アンドレアス・ショルのTVインタビュー 続き

W 最新CD2枚が発売され、そのうち1枚はバッハで、バッハ・カンタータのコンサートも
  予定されてますね。ライナーノーツに書かれてるように、バッハを歌うのは難しいですか?
S バッハは、妥協を知らない作曲家です。同時代のヘンデルなら、歌う人のことを考慮に
  入れて作曲しているので、息つぎの箇所があるし、高音もさほど高すぎず、テンポも異常に
  速くはない。
  しかし、バッハの場合、自身の作曲作法に従って曲を書いているので、妥協を許さず、
  歌手に高度な要求をすることになるのです。これが歌えないなら歌わなくて結構、歌えるのは
  上手な歌手だけでいい、と言っているかのように。
  
P 難しいという例を挙げると?
S 例えば、ソロ・カンタータですが、今ちょっと声が出しにくいのですが、歌ってみますね。

と言って、ショルはバッハのカンタータの一部を歌う。会場および司会者から拍手と笑いが起こる。

S テンポがもっと速くなると息つぎが難しくて、精神的にもあせり、空気はどこ?みたいな感じに
  陥るんです。だから、バッハを歌うということは、ある種の挑戦です。

W どういうトレーニングをしているんですか?
S ほぼスポーツと同様に毎日のトレーニングを怠りません。
W スポーツ的鍛錬ということですね。沢山息が吸えるように肺活量を増やすとか?
S 歌うときには、体全体を使うので、体の鍛錬です。声は喉だけでなく、お腹も使いますから、
  座ったままでは思い通りに声が出せません。立ってるほうが歌いやすいのです。
  それと声のトレーニング。最初はゆっくり歌って、徐々に少しずつ速くしていって、速いテンポ
  でもコントロールを失わずに歌えるようにしていきます。
  丁度、氷の上を車で運転するようなものです。最初はふらふらしますが、ゆっくりと慣らして、
  コントロールがきくようにします。でも、速度を速めると扱いがまた難しくなるでしょう。

W 古楽には、流行り廃りがあります。一時期は忘れ去られ、その後再び活気を取り戻したり、
  オーセンティックな解釈のピリオド奏法がもてはやされたり。
  再び、古楽ブームが去ってしまうのではという不安は?
S いいCTであれば、いつでも注文はあり、仕事にあぶれるということはないはずです。

W CTは、レア商品でしょうか?つまり、数があまり多くないという意味で。
S 今は流行の最中なので若いCTが沢山いるし、バロック・コンサートなどの活躍の場も多い
  です。ルネッサンスやバロックなどの古楽が盛んなので、CTの需要も多いのです。
 
W もし、また流行が去ったら、どうします?音域を下げて、テノール歌手に転向するとか?
S それは不可能です。わたしがバリトン歌手として生き残ることはできないでしょう。
  高音の方が、わたしにとって自然な歌声だからです。

H 高い声と低い声では、どちらが楽に出せるんですか?
S 高音の方が無理せず自然に出せます。

W コンサートについて聞かせてください。
S オズワルド・フォン・ヴォルケンシュタインは、中世の騎士であり作曲家でした。
P 15世紀の作曲家ですね?どんな曲を聞かせてくれるんでしょうか。
W 座ったまま歌うんですか?
S いえ、立って歌います。昨晩はロッテルダムのデ・ドゥルンでコンサートがあり、明晩は
  エイントホーフェンで歌います。オズワルド・フォン・ヴォルケンシュタインの曲は、素朴な
  恋愛歌が多いです。

P アムステルダムのコンセルトヘボウでもコンサートの予定があるとか?
S 二月にバーゼル室内管とアムステルダムでバッハ・カンタータのコンサートを行います。
P コンサートは2回ありますよね?
S えっ、そうだっけ?いや、一回だけです。それと、『ヨハネ受難曲』がその後あります。
W ほうほう、『ヨハネ』もね。ところで、この作曲家の顔は、ハイン(ゲスト)の使用後みたいな
  感じですね。。。

ショルの正面に座っているゲストはハインというらしい。なるほど、フォン・ヴォルケンシュタインの
片目がつぶれた顔は、ゲストの術後(どんな?)の顔はこうなるだろう、という感じだ。

ショルが立って、ヴォルケンシュタインの歌をア・カペラで歌う。


しかし、こうして文字に起こしてみると、動画の面白みがあまり伝わってこない。。。
内容的にどうこうというのでなく、ショルが話している雰囲気が面白かったのだ、と気がついた。
  


  



  
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by didoregina | 2012-01-20 10:32 | コンサート | Comments(10)
Commented by kazuko at 2012-01-20 20:54 x
レイネさま
本当に感謝、感激!!バッハのことが知りたかったのでこれですっきりしました。私のようなただ好きなだけの素人には、よく理解できましたよ。深く知らないだけに納得できるってことあるのかな?
折角の素晴らしい翻訳ですので、私のところにもこちらのうURLを紹介させて下さいね。


