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The Girl with the Dragon Tattoo 『ドラゴン・タトゥーの女』

原作となったミリオン・セラーの『ミレニアム・シリーズ』は、読んだことがない。
スウェーデンで映画化されたものはTV放映を一部観ただけなので、不気味かつおどろ
おどろしいショッキング・シーンだけ印象に残ったが、全体のストーリーは知らなかった。
スウェーデン版映画の方は、一般的ヒットというよりはカルト人気を博していた。
それがハリウッドでリメーク映画化され、ダニエル・クレイグが主演ということを知り、絶対に
観たい、と思っていた。NRC新聞でも、こちらのハリウッド版のほうがスウェーデン版よりも
ずっと出来がいいと好評である。

試験中で午後は授業がない次男といっしょに出かけた。ハリウッド版映画だから、いつも行く
リュミエールではなく、シネコンでのロードショーだ。
めったに行かないのでつい最近まで知らなかったが、パテという大型チェーン・シネコンでは、
平日午後と週末午前の部は、5ユーロ50セントで最新映画が観られるのだ。
木曜午後2時半からの上映だったので、席はがらがら。観客数は最初7人、途中退場2名という
ありさまである。

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監督:David Fincher

2011年 アメリカ・スウェーデン・イギリス・ドイツ

ミカエル:Daniel Craig
リスベット:Rooney Mara
ヘンリック:Christopher Plummer
マルティン:Stellan Skarsgård
ディルク:Steven Berkoff
エリカ: Robin Wright Penn
ビュルマン:Yorick van Wageningen
アニータ:Joely Richardson
セシリア:Geraldine James





まず、オープニング・テーマ曲からしてかっこいい。なんと、レッド・ツェッペリンの『移民の歌』
をカレン・Oという女性歌手が歌っているのだ。ノリのよさでは、ロバート・プラントに勝るとも劣ら
ないから、こちらはリズムに合わせて思わず頭を振ってしまうのだった。。。
そのオープニング映像も白黒で非常にアーティーである。とてもスタイリッシュなので、本編への
期待がいや増しになる。


     トレイラーのバックにもカレン・Oの歌う『移民の歌』が流れている。
     ビートやメロディーのかっこよさもさることながら、北欧の人々を題材に
     している歌詞内容も、女性がパワフルに歌っていることも、まるで
     この映画のために誂えたかのようで、ドンぴしゃりと嵌っている。

ストーリーの核心にはあまり触れないでおくが、ダニエル・クレイグ扮する敏腕ジャーナリストの
ミカエルに、60年代の失踪(殺人?)事件調査の依頼が、スウェーデン産業界の重鎮から来る。
その一家の面々は、皆暗い秘密を隠していそうで、大金持ちなのでどいつもこいつも傲慢でイヤな
タイプばかり。
舞台となる屋敷はスウェーデン北部の個人所有の島にあり、携帯電話も通じないし、冬は雪に
閉ざされる。その島の一角の家を与えられ、ミカエルが探偵よろしく調査を行うのだが、舞台および
人物設定が、『八墓村』とか『犬神家の一族』みたいな感じである。

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         ポーズが007になってるが、ジャーナリストのミカエル。

もう1人の主人公と言えるタイトル・ロール、ルーニー・マーラ扮するリスベットはゴシック・パンクの
ハッカーである。
マーラの体当たりの役作りが素晴らしい。彼女自身はNYの名門の令嬢であるらしいが、リスベット
役のために大変身して、痛々しい過去の経験によって精神的に不安定な女を演じるのだが、説得力
抜群。

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         まるでコンピュータ・ゲームから抜け出したようにスリムで
         ゴシック・メイクもパンク・ファッションもキマってる。

リスベットの暗すぎる過去と現在の法的・経済的不利を知る立場を悪用して彼女を弄ぶ、とんでも
ない野郎のビュルマン役は、オランダ人俳優が演じている。かなり情けない役どころである。

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         リスベットにエレベーターでかちあったビュルマン。


ミカエルのアシスタントに雇われたリスベットは天才的能力を発揮することになる。水を得た魚の如く
痛快なシーンが多くなる。新時代の理想のヒロイン像の確立だ。

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         リスベットにとって、ミカエルは初めて「友達」と思える相手。

リスベットがミカエルのアシスタントになる際、「女性を次々に殺した殺人鬼を探す」という言葉に
反応したので、「女性の敵」がキーワードで、復讐が彼女のエネルギーの源というか生きる
原動力となっているらしいことがわかる。
普段からやることはぶっ飛んでいて、自分の敵には情け容赦ないリスベットだが、心は脆く、傷つき
やすい少女のようだ。そういう風情を感じさせるマーラの演技力と役作り、もしくは監督のリスベットに
対する視点に好感が持てる。
また、マーラの英語のスウェーデン訛が本格的っぽいので、北欧の女優かと思っていたら、生粋の
アメリカ人であるのに驚いた。ダニエル・クレイグよりも外国語センスがありそうだ。

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         企業のアーカイブにも正式にアクセスできるリスベット。

『裏切りのサーカス』でもそうだが、デジタル化されていない古いファイルである膨大な量の情報
を集めたアーカイブや図書館が舞台になると、物理的な圧迫感が視覚化され、緊張感が増す。
デジタル時代にあって、こういうシーンが映画にはまだよく登場するというのは、一見逆説的だが、
情報をマッスとして見せないと迫力が足りない、ということかもしれない。

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         依頼人の当主ヘンリック役は、マックス・フォン・シドウだと
         ずっと思って見ていた。そっくりだ。

ブルジョワ一家の秘密を暴くようなストーリーが、スウェーデンやデンマークの北欧映画には多い
ように思う。古くはベルイマン、比較的新しいものではトマス・ヴィンターベアのFesten(邦題
『セレブレーション』)がそうだし、グロテスクに近い暴力シーンも北欧映画には付き物だ。

この映画にもサディスティックなシーンが結構沢山出てくるが、コンピュータ・ゲームのようにクールな
映像で体温があまり感じられないせいか、それほどグロではない。マーラの白く細い肢体の美しさに
救われている、と言うべきか。
なお、ダニエル・クレイグは冴えない探偵みたいな役だが、脱ぐシーンが登場するのは彼の宿命か
お約束か。
クレイグは、拙ブログにもタグを設定してあるほど好きな俳優であるが、今回は、マーラの勝ち。
でも、クレイグ出演の映画でハズレというのは、今まで観たことがない。(ハズレそうなのは観ない)
by didoregina | 2012-01-27 10:53 | 映画


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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