レオポルド美術館はシーレを集めて満腹感あり

ウィーン2日目、朝食後すぐに、レオポルド美術館に行った。
ベートーヴェン・ホテルから徒歩5分くらいである。
オーストリアン航空のボーディング・パスを見せると、今年いっぱい、ほとんどウィーン中の美術館・
博物館の入場料金が半額に割引になる。数をこなせばかなりの節約になり、浮いた分、ケーキや
コーヒーに回せる。

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        ホテルの中二階ラウンジと、奥は朝食ルーム。

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        ラウンジの反対側の窓はアン・デア・ウィーン劇場の衣裳部屋に面してる。
        『セルセ』登場人物の、まぎれもない白い衣装がかかっている。


レオポルド美術館は、エゴン・シーレ美術館といってもよいほどシーレの作品をよく集めてあり、
彼の作品にインスピレーションを得た現代美術の展示も行われていた。

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        ちょっと変わった作風の静物画は、日本画か襖絵のよう。
        日本画の影響を受けたジャポニズム。


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        シーレの描く人物は、たいがいガリガリに痩せて骨ばった
        ダンサーのようなストイックな体型だ。しかも独特のポーズ。
        角ばったようなポーズは、インドネシアのワヤン人形からの
        影響があるらしく、それを対比させた展示がわかりやすい。


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        この展示室には、ベルギーの象徴派ジョルジュ・ミンヌの
        ひざまずく少年像が中央にある。どこから眺めても美しい。
        彫刻の前には赤い円形のライトが照射されている。
        そして後ろにはシーレの抱擁図があって、卓越した展示センス。


開館とほぼ同時に入館し、上階から見学を開始した。すると、生のピアノ演奏が流れてくる。
後期ロマン派のような、新ウィーン楽派のような、そしてドビュッシーのような要素の入り混じった、
なんともいえない懐かしさも感じる曲である。世紀末~20世紀初頭の展示物とマッチしていて、
アンビアンス効果抜群だ。

その日は日曜日だったので、ウィーンの文芸カフェや個人蔵の美術館などでは、日曜コンサートが
開かれる所が多いようだった。(前日訪れたカフェ・シュペールや、午後から行こうとしたリヒテン
シュタイン美術館でも日曜コンサートの告知があった)
ここレオポルド美術館でも、南米のピアニストとアイルランド人ソプラノの無料コンサートが開かれた。
歩き疲れた頃、コンサートが始まったので、3階の展示室兼演奏会場の椅子に腰掛けて音楽に耳を
傾けた。

曲目は、グラナドス、ファリャなどスペインの作曲家の世紀末から20世紀初頭の作品を集めたもの
だった。
天井の低いサロン風の展示室にそぐわない大声を張り上げるソプラノには、辟易させられた。
彼女は、国立歌劇場にも出演したりするそうだが、ここは歌劇場ではないのだから、もっとしみじみと
した翳りのある曲目を選んで、声量を抑えた内省的な歌唱の方が会場にマッチするのに、と思った。

伴奏のピアニストがソロで、グラナドスの『ゴイェスカス』を弾き始める。
ああ、さっきはこれを練習していたのが聴こえてきたのだ、と、懐かしさを憶えたのにようやく納得が
いった。
グラナドスのピアノ曲は好きで、『ゴイェスカス』は大曲だし難しすぎて弾くのは無理だが、
『スペイン舞曲集』はわたしのレパートリーである。
『ゴイェスカス』はゴヤ風という意味で、ゴヤの絵にインスピレーションを得た印象派風の曲集だ。
でも、ゴヤ風というだけに、甘美な暗さに支配された曲調で、ところどころにアラブ的なスペイン民謡
風のメロディーも出てくる。
20世紀初頭のポスターを集めた展示室で聴く、世紀末らしさ一杯のピアノ音楽は、会場と雰囲気が
ばっちり合っていたし、今まで観たシーレの絵を反芻しながら耳を傾けると、脳内に湿った風が吹き
ぬけるような感じがした。
ウィーンだから、ピアノはもちろんベーゼンドルファー。(わたしのピアノも)


         
         アリシア・デ・ラローチャの演奏で、グラナドスの『ゴイェスカス』より
         「嘆き、またはマハと夜啼きウグイス」(1911年作曲)

    
        
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by didoregina | 2011-11-04 20:29 | 美術 | Comments(4)
Commented by hbrmrs at 2011-11-07 09:26 x
こんにちは。ウィーンの休日、いいですねー。
エゴン・シーレは、決して美しい絵ではないのに、なぜか惹きつけられるものがあり、心に残ります。私は彼の生まれ故郷を訪ねて、ウィーン郊外のトゥルンにも足を運んだことがあります。

ところでオーストリア航空のボーディングパスの提示で半額ってホントですか??
年末にミラノから同社のフライトでウィーンに行く予定なので、使えるかも。私も久しぶりに、レオポルド美術館に行ってみようかな。
Commented by レイネ at 2011-11-07 16:41 x
hbrmrsさま、ウィーンは大人の女が楽しめるものがぎゅっと詰まったいい町だ、と再認識しました。
シーレの絵は、一歩間違うとエロ・グロに近いのに、不思議と日本人にも人気がありますね。画家の生まれ故郷を訪ねるなんて、凝り性ですね!

オーストリア航空の欧州路線機内誌の後ろの方に割引リストが載ってます。今年は参加している美術館・博物館が増え、ウィーンではほとんど全て。去年はゼッセシオンではだめだったけど。チケット売り場には特に表示はないので、こちらからボーディング・パスを見せて割引にしてくれ、と言うこと。アルベルティーナでも半額になりました。ウィーンだけではなく、ミラノでも何か割引になるのがあったかと記憶してます。
Commented by sarai at 2011-11-11 06:45 x
レイネさん、おはようございます。saraiです。

レイネさんの4日後に行きました。もう、レオポルド美術館には何回行ったでしょう。最初にシーレの大コレクションを見たときの衝撃は忘れていません。それまでもベルヴェレーレでも見てはいましたが、ここでまとめて見て彼の大ファンになりました。あの茶色っぽい色調が好きなんです。今回の旅では彼の絵の舞台にもなった母親の実家のあるチェスキー・クルムロフにまで出かけてしまいました。そこのエゴン・シーレセンターでは思いのほか、楽しめました。油彩画はコピーしかありませんが、街の地図にマッピングされていました。実際の場所まで行って懐かしんでみました。次はトゥルンですね。

今、レオポルド美術館ではB1Fでシーレの特別展で今まで見たことのない作品もあり、シーレファンは必見ですね。ベルヴェレーレもクリムトの特別展が始まったし、ウィーンは美術の秋でもあります。

では。
Commented by レイネ at 2011-11-11 16:13 x
saraiさま、レオポルド美術館には初めて行きましたが、皆さんがお勧めするのも納得!の内容の濃さに満足です。
チェスキー・クロムロフというと、バロック・オペラ・ファンにとっては垂涎の真正バロック劇場がお城の中に残っていることしか知りませんでした。シーレにも繋がりのある町とは!シーレ・センターって、なんだかデルフトのフェルメール・センターみたいな感じかしら、コピーしかないっていうのが。
いつか、バロック・オペラ観賞のために行ってみたい町です。

色々ご教示くださりありがとうございます。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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