エヴァ=マリア・ウェストブルック特集と今後の予定

先週の土曜日のNRC紙土曜付録マガジンDeLUXEには、オランダが誇るソプラノ歌手
エヴァ=マリア・ウェストブルックがゲスト・エディターに起用され、彼女の特集のみならず、
彼女の視点で書かれた記事が多くて、なかなか読み応えのある面白い内容になっていた。
タブロイド版でオールカラー写真だから、ぺらぺらと頼りない紙質だが永久保存したい。

まず、表紙がクチュールの(紙で出来た)白いプリーツのドレス姿のウェストブルックで、
メイクもカメラ・アングルも凝った、とてもモードっぽい写真なので、一見、彼女とは気が
つかなかったほどだ。

最初の記事は、恒例の「仕事場」というコラムのページで、ロンドンのロイヤル・オペラ・
ハウスコヴェント・ガーデンのステージから客席を見る位置の写真が全面に。
ウェストブルックが一番好きな仕事場がここであるので、ROHに関する彼女のコメントが
載っている。
曰く「プッチーニの『西部の娘』のコヴェント・ガーデンでの古い録画をよく観たものです。
ミニー役でその舞台に実際に立った時には万感が胸に迫りました。スカラ座やMETを夢見る
歌手は多いのですが、わたしにとってコヴェント・ガーデンが頂点なんです。」

そして、売り物記事はウェストブルックのインタビューだ。
いつも口元に笑みを絶やさないキュートなウェストブルックだが、今年4月のMETデビュー
初日での不調による降板の真相や、売れない下積時代の苦労を語ったり、不屈でポジティブ
思考の彼女の横顔が垣間見られて興味深い。

METでの『ワルキューレ』初日に、最初から声が出ないという大変な不調に見舞われた。
理由はどうやら、薬の副作用で声帯付近に水腫様膨潤が起こり、声が出なくなったらしい。
飲んだ薬というのは、子宮筋腫の影響で月経の出血量が非常に多いのを抑えるためのもので、
血管を狭めるのだが副作用として上記の症状が出る。以前にも同様に声が出なくなったときが
あるが、過労による声帯の疲れか友人の死というショック性のストレスによるものだと思って
いた。
今回は、同じ生理日に起きたので理由がはっきりしたらしい。その数ヶ月後にライデンの大学
病院で筋腫摘出手術を受けた。経過は良好で、体調にも声にも影響は出ていないと言う。


       2011年8月20日 アムステルダムの運河コンサートの〆で
       恒例の『アムステルダムの運河で』を歌うウェストブルック

また、尊敬する歌手として、レナータ・テバルデイ、ジュゼッペ・ディ・ステファーノ、
レジーヌ・クレスパン、アダミ・コラデッティ、レオニー・リザネクの5人を挙げ、詳しい
コメントを述べている。

旅行ページは、彼女の好きなサン・フランシスコ特集。
ファッション・ページでは、彼女自身がモデルとなって、モードっぽいメイクとドレス姿を
披露。普段と違うメイクで、なかなか憂いのある表情である。
敬愛するTVコック、アントーニオ・カルルッチオが、ウェストルブルックのために寄せた、
とても美味しそうなクリスマス・メニューのレシピもいい。

最後に今後の予定が載っている。
夫君のテノール歌手、フランク・ファン・アーケンがフランクフルトで来年1月から『オテロ』
主役を張ることや、2013年にはドレスデンで夫婦揃って『トリスタンとイゾルデ』を歌うこと
など。来年の予定として、「ウィーン、ニュー・ヨーク、ベルリン、サンティアゴ(チリ)、
ドレスデン、パリ、ロンドン、モンテ・カルロ」とあったので、どんな役なのか気になり、
彼女のオフィシャル・サイトを覗いてみた。
そうすると、予定が2013年末までしっかり詰まっている。目出度いことである。しかし、
あまりに売れっ子で世界の歌劇場でお呼びがかかるのはいいが、地元オランダで歌うことが
あまりなく、彼女の生の声を聴いたのは一度だけだ。アムスやブリュッセルで聴きに行こうと
思っていたオペラは大体どれも売り切れになってしまったのだ。

オフィシャル・サイトによると、2012年の予定は、
1月、ウィーン国立歌劇場で『仮面舞踏会』のアメリア、
4月、METで『ワルキューレ』のジークリンデ
5月、ベルリンでラトル指揮ベルリン・フィルと『ワルキューレ』コンサート形式、ジークリンデ
8月、サンティアゴ市立劇場で『タンホイザー』のエリザベート
9,10月、ドレスデンのザクセン州立歌劇場で『トスカ』タイトル・ロール
とある。
あれれ、6,7月のROHでの『トロイの人々』ディド役はどうなったのだろう?と大きな疑問が。。
遠くまで追っかけはできないが、ロンドンなら比較的近場だし、共演はカウフマンだし、カッ
サンドラ役にアントナッチで、ウェストブルックがディド役というのに大変興味を覚えていた
のだ。
どうして、本人のオフィシャル・サイトにその予定が載っていないのか、非常に気になる。
ROHのサイトでは、ウェストブルック出演ということになっているし、NRC紙には、2012
年には上記以外にパリ、ロンドン、モンテ・カルロの予定が記されているのに。