Commented by レイネ at 2012-01-20 21:31 x
kazukoさま、今日はPCの調子がよく、すらすらとはかどりました。この前の記事にも少し手直しを入れました。
バッハを歌うのは、ショルのような人にも難しいのですね。わたしもバッハの曲をピアノで弾いてると、あまりに緻密なのでどこで息をついだらいいのかわからず苦しくなってきます。だから、ショルの言葉でほっと一安心。
司会者で右に座ってるウィッテマンは、作曲家の家系の音楽好きのジャーナリストで、バッハに関する本も出してる人です。もっと深い内容に切り込んで訊けたんでしょうが、音楽番組ではないので一般向けの質問に終始したようです。
Commented by galahad at 2012-01-20 22:36 x
トーク内容の翻訳ありがとうございます。興味深い内容をわかりやすくお話しくださってますね、こういう番組があるのが素晴らしい! ショル兄のにこやかな話し方素敵。
それにしても「蘭学」というくらいで日本では西洋の学問はまずオランダからで、英語もオランダ語から学んだというのに今では話者が少ないというのが残念な気がします。
Commented by レイネ at 2012-01-20 23:24 x
galahdさま、クラシック音楽番組ではない一般向けトークショーなので、CTに関するベタな質問にも穏やかに答え、真摯に判りやすく説明しようというショルの姿勢が好感度抜群!生の歌声は聞けなかったけど、これで印象がぐ~んとアップしました。

語学の人気の趨勢というのは時代を映す鏡ですね。日本語の人気もこの十年ほど凋落を辿る一方で。。。
Commented by さわやか革命 at 2012-01-21 13:59 x
翻訳ご苦労様です!
バッハの歌曲については波多野睦美も同じことを言ってましたね。パーセルは非常に歌いやすいのに、バッハは「本当に歌えるのか」と言いたくなる、とか。

この手のインタビューでは、そもそもCTとは何か--というところから始めるのは仕方ないでしょうね。
知人が日本の某CT歌手のことを「障がいがあるのかと思った」などと平然と言ったことがあって、ビックリしたことがあります。
Commented by レイネ at 2012-01-21 18:39 x
さわやか革命さま、ショルの笑顔で多少の苦労も報われる気分です。
やっぱり、バッハがこなせれば、他の作曲家なら誰でも来い!という感じなのね。バッハの鍵盤曲にはトラウマが付きまとってます。弾いてると、本当に空気が足りなくなる感じがして。

今後も、今年の目標「CTを極める」達成のため、色々な情報を集めていきたいと思います。
CTに対して、バロック音楽にあまり接したことがない人が持つだろう日陰者のイメージって、あるんでしょうね。。。
Commented by straycat at 2012-01-23 16:54 x
レイネさん、興味深い内容の翻訳ありがとうございました。

私も頭声とファルセットの違いがよくわかりません。テナーとソプラノは同じ譜面の中で処理されてますが、結局テナーがオクターブ下で、それは周波数の違いという事ですよね?CTとソプラノは結局周波数は同じ?そして頭声も同じ?ではどこに違いが?・・・う~む、分かりません。声帯の使い方とか、声の当て方とか、響かせる部位が違うんでしょうか?謎です。

↓のフレディーの画像、笑いました。どう聴いてもフレディーは頭声じゃないですよね、あれはただの素っ頓狂な声かと(ファンですから~) 
Commented by レイネ at 2012-01-23 17:38 x
straycatさま、頭声とファルセットの違いってよくわからないけど、CTの個人的知り合いがいたりすれば、色々訊けて疑問もすっきり解決できるんでしょうが、情報や用語の使用法がまだ混沌としてます。

>声帯の使い方とか、声の当て方とか、響かせる部位が違うんでしょうか

そういうことだとわたしも理解してるんですが。。。

フレディーの声は7色の声よ。でも、ロジャーの高音はかなりCT的ではないかと思います。In the lap oft he godsの冒頭の叫びの部分とかが。
Commented by Mev at 2012-01-23 18:44 x
ああ、これでますます2月5日のショルのコンサートが楽しみになってきました~。 確かにショルの柔らかい話しぶりとにこやかな態度は大変好感度が高かったです。見ていてこちらもるんるんして来ました。

今はまだ日本人同士では「CTが好き」というと「ヘンな目」で見られることもあるというひどい状態なのですが、オランダはその点全然「差別」なくて純粋に美しい声を楽しむという文化で、私は本当に居心地のよさを感じております。次男にもCTのCDも聞かせておりますので近頃は耳がこえてきました。しめしめ。
Commented by レイネ at 2012-01-23 21:03 x
Mevさま、ショルのバッハが聴けるのはアムステルダム(近郊)に住んでる人の特権です!うらやまし~。(わたしは、3月にアントワープまでショル兄も出演する『ヨハネ』聴きに行きます!)

4年位前にリエージュの歌劇場に子連れで行ったのですが、子供達には生のCTの声はかなり衝撃的だったようです。
子供の耳を肥やすってのはいいですね!目も耳も頭も体全体も、今が鍛錬の時期ですからね。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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