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Midnight in Paris ウッディ・アレンのご当地シリーズ

Midnight in Paris ウッディ・アレンのご当地シリーズ_c0188818_1648625.jpg
2011年 アメリカ・スペイン

監督: Woody Allen

ギル: Owen Wilson,
イネス:Rachel McAdams,
ガートルード・スタイン:Kathy Bates,
サルバドール・ダリ:Adrien Brody
美術館ガイド:Carla Bruni
アドリアーナ:Marion Cotillard







ポスターの、まるで30年前のウッディ・アレンに相当な写真修整を加えたような男性を見て、
ナルシストのアレンらしいなあ、と思った。トレードマークであるシルエットも何もないチノパンツに、
だぼっとしたカットでデザインも何もないシャツ。今時、こんな格好でパリを歩いてる人は、まず
いないだろう。

映画が始まると、パリの名所や街角を映す映像の色が、やはり30年前の絵葉書みたいなトーンで
うれしくなる。ちょっと黄色がかっているが、原色が強調されて安っぽいのがいい。背景までくっきりと
形も色も撮れているので、平面的で奥行きがないのがキャンピーだ。
と、まあ、現代のパリなのに、ほんの少しノスタルジックな味付けなのである。

ギル役のオーウェン・ウィルソンは、服装と髪型だけでなくしゃべり方もアレンそっくり。シナリオ
ライターだが作家志望という役柄の設定も、小声でぶつぶつと話す口調も『マンハッタン』と同じだ。
パリ旅行に同行している妻やその両親や、パリで出会った昔の友人などのアメリカ人は誰も声高に
わめいたりしない。
ニューヨークを舞台にしたアレンの映画に出てくるアメリカ人と同じで、30年一日の如しなのだが、
見ていると懐かしくなぜか安心できる。

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       美術館ガイド役のカルラ・ブルーニと主人公

真夜中になると、クラシックなオールドタイマーが現れて、それに乗ると主人公が一番憧れる時代に
タイムスリップする。
ヘミングウェイやスコット・フィッツジェラルドやゼルダやガートルード・スタインやピカソやモディリアニ
やマチスやダリやルイス・ブニュエルやコール・ポーターがいた頃の20年代のパリである。
様々な俳優がそういう有名人のそっくりさんぶりを披露したり、もしくはあまり似てないが雰囲気で
勝負したりしているのが、この映画のご馳走でミソである。おもわずニヤリの連続だ。
20年代のパリと芸術へのオマージュがバックボーンとなっている、ご当地映画とも言える。

そこで毎晩、芸術家達と話したり、スタインに自作を読んで批評してもらったり、パーティー三昧
を送るうちに、現実の生活が色あせて見えて、性格的に不一致とは言わないが理解のない妻より、
芸術家達のミューズであるアドリアーナの魅力の虜になる、というおとぎばなしめいたストーリーだ。

面白いのは、アドリアーナも自分が生きている時代には魅力を感じなくて、彼女の理想の時代は、
世紀末のベル・エポックだ、という点だ。
芸術家達も然りで、究極の時代はルネッサンスだ、と言う。

現実というものは、いつの時代でも味気ない。過去は理想化して見える。そう、気が付いたギルは
直視するのを避けていた現代に戻るが、一人パリに残って新しい生活を始めることにする。
だから、結局最後まで、おとぎばなしのままなのだった。一時は向こう側の夢の世界に行ってしまった
ギルだが、夢から醒めても理想を追求することを止めない、というハッピーエンドだ。

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雨のパリは最高、と意気投合したラスト。
by didoregina | 2011-09-30 10:36 | 映画


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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