アムステルダムの西部開拓  オランダ一周セイリング記その3

アムステルダムまで行くのは、日帰りとはいえほとんど遠征、という感覚になる。電車で片道
(最速の場合でも)2時間半かかるからだ。そして、NS(オランダ鉄道)は週末を保線の
日と決めているので、大概迂回路を通ることになり、2時間半で着けることはめったにない。
日帰りでオペラやコンサートを鑑賞するためには、駅に着くや否や、歌劇場なりコンセルトヘボウ
なりまで一目散に直行するしかなく、わたしにとってアムステルダムのそれ以外の地域は、
今まで足を踏み入れたことのない未開の地である。

3日間、中央駅真裏にあるヨット・ハーバーに係留したので、アムステルダム探検・開拓の
いい機会だ。

アラード・ピアソン博物館で開催中の『馬  ホメロスからジンギスカンまで』という特別
展覧会へ行ってみた。
この博物館の前は、歌劇場に行く途中いつも通る。隣接して中で繋がっているアムステルダム
大学や付属博物館には入ったことがあるが、この古代博物館の見学は初めて。

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           古代ギリシャ赤絵陶器の破片。馬と少年の交わす
           親愛に溢れた眼差しが魅力的。

常設展は、エジプト、メソポタミア、ペルシャ、ギリシア、エトルリア、ローマなどの様々な
発掘品。展示数が比較的少ないから、駆け足にならずじっくり見て回れる。

特に、エトルリアの墓室内部を壁に投射したインタラクティブの展示が迫力あり。十字に線が
引かれた床に立って前後左右に動くと、その方向に合わせて墓室内に入ったかのようにヴァー
チャル見学ができるのだ。ズームしていくと、ちょっと頭がクラクラしてしまうが、面白い。

今回の特別展では、馬に焦点を合わせて、特に東西の大国(モンゴルとギリシア)での
対照的な違いを浮き彫りにしている。
ギリシアは、北部の一部を除いては山がちであるため、馬の使用は軍事的にも農耕面でも
出遅れていた。だから、実用的というよりは、富の象徴としての価値が高かったという。馬が
大々的に戦争に使用されるようになったのは、アレキサンドロス大帝の東征以後からである。
(彼は、ギリシア北部のマケドニア出身)

それに対して、広大な草原の遊牧民であるモンゴル人は、馬の扱いにも慣れ親しんでいた。
馬具や馬頭琴などの展示や、実物のパオが設置してあり、美しくかつ実用的な内装もしっかり
見られるのがうれしかった。
それから、モンゴル独特の不思議な上音が倍音のように響く発声法ホーミーも聴くことが出来た。


未開の地、アムステルダム西部にある西公園とウェスターガスファブリックまで行ってみた。
そこに行く途中のハーレマーストラートは、個性的な商店が並ぶとても楽しい通りだ。

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      チョコレート屋さんのショーウィンドーには、漁解禁・水揚げされたばかりの
      旬のニシン(ホランセ・ニュー)そっくりのマジパン菓子が。
      スヘーヴェニンヘンで初物を食べそびれた。


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      アムステルダムの西の外れ、元ガス工場の敷地が文化施設になっている。

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      緑溢れる広大な敷地内は、キャンパスの趣で、赤レンガの様々な
      建物が点々と。ここは、カフェ兼映画館。
      また、巨大なガス・ドームは、現在、多目的ホール。

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      池のほとりに並ぶ身障者用の小型車デ・カンタ。      

ガス・ドームの中に入ると、身障者用の小型車が集結していて、色々なコースを運転している。
運転実技試験の最中だろうか?

