ホランド・フェスティヴァルの現代音楽@コンセルトヘボウ

6月は、ホランド・フェスティヴァルの月である。アムステルダムで各種の音楽・演劇・オペラ公演が
繰りひろげられる。
今年はあまり面白そうなプログラムがなくて、行ってみたいな、と思ったのは、イアン・ボストリッジと
アンゲリカ・キルヒシュラーガーが歌うブリテン『ルクレツィアの陵辱』、DNOのチャイコフスキー
『オネーギン』と、現代作曲家リームのオペラ『ディオニッソス』だけだ。
しかし、マチネの日の都合がつかず、どれにも行けない。。。

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          マーストリヒト市内を流れるマース川を屑鉄運搬船が
          遡って行く。遠景はケネディ橋とリンブルフ州庁舎。


コンセルトヘボウの土曜マチネを企画する放送局NPS(ラジオ4)の招待券が当たった。
(今シーズン、これで一体何回目?)現代音楽2曲のオランダ初演である。応募者が少なかった
のだろう。

こういう当選のお知らせは、コンサートの前々日くらいに突然来る。今回は、4連休中の土曜日な
ので、同行してくれる人を見つけるのが難しい、とわかっていたので、応募する祭、「チケット1枚
だけお願いします」と書いた。通常、招待券はペア券2枚である。姑息にも、そうやって当選の
確率を上げようとした。それが功を奏したのか、めでたく当選。しかし、通知メールには「招待券
2枚を、コンサート開始1時間前からホールにお取り置き」とある。「1枚だけ希望したのに、2枚
当選とは、本当ですか?(デフォルトで2枚という通知?)もし、2枚当たったのなら、誰か連れて
行きます。そうじゃなくて、私の分はやっぱり1枚しか用意してないのなら、連れをがっかりさせること
になるので、ご確認願います」とメールしたら、即「2枚用意してありますから、お楽しみください」と
返事が来た。
コンヘボから遠くない場所にお住まいのブログ仲間Mevさんをお誘いした。

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週末の難関は、オランダ鉄道(NS)のダイヤである。前回は片道4時間もかかって大変だった。
今回もそうなるのなら、チケットは2枚とも地元にお住まいの方に差し上げようと思った。
予定された保線の状況はNSのサイトで数日前から確認できる。土曜日は通常運行のようである。
それで、安心してアムステルダムに行くことにした。

8時56分発の直通ICでアムステルダムには11時26分に到着した。
朝、切符を自動販売機で買おうとしたら、見知らぬ女性が「切符を買うんですか?こういうものが
余ってるんですが。クライドファット(ドラッグ・ストア)の1日乗り放題券で、12ユーロ50セント」と
申し出てくれたので、ありがたく売ってもらう。

通常、マーストリヒト~アムステルダムの往復は45ユーロだが、割引カードを持っているので、
平日午前9時以降と週末はいつでも40%引きで27ユーロになる。
それが、期間限定の1日乗り放題券(クライドファットやブロッカー、AHなどで売り出されるが、
皆、即買い込むのですぐに売り切れ、ということが多い)だと12ユーロ50セントという、信じられ
ないような料金体系になっていて、正直者が馬鹿を見る、を絵に描いたような仕組みだ。
NSでも期間限定割引チケットはしょっちゅう売り出していて、7月からのサマー・トゥアー切符だと
2人で1等車に1日乗り放題で45ユーロだ。クライドファットの切符は週末のみ有効で、その期限が
終わりそうなので、使い切れない切符を売ってくれたのだ。

その日は、快晴、予想気温30度以上だったので、始発駅から電車は一杯。海岸に行くためゴザや
パラソルを持ち込んでる人もいた。大部分の人が、クライドファットの切符を利用しているようだった。

コンセルトヘボウのコンサート・チケットを持っていると、アムステルダム市内の交通機関(トラム、
地下鉄、バス)に往復タダで乗れる。コンサート開演時間の3時間前から4時間後まで有効だ。
今日は、チケットはタダだし、交通費も安くついた。

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           フォンデル公園中央に立つフォンデルの像。


