モンテヴェルディ『聖母マリアの晩課』@聖母マリア教会

オランダ・バッハ協会のコンサート。2010年12月15日。

c0188818_22423966.jpgDe Nederlandse Bachvereniging
koor en orkest

Jos van Veldhoven dirigent
Hana Blazikova sopraan
Johannette Zomer sopraan
Charles Daniels tenor
Daniel Auchincloss tenor
Julian Podger tenor
Harry van der Kamp bas

Claudio Monteverdi (1567-1643)
- Vespro della beata Vergine (1610)




モンテヴェルディの『聖母マリアの晩課』(略して『マリア・ヴェスペルス』)が作曲・出版されたのは
丁度400年前の1610年なので、記念イヤーということで、各地でコンサートがある。
オランダ・バッハ協会は、ここマーストリヒトの聖母マリア教会でのコンサートを初日とするツアーを
行っているのだが、オフィシャル・サイトのつぶやきによると、この教会はヴェネツィアのサン・マルコ
聖堂の北方版みたいなものだから、いかにもマリア・ヴェスペルス演奏にふさわしい、とのこと。

記念ツアー初日だし、人気のある曲だから、チケットはソールド・アウト。乗り遅れたわたしだが、
チケット・オフィスに行ったら、リターンしに来てる人がいて手に入れることが出来た。
また、この教会でのメジャー系古楽コンサートでは、絶対に忘れてはいけないことがあるのに、
うっかりしていた。それは、全席自由席、早い者勝ちの原則である。
当日、8時開演かと思ってチケットを見たら8時半となっているので、まだいいや、と思ったのが
間違い。日中最高気温もマイナス2度くらい、積もった雪が凍って、教会コンサートには最悪なのに
人の出はよかった。
8時10分くらいに教会に入場してみると、もうほぼ満席。後ろから3列目の補助席みたいなのが、
ひとつ空いているのを発見。柱のかげでないだけでもありがたいと思わなければいけない。

c0188818_22544727.jpg

         祭壇上部と天井のモザイク画。
         この下の祭壇手前がステージ代わり。

そして、もう一つ気がかりなのは、この教会の音響だ。
リサイタルならいいのだが、オケと合唱団の入る編成のコンサートには、いかにも不向きなのである。
唱句の朗唱、応唱、ファンファーレと続いても、音が拡散してからばらばらに反響するから、もう
なにがなにやらわからない。あの、かっこいいはずのファンファーレですら、しまりがなく聞こえる。

モンテヴェルディのマリア・ヴェルペルスということ以外にも、ヨハネット・ゾマーがソリストとして参加
している、というのがわたしにとって重要ポイントであった。
しかし、ようやく人の頭の間からお顔が覗けるからまだましだったものの、音響がひどいので
全体にぼわーんとして、メリハリがないから、音楽が非常につまらない。演奏がどうのこうのという
問題ではまるでないのだ。演奏者がよく見えて、音が直接耳に届く前の方の席を確保すべきだった。

c0188818_2317463.jpg

          小型のチェンバロとオルガン

また、覚悟と準備はしていたものの、いつも予想を上回るのが寒さである。
聖母マリア教会でのコンサートには、季節を問わず、山歩きもしくは野外スポーツ観戦と同じような服装
と非常用毛布を持って来るべきなのだ。
ここは現役の教会なので、暖房装置が入っていない。オランダで2番目に古い教会で観光の目玉
でもあるから、いたしかたない。ロマネスクのマール石造りの美しい教会は、外気と風は遮断してくれ
るが、足元からしんしんと冷気が立ち上る。吐く息は白くなかったから、0度以上はあったと思うが、
ダウン・ジャケットに毛布のような大判ショールに手袋、帽子、ブーツで武装しても、じっと座っていると
寒さが身にしみる。
演奏するほうも大変だろう。皆さん厚着の様子だったが、これで喉を壊しはしないかと、心配になった。