ついでに2013年の予定は、
1月、ブリュッセルのモネ劇場で『マノン・レスコー』タイトル・ロール!
3月、METで『リミニのフランチェスカ』タイトル・ロール
5月、フランクフルト歌劇場で『西部の娘』のミニー
6月、ミュンヘンのバイエルン州立歌劇場祝祭で『タンホイザー』のエリザベート
9月、ベルリンDOBで『ワルキューレ』のジークリンデ
11月、ドレスデンのザクセン州立歌劇場で『トリスタンとイゾルデ』タイトル・ロール(夫婦で)

再来年の1月にはブリュッセルだから、これは逃さずに行かないと!
そして、2015年にはバイロイトでイゾルデを歌うことも決まっている。
色々と気になる今後の彼女である。


       同じく運河コンサートでピーター・ウィスペルウェイ(チェロ)と
       ロナルド・ブラウティハム(ピアノ)の伴奏で、バーンシュタインの
       『ピーター・パン』よりDream with meを歌うウェストブルック
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by didoregina | 2011-12-01 15:12 | オペラ実演 | Comments(6)
Commented by hbrmrs at 2011-12-02 14:31 x
こんにちは。私もウェストブルックさんをとても注目し、活躍を期待しています。スケールが大きくてなおかつ繊細。大柄で、美人なので舞台映えもバッチグー。イタリア物とドイツ物の両方をこなせるのが武器ですよね。

彼女、本当に成長しましたよね。今や世界の一流歌劇場で引っ張りだこ。

12月31日、バーデン・バーデンのジルベスターガラコンサートで彼女を聞く予定です。共演はカウフマン。元々ガランチャ&カウフマンの黄金コンビのコンサートということで発表され、チケットを買ったのですが、ガランチャ降板となり、どうなることかと思ったら、すかさずウェストブルックを代替で用意するなんて、さすがバーデン・バーデン。

15年からのバイロイトのイゾルデが彼女だというニュースは驚きました。指揮はティーレマンです!ううっ行きたい~。演出はカタリーナ・ワーグナーでヤバそうですが。
モネのマノンもそそりますねー。絶対にチケットゲットしてくださいね。
Commented by レイネ at 2011-12-02 16:50 x
hbrmrsさま、毎度、ウェストブルックをおひきたていただきありがとうございます。彼女は特にワーグナー歌手を目指してはいないようですから、幅広いレパートリーを売り物にして末長く活躍してもらいたいものです。

しかし、バーデン・バーデンでジルベルターとは、なんとゴージャスな!お金持ちが沢山集まりそうでさぞかし華やかでしょうから、例のブラック・タイで決めてくださいね。カウフマンとウェストブルックは、今後も色々共演の機会がありそうですね。

15年のイゾルデ役@バイロイトのニュースは、NRCではなくVrij Nederland誌のデジタル版インタビューで知りましたが、もう周知の事実として話してる感じでした。今から申し込んでトライしてみてください。
モネの『マノン・レスコー』には、絶対に行きます。
Commented by alice at 2011-12-07 23:15 x
数年前、初めてウエストブルックを聴いたときは驚愕ものでした。当時は名前も知らなかったのですが、それからの活躍は素晴らしいですね。今春のMETの初日が2度目でした。2幕目からは代役になって、かなりがっかりしましたが、そういう事情があったにしては、1幕目の出来は良かったので・・・好調だったらと思うと残念です。1月の仮面舞踏会、キーリンサイド目当てなのですが、アメリアが彼女と知って、思わずラッキー!とチケットを取ってしまいました。
Commented by レイネ at 2011-12-08 08:51 x
aliceさま、メトの初日では、第一声から声が出なかったので即代役を立てるように頼んだそうで、これでもう首になる、と思ったそうです。首にならずに、その後ライブ・ビューイングまでには調子を取り戻してよくなったようです。

ええっ、1月にまたウィーンに行かれるんですか!す、凄い。キーンリーサイドとウェストブルックの共演というのもなかなか面白そうですね。また、それ以外のご予定の公開も楽しみにしてます。
Commented by Vermeer at 2012-07-09 12:00 x
行って来ました、コヴェントガーデンの『トロイの人々』。
期待通りの、時に力強く、時に聴き手を包むかのような優しさの美声。本人のアイドル、レジーヌ・クレスパンを思い起こさせました。
楽屋口でも気さくに応じてくれました。「カッサンドラを歌ったことは?」「オランダであります。でも個人的にはディドの方が好きかしら。より悲劇的で…。」「私は死ぬ、のモノローグは感動的でした。」「大好きな場面なの。」「日本から来ました。この歌劇を生で観るのが一つの夢だったんです。あなたのディドで経験で出来て本当に感動しています。」「嬉しいな。ありがとう。」とちょっと立ち話も出来ました。
Commented by レイネ at 2012-07-09 15:32 x
Vermeerさま、おお、実演鑑賞と出待ちでおしゃべりできたんですね!(わたしは、以前、アムステル川上コンサート後にチャンスがあったのに、家族が一緒にいたのでなんとなくしそびれて。。。)

レジーヌ・クレスパンのことも、カッサンドラとディドのことも、モノローグのことも、ROHのインタビューとちょっとかぶる内容ですよ!

わたしも昨日、オンライン・ストリーミングで『トロイア人』@ROH見たんですが、細かい表情はわかっても、音楽や声の印象はやっぱり生じゃないと。。。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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