Mevさんとは、コンヘボの前の通りをまっすぐフォンデル公園方向に行った先にあるパン屋兼
カフェで待ち合わせた。アムステルダム遠征では毎回サンドイッチのみを食すので、サンドイッチ・
エキスパートを自認するわたしだが、アムステルダムで一番美味しいと思うサンドイッチ屋である。
Vlaamsch Broodhuysという、ベルギー風のじっくり噛み応えと味わいのある
パンにこだわりの中身で勝負の店だ。このあたりに来ると観光客はほぼ皆無で、ゆったりのんびり
できる。
お腹が空いていたので、写真を撮るのも忘れて貪り食ってしまった。

14:15の開演までは時間がある。フォンデル公園を歩いてみた。

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         公園の池の周りは憩いの場。
         ピーター・ドイグの絵を思わせるグリーンの水辺。


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            Canoe-Lake (1997) by Peter Doig
            サーチ・ギャラリー蔵

2011年5月11日@コンセルトヘボウ
Radio Filharmonisch Orkest
Groot Omroepkoor
Jaap van Zweden (指揮)
Frank Hameleers (合唱指揮)

Arvo Pärt    曲名不明
Wim Henderickx  TEJAS (What does the sound of the universe look like?)
Wolfgang Rihm  Quid est Deus?

ペルトの曲は短くて、序曲代わりという感じだった。
メインは、ベルギー人ヘンドリックスおよびドイツ人リーム作曲の、共にオランダ初演の曲だ。
テーマは宇宙と神である。
開演前に、作曲家二人のラジオ公開インタビューがあった。あまり熱心に耳を傾けていなかったが、
言っていることが抽象的でよくわからなかった。(テーマは宇宙と神)

ヘンドリックスの曲は、いきなりチューバの爆音でどんとかます。オケの爆音を引き出すのには
優れた指揮者ファン・ズウェーデンにぴったりの曲だと思った。
全体的な印象は、組曲の細切れみたいで縦にブチブチと区切られて、個々の短い楽章の統一感も
緩やかなグラデーション感もない。作曲家自身がまとまりのつかないものを、スケッチ風に綴じて
みた、という感じだった。
オーケストラの編成がやたらと大きいのと、打楽器が多種多様なのが特徴だ。作曲を始める前は
打楽器を演奏していたというヘンドリックスの履歴が頷ける。
銅鑼系統の打楽器奏者が4人活躍、ピアノとオルガン(両方かけもちで忙しいし、小さなはじいて
鳴らすような一種の打楽器も担当)、そして弦楽器も打楽器的な奏法を主にするのだった。
宇宙の音をテーマにした曲なので、ちょっとガムランみたいな東洋的で神秘的な響きを強調。
星の様々な形態(超新星とか中性子星とか)を音楽で表そうとしているらしい。
Mevさんは、『未知との遭遇』を思い出したそうだ。

コンヘボも、コンサート幕間の飲み物はチケット代込みである。各種飲み物が盆に載せて用意して
あるのでフォアイエが混み合わず、並ばなくてもすぐにドリンクにありつけるのがうれしいが、ワインは
いかにも安物の味なのだった。だから、口直しにジュースを飲んだ。

リームの曲は、合唱つきで、オケの編成はぐっと小さい。低音弦楽器に比べてヴァイオリンの数が
非常に少ない。
プログラム・ブックには歌詞が書いてあるようで、読みながら聴くとよかったかもしれない。
こちらは神とは何かというそのものずばりをテーマにしていて、曲はペルト風というか、リームの神とは
キリスト教の神なんだろうな、と思わせる、伝統にのっとった音楽である。
ヘンドリックスのような映画音楽風ではなく、まじめに深遠に神について考えた結果という感じが溢れる。
だが、全体としてどんな音楽かと問われても言葉に窮する。

オランダ初演なので、各曲とも演奏が終わると作曲家が舞台に登場してさかんに拍手をもらっていた。
結構熱狂的に受け入れられていたように思う。現代音楽のコンサートなのに客席はよく埋まっていた。
招待客が多かったのかもしれないが、それにしてもアムステルダムらしいな、と思う。
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by didoregina | 2011-06-09 08:30 | 20世紀の音楽 | Comments(0)


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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