手持ちのCDは大昔に買ったガーディナー指揮モンテヴェルディ合唱団&オケのもので、どうしても
比べてしまう。
CDには少年合唱団も参加しているが、今回のコンサートは大人の合唱のみ。サンタ・マリアの合唱は
美しい女声コーラスだった。ソロのソプラノも美しく、全体的に女声が勝って、ソロのテノールは、
ちょっと精彩を欠いていた。
よく見えなかったが、テオルボ奏者は二人いたようだ。帰り際にフレッド・ヤーコブスとすれ違った。
ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェンバロ、オルガン、ハープは一人づつ。
コルネットとサクバットがかっこよく大活躍する曲だ。最初のファンファーレは教会の音響のせいなのか、
なんだかコケたような感じだったが、だんだんよくなっていったので、後半はうっとりした。


         オランダ・バッハ協会コルネット奏者による
         楽器の説明。


しかし、寒さはいや増しになり、もう、早く終わってくれ、と願うばかりになっていった。
会場皆の願いは同じだったようだ。祈りが通じたかのような最後のアーメンの後、拍手はなかなか
起きなかったが、すぐに立ち上がる人は多かった。スタンディング・オヴェーションというわけでなく、
立ち上がったら歩き出すのだった。
我慢の限度ぎりぎりだった。演奏が悪いわけではない、寒さが耐え難いのだ。
教訓:真冬の教会でのコンサートは避けたほうがいい。CDで聴いたほうがずっといい。

c0188818_23534394.jpg

         教会前の広場のスズカケの木に吊るされた
         大きな鈴のような電飾が幻想的。
         外はマイナス5度だった。中はいったい何度?


オランダ・バッハ協会のCD直売スタンドが出ていた。その中に、豪華ブックレット付きのものがいくつか
あり、目を惹いた。ユトレヒトのカタリナ・コンヴェント美術館との共同企画の特別ヴァージョンだそうだ。
オランダのキリスト教関連に特化した美術館所蔵の彩色写本をブックレットにしたものだ。
特に、『クリスマス・オラトリオ』のが美しくて気に入ったが、40ユーロと高いので、パスした。
家に帰ってから、やっぱり欲しくなった。バッハ協会のサイトでは、売り切れになっている。プレストや
アマゾン、レーベルのチャネル・クラシックのサイトでも見つからない。幻のコレクターズ・アイテムだ。
見つけたときに即、買っておくべきであった。
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by didoregina | 2010-12-17 16:01 | コンサート | Comments(8)
Commented by bonnjour at 2010-12-18 02:05
ヨハネット・ゾマー様(私はCDでしか知りませんが)を教会堂で間近に聴けるとは贅沢な(音響がいまひとつだとしても)。でも良い席が確保できず、残念でしたね。それにしても今年の寒さは異常!

聖母マリア教会にある、衣装がド派手な聖母子像(着せ替え人形の服みたいなマントを羽織った、例のやつです)の写真は、長いこと、東京の自分のアパートの冷蔵庫に貼ってありました。旅行したとき教会の売店で購入したものです。あそこでコンサートなんて、いいなあ。
Commented by さわやか革命 at 2010-12-18 11:14 x
極寒コンサート、ごくろうさまでした。
私も真冬の教会のコンサートに行ったら、寒くって参ったことがあります。もっとも、その時は外の温度が5度だったんで、そちらよりは遥かにマシですが……。
音の方も、残響7秒だか9秒だかの大きな某教会では、前方の列に座ってても楽器の音がよく聞こえませんでした。昔の教会ではどんな風に音楽が聞かれてたんだろうなどと謎に思ってしまいます。

この曲は確かモンテヴェルディが再就職先を求めてアピールするために作ったんですよね。(結局転職しなかったが) あのカヴァッリも作曲してるし、当時の宮廷作曲家の腕の見せ所だったようで。
初めて聞いたのは十ウン年前、ルネ・ヤーコプスが来日して指揮した時ですが、若きA・ショルとか何気に豪華な顔ぶれだったような記憶があります。

|見つけたときに即、買っておくべきであった。

手に入らないと思うと、余計に欲しくなるとゆう……(汗)
Commented by レイネ at 2010-12-18 20:29 x
bonnjourさま、ヨハネット・ゾマーは、コンサート・ホールや歌劇場と同じくらい教会で聴く機会が多いです。やっぱり、オペラかリサイタルのほうが、彼女の歌声が堪能できるので、これからは教会での合唱モノはパスしようかと。

