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アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam

アムステルダムの写真ギャラリーfoam(Keizersgracht 609)で6月24日から9月1日まで
アントン・コービン(Anton Corbijn オランダ人なのでオランダ語読みだとコルバイン)の
写真展が開催中だ。

アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam_c0188818_22292641.jpg


Inwards and Onwardsと題した展覧会は、ミュージシャン、アーティストなど著名人の
2000年以降の比較的新作のポートレイトを集めたものだ。
26日(日)にコンセルトヘボウでのコンサートを組み合わせて見に行った。かなり盛況だった。

アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam_c0188818_23215581.jpg

        foamはアンネの家ほどの小さな建物


全て白黒の、サイズも同じ正方形(約60センチ四方)の写真が幅8センチほどの黒縁の額に
入れられて、整然と展示されているのだが、その集め方と順番や位置の構成に唸ってしまう。

まず、最初の部屋で目に飛び込んできたのは、ネルソン・マンデーラだ。彼の顔は逆光で
しかも皺だらけだし、焦点が当てられていない。背後からの光と白髪が白っぽくぼやけた
感じなのに、着ているシャツの賑やかなアフリカン・バティックの模様は、コントラストも
はっきりくっきりと、そちらに焦点を合わせているのだ。まずアフリカ、そしてそれがあって
のマンデーラという順位がここでははっきりしている。

同じ部屋に、パティ・スミス。何十年も年を取らないようなおなじみのオーラを放つ彼女の
表情は、手と髪の躍動の瞬間を捉えているのに対して、時を越えて静止している。
背景には何もなく、白い空間に黒髪が踊る。反り返って横向きの顔に髪が邪魔して目は見え
ないが、一目見てすぐにパティ・スミスとわかる、圧倒的な存在感。

そのほぼ正面が、ブルース・スプリングスティーン。額から鼻先まで白い筋の入った黒毛の
馬とその横に立つスプリングスティーンの顔にも光が縦に当たって同じような筋に見える。
じっくり見ないとスプリングスティーンなのか誰なのかわからない。

ニューヨークのセントラル・パークなのか、森の中に、四足のケモノのような人物が小さく
写っている。
イギー・ポップという説明板がないと誰なのか不明だが、それを読めば誰でも納得する写真だ。

マンデーラの反対側の壁には、トム・ウェイツ。これも皺の深い顔にタバコの煙がかかり、
渋さ満点。かっこよさも満点。

(そのほかにもポートレイト写真は沢山壁に掛かっているのだが、印象に残ったものだけを
紹介している。)

次の部屋では、アレクサンダー・マックィーンが印象的だ。

アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam_c0188818_22581242.jpg

        展覧会のポスターにもなっている。
        目の下まで黒いトックリ・セーターの襟を伸ばして、覆面のよう。
        背後には、コレクション用のイメージ資料ピンナップが沢山あり、
        アーティストの仕事場の雰囲気がポートレイトらしい。


彼の左には、女装したミック・ジャガー。
右には、キャット・ウーマンのようなマスクをしたケイト・モス。
この3点の並べ方にストーリーが感じられ、秀逸。

その次の部屋は、現代美術アーティストが多い。

オランダのカレル・アップルの隣にはドアを挟んでアンセルモ・キーファー。
全く異なるタイプのポートレイトだが、どちらも仕事場もしくはアーティストの作品の雰囲
気を漂わせるセッティング。
年齢的に近い現代美術アーティストを同じ壁面に集めたようで、その中でも巨匠の貫禄十分
なのはルシアン・フロイドである。画面で横顔と同じくらいの面積を占めているのは、手に
した3本の絵筆が、多作の作家にふさわしいアクセサリーというかアイコンだ。

その向かいには、やはりイギリス人のデミアン・ハースト。白い顔に目と鼻は真っ黒で、
髑髏のよう。説明版なしでは誰だか絶対にわからないポートレイトの典型だ。

一番びっくりしたのは、ピーター・ドイグとマルレーネ・デュマスが並んでいたことだ。

ナイーブでセンシティブな感じのドイグは、トリニダードのアトリエで製作途中の絵の前に
立っている。等身大の横たわった女性の絵が目を引く。
ドイグはうつむき加減で考え込んでいるような表情だが、絵の具で汚れたジーンズや靴が、
芸術家というよりまるでペンキ職人みたいな印象だ。


アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam_c0188818_23104291.jpg

       迫力とかっこよさでダントツなのは、2000年のマルレーネ・デュマス。
       まるで女優。
       まだ(比較的)若かったデュマスはこの写真をあまりお気に
       召さなかったそうだが、年とともに好きになっていったそうだ。


8月一杯までやっているので、アムステルダムにこの夏行かれる方は、必見の展覧会だ。
入場料金は8ユーロだが、ミュージアム・カード所有者はタダ。お持ちの方はぜひとも。

アントン・コービン(コルバイン)の写真展@foam_c0188818_23192797.jpg

       美術館ではカフェに寄るのがお約束。ティーバッグだがお茶は美味。
       Mr.Jonesのオーガニック・ティー、種類様々。
by didoregina | 2011-06-27 16:24 | 美術


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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