リニューアルしたアムステルダムの海事博物館

家族全員、海洋とか海事とか船舶には目がない。各地にある海事博物館や歴史的船舶の
レプリカなどを訪問・見学するのを楽しみとしている。
アムステルダムの海事博物館Het Scheepvaartmuseumは、2007年から改修工事を行って
いたのが、ようやく2011年10月に完成。リニューアル・オープンした。というより、ほぼ全く新しい
博物館になったというほうが正しいだろう。

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      外観は兵器倉庫そのまま。1655年にDaniel Stalpaertが設計。
      古典様式の威容とエレガンスが同居し、水辺に映える。

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      外からは全く見えないが、四辺を取り囲まれた中庭が
      新たな付加価値。34x34メートルの天井にはガラスと
      鉄鋼のクーポラが取り付けられた。
      石を敷いた床には特殊防音が施され、レンガとガラスで閉鎖
      された空間なのに音がこもらない。残響は3,3秒。

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      ガラスと鉄鋼で出来た天井は、ブリュッセルのNey + Partnersによる
      技術設計・施工。1000個以上の三角、四角、五角、六角形の各々異なる
      ガラス(60トン)と全長2200メートルの鉄鋼(150トン)から構成され、
      86箇所の交点にはLEDが内臓され、下から見上げると天空のイメージ。
      ガラスには遮光・断熱・強化加工が施されている。


博物館全体の再開発設計は、Liesbeth van der Pol女史率いる Dok Architectenが
2005年に請け負うことになった。ファン・デル・ポル女史は、2008年から2011年までオランダの
建築家の最高峰ともいえる地位のRijksbouwmeester(Government's architect)という
役職についている。

そして、天井のイメージとデザインの元になったのは、海図のコンパスローズ(羅針図)だという。

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      上の写真と比べると一目瞭然。いかにも海事博物館にふさわしい。


ファン・デル・ポル女史の描いた博物館のイメージ画を見て、実物の博物館と比べると、ほぼ実際に
イメージが具現化されているので、びっくりする。

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       過去の栄光が博物館という小宇宙の中を飛遊する。
       時空の概念と実在の建物および展示物が、絶妙に
       空間に配置され、軽やかに浮遊している。


例えば、16世紀、17世紀、18世紀のキャビン・コンパスの展示室では、暗い空間に星空のような
照明で、王冠の形をした羅針盤が宙から吊るされ、下から羅針盤が覗けるようになっている。
ロマン溢れる展示方法だ。

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       王冠型の羅針盤が四方からと下からもよく見える。

博物館の白眉は、様々な地球儀と天体義のコレクションで、一つ一つの全体像が見えるように展示
されている。(一部、見えにくいものもあるが)
その展示室にいると、まるで、自分が大航海時代の世界発見の旅の渦中にいるような気分になる。

そして、各種船舶の模型の展示も素晴らしい。
船の模型は、大概どこの海事博物館にも沢山あるのだが、様々な時代の様々な型の船が
ごちゃごちゃと並べてあるのが普通で、印象が散漫になるような展示方法なので感心したことがない。
しかし、ここでは、ガラスの大きなケースの中に入った様々な船の位置に、上下左右に移動できる
モニターの照準を合わせると、インターアクティブで説明が現れるのだ。楽しく長居が出来る。

それから、素晴らしい海戦図などの海洋画のコレクションも堪能できた。
東インド会社、西インド会社などの商人の家族の生活を、フェルメール風の凝ったカメラワークの
実物大の動画で説明するのもわかりやすくてよかった。

しかし、結局、海事博物館というのは、海運国家および世界帝国としてその昔君臨した国の
過去の栄光を誇示するものなので、その国の黄金時代の歴史に興味のない人には、全く面白みが
感じられないどころか、帝国主義的発想とその成果を集めた展示物に呆れてしまうかもしれない。

古い建物の構造をなるべく生かした内部は、階段が異常に狭いため上下昇降の人がすれ違うのが
ほぼ不可能なのが難である。
トイレの数が沢山あり、最新デザインの機器も内装も美しいのは、非常によろしい。
美術館や博物館では入るのがお約束のカフェ・レストランだが、ここはオープンして間もないため
異常な込みようだったので入るのは諦めたが、中庭で軽食が買える。

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        アムステルダムの町の中心まで歩いて、ダム広場の王宮裏手に
        あるショッピング・モールMagna Plaza(当時のRijksbouwmeester
        C.H. Peters設計で1895~1899年に建造の擬古ゴシック・ルネッサンス)
        の中に入っているカフェOvidiusでくつろいだ。ここは、なぜかウィーン的な
        味わいのある落ちつけるカフェで、カプチーノが美味しかった。
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by didoregina | 2011-11-15 11:37 | セイリング | Comments(2)
Commented by Mev at 2011-11-16 22:07 x
おお、もういらっしゃったのですね。新装オープンの海事博物館。 工事前に何度も行きましたが、たしかに古かった。でも、展示物そのものは変わっていないとすると相変わらずオランダ黄金時代の匂いがするんだろうなあ(好きですよ、私。国立博物館も好きだし)。あの博物館で古地図のレプリカ買ったのを思い出します。子どもも大きくなって色々なことがわかるようになってきたからまた連れていこうと思っています。そろそろ仔犬は留守番できるようになってきたことだし。
Commented by レイネ at 2011-11-17 00:44 x
Mevさま、オランダ人にはウケる内容の博物館です。リニューアル前には入ったことがなかったので、再オープンを今か今かと待ってました。予定より工事期間が伸びたのは毎度のことですが。
でも、ショップの品揃えがイマイチで、何も買いたいものが見つかりませんでした。古地図のレプリカなんてなかったような。。。。
アムステルダム号も博物館前のドックに定位置を得て、しっくりきてます。歴史好きの中学生以上には興味深い博物館だと思いますよ。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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