聖母教会の聖母子像は、とっても衣装持ちなんです。様々な行事や祝日にあわせて着替えるので、着せ替え人形の趣。丁度クリスマス・シーズンだから、またドッ派手かも。
建物や内装は美しいけど、音響は市内の教会中でも最悪の聖母教会ですから、コンサートは避けたいところですが、オランダ・バッハ協会やらメジャーなのはいつもここ。。。
Commented by レイネ at 2010-12-18 20:48 x
さわやか革命さま、耐寒訓練の趣のコンサートでした。
アントワープのAmuzやセレブルダース・チャペルは、元教会で現在コンサート・ホールだから、暖房ががんがんに入ってて助かりましたが。
音響によっては、何聴いてもどろどろに融けて混ざり合ったポリフォニーみたいな曖昧な音楽になってしまいますね。この世のモノとは思われぬそういう音が、ありがたみを増していたんでしょうか、昔は。
モダンなコンサート・ホールではあまりに音響がデッドなのとあいまって空しさを感じるので、ミサ曲とか受難曲などは教会で雰囲気に浸りながら聴きたいとは思うのですが、兼ね合いが難しいです。

ショルはもともと教会系の声質の歌手だから、宗教曲には向いてるでしょうね。特に若い頃は。

次回、オランダ・バッハ協会のコンサートで、豪華仕様『クリスマス・オラトリオ』見つけたら、買います!(当日は現金持ってなかったので)
Commented by Mev at 2010-12-18 23:45 x
寒い中、よくがんばりました!!
先日行ったコンサートでは、司会の人が「僕らはいつもホワイエとか教会堂で演奏しているのですが、音響のために暖房はいれません。なのでその代わりに客席にカイロを置かせてもらってます。今日も置いてあります。演奏始まる前にどうか開封しておいてください。寒くなってから開けてもなかなかあったまりませんから。」と言っていたんです。なるほど、座席にはそれぞれ使い捨てカイロが一個ずつ。なかなかいいですよね。
Commented by レイネ at 2010-12-19 00:23 x
Mevさま、使い捨て(および持続可能な)カイロとウォシュレットって、日本では当たり前のものですが、ヨーロッパでは見かけませんね。お土産にいただいたものを、首や背中や腰を痛めたときに使い、極楽だと思ったので、同じ痛みに苦しむ人に分けてあげましたっけ。捨てるとき、ケミカル・ゴミとして出すべきだろうと、主人に突っ込まれました。日本では普通に捨てていいのかしら?
教会でのコンサートに持参すべきもの:クッション、毛布にカイロ。カイロがなかったら、体の中から暖めるための強いお酒、とか。
Commented by アルチーナ at 2010-12-20 09:42 x
日本は使い捨てカイロ、充実してますよね。
昨シーズンの冬のスポーツ観戦用に座布団型のカイロと靴の中敷みたいなカイロを買いました。それと・・度数の高いお酒ですね。確かに。

教会でのコンサートって何となく憧れてしまいますが、
修行のようで・・尚且つ音が響きすぎてしまうようで・・雰囲気は良いかも知れませんが、良いばかりではなさそうですね。
でも、オルガンはやっぱり教会で聴いてみたいですけれど。
Commented by レイネ at 2010-12-20 19:01 x
アルチーナさま、さすが慣れてらっしゃる。2月のイギリスでのラグビー観戦って、屋外ですよね?考えるのすら恐ろしいような気がする。。。座布団型カイロって、出てるのね。ヨーロッパへも持参されるのがよろしいかと。

小さめの聖ヤン教会ではまあいいのですが、大きな聖セルファースや聖母教会では、何聞いてるのかワケがわからなくなります。
オルガン・コンサートは、やっぱり教会でないとね。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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