ウィビ・スルヤディのピアノ・リサイタル

内田光子のリサイタルと同じ週に、まことに対照的なピアニストのリサイタルに行った。
インドネシア系オランダ人のウィビ・スルヤディは、オランダ国内では知名度抜群だ。
お城に住みスーパーカー・マニアという派手な生活でセレブとしてTVでの露出度が高い。
自前でチケットを買ってコンサートに行きたいと思うタイプの演奏家ではない。
スポンサーとして招待されたので、次男と一緒に出かけた。

Wibi Soerjadi @ Stadsschouwburg Sittard 2011年 5月15日

Franz Liszt
'Benediction de Dieu dans la Solitude' uit 'Harmonies poetiques et religieuses'

Johann Sebastian Bach (Busoni)
Toccata en Fuga in d, BWV 565

Wibi Soerjadi
Thema 'Passage'
Var. I ~ IV

Pauze

Frederic Chopin
Etude opus 10 nr. 1 in C
Etude opus 25 nr. 1 in As
Edude opus 10 nr. 4 in cis

Wibi Soerjadi
'Voor Mama'

Apuleius' Amor & Psyche ' Amore e Psiche'
I ~ IX

プログラムを見て、「やっぱり」と思った。大仰で華やかな素人ウケのする曲を好んで演奏する
というこの人のイメージにぴったりだからだ。
すなわち、「愛の夢」とか「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」とか「華麗なる
大ワルツ」とかの、きらきらとアルペジオが煌き、甘さとハッタリのある曲ばっかり弾いている人と
いう印象だ。渋さとか内省などとは無縁のタイプである。

実際の演奏も、思ったとおりだった。大げさな曲を大げさな身振りで弾く。童顔で人好きのする
ルックスなので、一生懸命弾いている姿が人々のシンパシーを誘うという得な人だ。

そして、ピアノの横には小さなテーブルが置かれ、水差しとグラス、そしてマイクが。。。
演奏前に各曲の説明をするのであった。

だいたい、バッハの『ニ短調トッカータとフーガ』をピアノで弾く、というのからしてキワモノ以外の
何者でもない。本人も、他のピアニストがこの曲を弾くのををナマで聴いたことがないと断言した。
アレンジしたブゾーニには悪いが、これの曲はピアノで聴きたくないものである。(ブゾーニは実は
私の好きな作曲家なのだ)

有名作曲家の作品以外は、自作の曲を沢山演奏した。
『パッセージ』という曲は、ドレサージ乗馬でオリンピックの金メダリスト(シドニーとアテネ)、
アンキー・ファン・グルンスフェンのために作ったもので、馬の優雅な足並みを表現している。
『ママのために』や『アモーレとプシケー』など全ての曲が短い楽章を繋ぎ合わせものから成り、
いずれもどこかバッハやリストやショパン風の香りがするのだった。

アンコールの『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマ曲のピアノ・アレンジが一番印象に残った。
というのは、左手だけでこの曲を弾ききって超絶技巧振りを披露してくれたからだ。
これは一見・一聴の価値あり。↓



      まさに彼の芸が凝縮されている名演奏
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by didoregina | 2011-05-28 20:39 | コンサート | Comments(4)
Commented by REIKO at 2011-05-30 21:53 x
>渋さとか内省などとは無縁のタイプ
これはこれで、徹底してれば良いですよ。(笑)
一番ダメなのは、どっちつかずの人ですね。
それにしても、この動画はすごいですね~!
海賊帽子と鍵手(懐かしい!)にはビックリしましたが、演奏もすごい!
どんなに鍵盤が離れていても、手が「瞬間移動」してますね・・・カメラの方がついていけない感じです。
ちなみに「打ち込み」でピアノ曲作る時は、音が跳ぶところは少しテンポを落とすんです・・・そうしないと不自然に聴こえるためなんですが、この人の演奏はその必要ないですね。(驚)
Commented by レイネ at 2011-05-31 00:47 x
REIKOさま、自分の個性を知ってて存分に発揮できる演奏家なら、わたしの好みと合わなくても、存在価値はありますからね。
さすがにステージではスーツ姿でしたが、白のスーツってのもキワモノっぽさが漂ってました。
『パイレーツ』の左手だけの演奏は、短いから可能で、2分以上やると精神が分裂するから止めた方がいい、と本人が言ってました。家で真似するのはよしましょうね。
そうですか、「打ち込み」というのは、いろんなワザを使うものなんですね。どんな超絶技巧曲でも打ち込んだら演奏可能なんですか?打ち込みというのがどういうものなのか、わからないのです。。。
Commented by REIKO at 2011-06-01 21:25 x
>どんな超絶技巧曲でも打ち込んだら演奏可能なんですか

そうです~♪
その手の曲(笑)ばっかりジャンジャン打ち込んでる人もいますよ。
人間だとモタモタする箇所や、ミスタッチが出やすい部分も完璧に鳴らせます。
でも実際は、「音が跳ぶ所で間があく」⇒「音楽的なノリ&かっこ良さ」なことも多いのです。
例えばショパンのワルツ、左手・・・1拍目と2拍の間が「自然に」あくのが、ワルツの優雅なノリになります。

>打ち込みというのがどういうものなのか

「シーケンサー」って聞いたことありますよね?
昔は「機械」みたいのものでしたが、今はPCのソフトウェアになっています。
これで音(音色・高さ・長さ・強さなどを指定しながら)を順に記録していき、このデータを音源に送ると、音源がその指示通りに鳴ります。
昔、テクノポップが流行った頃、シーケンサーでシンセサイザーを自動演奏して、いわゆる「ピコピコ・サウンド」を出していました。
今はもっと高度なことが個人&趣味の範囲でもでき、オーケストラも鳴らせます。
◎「セメレ」のイノ役(訳?)、登場をお待ちしています。
Commented by レイネ at 2011-06-01 23:33 x
REIKOさま、シーケンサーに関してのご教示ありがとうございました。でも、実際にそのソフトを使ってみないとわからないでしょうね、本当にどうやって打ち込むのかは。

『セメレ』の対訳の件、すっかり忘れてました。皆さん、もうそろそろ訳し終わってるころですよね。すぐに参加させていただきます。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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