチかスクーナー風の
船が先に舫っていたので、その船体に我らのトリトン号を抱きつかせてもらった。
そのエルドラルド号に乗り組んでいる3人のうちの1人の、白い歯がまぶしい笑顔に見覚えがある。
「どこかでお会いしたことがあるようですが」と話しかけているうちに、思い出した。
2年前、友人VとTの銀婚式パーティーが、アイセル川上で船を貸しきって行われた。その
パーティー船バウンティー号の船長だった人だ。
「アイセル湖に入ってから、2度ほど船底が湖底の砂に入り込んだので、スクリューで脱出
したっけねえ」と、当の船長さんも思い出した様子。その後、バウンティー号は売り払って、
現在は、このエルドラド号を所有しているという。
しかし、アイセル湖で再会するとは、奇遇にびっくり。

2つの堤防のおかげでほとんど完全に淡水化したマルカー湖沿いには、マルケン島の有名な
灯台(マルケンの白馬と呼ばれる)や、パンパス島(オランダの黄金時代に、西インドや東
インドへの航海に向かう貿易船が、風待ちのため寄港するのが慣わしだった)など、見所も
いくつかある。

c0188818_17325425.jpg

        レリーシュタッドにあるバターフィア造船所で再現されたバターフィア号のレプリカ

レリーシュタッドは、1986年にオランダ12番目の州になったフレーヴォランドの州都だ。
フレーヴォランド州の大部分は、もともと海底だったところを干拓して作った人工の土地である。

オリジナルのバターフィア号は、1628年にアムステルダムで建造された東インド会社の貿易船
だった。しかし、1629年にジャワからオーストラリアに向かう途中で乗組員の反乱騒ぎが起き、
しかも難破。流血の惨劇として名を残すことになる。
その船のレプリカ建造がこの造船所で始まったのは1985年。主にドロップアウトしたりして
就職難の青少年の職業訓練として、10年をかけて、オリジナルと同じ材料と工法とで手間隙かけて
作り上げられた。1995年に進水式を迎え、それ以来バタフィア号は内部見学もできる。
海洋オタクおよび帆船ファンならば必見の、装飾も美しい手作りの船だ。

c0188818_17542395.jpg

       バターフィア号に続いて現在建造中なのは、7プロヴィンシーエン号のレプリカ。
       提督ミヒール・デ・ロイター率いる軍艦は1665年にロッテルダムで造船された。
       こちらも、歴史的船のオリジナルに忠実な材料と手法による再現プロジェクトで
       青少年失業対策の一環であるのも同様。右手前はバターフィア号。


c0188818_18112593.jpg

       比較的のんびりとしたアイセル湖セイリングの一日が終わる頃、
       ウルクの港が見えてきた。水上から眺めると島そのものだが、
       後ろ側は干拓されたポルダーと陸続きだ。


c0188818_1816881.jpg

          ウルクの港は、漁港らしさの香りふんぷん。


c0188818_18174360.jpg

          日曜日なので、干された網もよく乾いている。


実際、この町では、日曜日=安息日という意味が文字通り非常に深く解釈されている。
オランダでも厳格なプロテスタントの人たちが多い北部の、古くからの漁村などでは、
安息という意味は絶大で、日曜日には庭仕事はもちろん自転車に乗ったりもしてはいけない。
だから、ここのヨット・ハーバーのハーバー・マスターもオフィスもお休みで、空いてるバース
には緑色の印があるから、そこに勝手に係留しろというし、料金はタダ!


c0188818_18231834.jpg

     キリストの恩恵の賜物と感謝しつつ、ロマンチックな海岸を散歩した。

c0188818_18252399.jpg

           日曜日にしてもいいのは(しなくてはならないのは)
           教会に行くことだ。しかも教会には着飾って。

レストランの窓辺の席に座って外を眺めると、夕方、海沿いの小道を着飾って散策する家族
連れとカップルが非常に多い。観光客ではない、地元の敬虔なプロテスタントの人たちである
ことは一目瞭然。
男性は皆スーツ姿で、女性は全員スカートを着用している。
ラフでカジュアルな服装が主流で、ネクタイとかスーツなんてオペラやコンサートでもなかなか
見かけないし、若い人たちのスカート姿なんてめったに拝めないのが普通のオランダであるから、
ここの人たちの信仰心の篤さがよくわかる。

レストランもほとんど開いていない。ほぼ一軒だけ開いていたレストランで働いているのは、町の
外から通っている人たちだ。スリナムかインドネシア系っぽい若いウェイトレスは「ここに住むの
だけはカンベン」と言っていた。


c0188818_18362817.jpg

            沈む太陽に向かって吼えるH
[PR]
by didoregina | 2012-07-04 11:41 | セイリング | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


最新のコメント

Vermeerさま、多分..
by レイネ at 01:38
トマスのソロ・コンサート..
by Vemeer at 01:25
Vermeerさま、この..
by レイネ at 20:56
詳細なレポート、楽しく拝..
by Vermeer at 18:02
ロンドンの椿姫さま、それ..
by レイネ at 17:03
大満足のマスタークラスで..
by ロンドンの椿姫 at 23:41
鍵コメさま、ヴェロニカ・..
by didoregina at 18:57
Mevrouwさま、北海..
by レイネ at 18:46
レイネ様も怒涛の更新で、..
by Mevrouw at 23:33
Mevrouwさま、サー..
by レイネ at 22:10
Mevrouwさま、夏の..
by レイネ at 22:05
新作オペラに挑むのは本当..
by Mevrouw at 20:56
クロアチア~ベネチアを自..
by Mevrouw at 20:27
Mevrouwさま、ご高..
by レイネ at 20:19
ようやく一息つける日なの..
by Mevrouw at 19:57
Mevrouwさま、癒し..
by レイネ at 16:49
このところネットからも音..
by Mevrouw at 16:37
斑猫さま、もうすでにパリ..
by レイネ at 16:57
ロンドンの椿姫さま、まさ..
by レイネ at 16:54
こんにちは CT研究会..
by 斑猫 at 00:16

以前の記事

2016年 11月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 06月
2015年 04月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月

タグ

最新のトラックバック

究極の愛を描いたワーグナ..
from dezire_photo &..
バッハが人類に残したメッ..
from dezire_photo &..
バッハが『ロ短調ミサ曲』..
from dezire_photo &..
ルター派のプロテスタント..
from dezire_photo &..
ダンテの『神曲』 ”地獄..
from dezire_photo &..
ポン=タヴァン派、総合主..
from dezire_photo &..
倉冨亮太さんの繊細な美し..
from dezire_photo &..
ダイナミックで刺激的な多..
from dezire_photo &..
贅沢と快楽に生きる娼婦な..
from dezire_photo &..
バッハとヘンデルの音楽性..
from dezire_photo &..

カテゴリ

全体
バロック
映画
オペラ実演
オペラ映像
オペラ コンサート形式
着物
セイリング
コンサート
美術
帽子
マレーナ・エルンマン
イエスティン・デイヴィス
クイーン
CD
20世紀の音楽
旅行
料理
彫金
ビール醸造所
ベルギー・ビール
ハイ・ティー
サイクリング
ダンス
ハイキング
バッグ
教会建築
カウンターテナー
演劇
未分類

検索

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

音楽
映画

画像一覧