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          外にも、デ・カンタが勢ぞろい。

たまたま、車の近くにいた背の高い女性に「特別な教習か、運転実技試験なんですか?」
と、訊くと、「自動車に乗った身障者とナショナル・バレエのバレリーナたちとのダンス・コラボ
なのよ。6月下旬にここで公演します。」と言って、脚が不自由なその女性は自らデ・カンタ
まで歩いて、フライヤーを何枚か持ってきてくれた。「めったにない企画だから、観に来てね」
と言われると、コンテンポラリー・ダンス・カンパニーを学生時代は主宰していて、ダンス教師の
資格を持つダンスおたくであるHは喜んだが、あいにく出張の日程と重なるので悔しがった。


デ・カンタとバレリーナたちによるダンス・リハーサル。
         
その日たまたま見たリハーサルは、デ・カンタのみのダンスだったが、驚いたことに、このコラボの
ドキュメンタリー番組が4回にわたってTV放送された。


          トレイラーの声の主、最後の方に登場する赤いスカーフの
          女性が主催者で、私たちにフライヤーを分けてくれた人。


こんな風に、ちょっとアルタナティブでクリエーティブな人びとが集まるこの界隈が、とても
気に入った。
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by didoregina | 2012-06-27 09:06 | 旅行 | Comments(4)
Commented by bonnjour at 2012-06-28 11:24
セイリングに、カルチャー一杯のアムステルダム滞在を組み合わせるのって大充実の旅、ですね。

古代ギリシャの陶片の絵は、ジャン・コクトーのドローイングかと思ってしまいました(っていうか、コクトーがギリシャ美術から影響を受けたのかしらん?)。http://bit.ly/Myd1d5 <==こんなのとか。

マジパン製ニシンは、生臭さが伝わってくるような迫真ぶり。これは食べたくないなあ(笑)。若鮎をデザイン化して焼き菓子で表現する日本とは、ずいぶんな違いですね。http://bit.ly/bW5kFv <==やっぱりこっちのほうが食欲がわく。
Commented by レイネ at 2012-06-28 16:28 x
bonnjourさま、写真リンクご紹介ありがとうございます。
こうして見比べると、たしかに、コクトー描くオルフェの横顔はとってもギリシア的だし表情もそっくりですね!

マジパン菓子そのものは好きではない(激甘)のですが、このニシンのリアルさには降参しました。銀色に光る皮がうっすら残ってる感じとか尻尾の色合いも。
求肥入り焼き菓子の鮎、食べてみたいわ。日本の練り切りとマジパンは、材料と製法はほとんど似たようなものだけど、食感の繊細さでは日本の勝ち。
Commented by Mev at 2012-07-03 02:50 x
オランダ一周セイリング1-3までいま拝読しました。 
素敵ですねぇ。 
すぐそことはいってもやっぱりヨットでめぐるのは格別でしょうね!
ヨットハーバーは雰囲気ありますよね。
アムステルダムのアイ湾北側って、狭い小路のような水路が何本もあったりして独特な所ありますよね。 それに信じられないくらい素朴な村もあって、でも、アムステルダム市だっていうのが不思議です。

EYEとかMuziekgebouwは行ったことありますが、アラード・ピアソンもWesterparkのガスタンクもまだ行ったことがありません。次男が社会科で古代ギリシャを習ったところなので夏休みにライデンまでいっしょに行こうと思っていました。でもまずアムスの方から行く事にします!! いい情報ありがとうございました。 あと、ガスタンクはぜひ行かねば! 私はアムスには近いですがやはり子供と犬がいるとなかなかでかけられません。時間を作る努力しなくちゃです。あと、軍資金をなんとか稼がねばですね。
Commented by レイネ at 2012-07-03 05:26 x
Mevさま、アムステルダムのアイ湾北側って、本当に独特の雰囲気がありますね。帰りに寄ったのは別のハーバーで、そこは多分Mevさんが以前に水門脇のカフェに立ち寄られたニューエンダムにありました。ここもアムスとは信じられないほど。

Westergasfabriekは、とても面白い複合文化施設が点在するキャンパスの趣で、気に入りました。
アラード・ピアソンは近いのはいいけど、やっぱり内容的にはライデンの博物館にはかないませんから、そちらもぜひ!

お仕事始められる(た)そうですね。ポジティブなヴァイタリティには感服するばかり。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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