カメラータ・ヤナーチェクのバロックと偽バロック

日曜夜に、クリスマス・コンサートに招待された。
地元LSOのコンマスであるギル・シャロンが主催するアマーティ室内楽シリーズの一環である。
今回は、チェコの室内楽アンサンブル、カメラータ・ヤナーチェクにシャロン(v)が加わった。

カメラータ・ヤナーチェクは、ヤナーチェク・フィルの団員から成る室内楽団だそうだ。
いかにもチェコの楽団らしい名前からチェコものを期待したのだが、プログラムはちょっと異色。
急に招待されたので、演奏曲目や奏者も知らずに会場のマーストリヒト音大に出かけたのだった。
今回は、長男が同行した。

Camerata Janacek + Gil Sharon (v)
Amati Kamermuziek Serie Kerstconcert @ Conservatorium 2010年12月12日

Corelli Concerto Grosso op.6 no.8 (per la notte di natalo)
Vivace - Grave
Allegro
Adagio - Allegro - Adagio
Vivace
Allegro
Largo (Pastorale ad libitum)

Grieg Holberg Suite op. 40
Praeludium
Sarabande
Gavotte
Air
Rigaudon

Pauze

Vivaldi De Vier Jaargetijden
Concerto No. 1 op. 8 La primavera
Concerto No. 1 op. 8 L'estate
Concerto No. 1 op. 8 L'autunno
Concerto No. 1 op. 8 L'inverno

テーマは、ずばり、バロックと偽バロックである。

コレッリの合奏協奏曲とヴィヴァルディの『四季』という真性・正統的バロック音楽に、グリークの
18世紀風の擬似バロック音楽を組み合わせた、意欲的なプログラムだ。

コレッリのこの曲は、クリスマスのための、と副題が付くくらいだから、今回のコンサートの趣旨に
叶っている。終章のラルゴは、ボッティチェッリの『キリストの生誕』から霊感を得て作られたらしい。
同タイトルで描かれたいくつかあるボッティチェッリの絵のうち、どれを指すのかは知らない。
それよりも、長男が「!」とすぐに感応したのは、またもやコンピューター・ゲームにこの曲が使わ
れているからだ。Empire:Total Warというのは、18世紀のヨーロッパを舞台にしたゲームである
から、コレッリの曲がオープニングに使われるのはしごく理にかなっている、とは長男の弁。

カメラータ・ヤナーチェクは、ヴァイオリンは主に若い女性、ヴィオラ、チェロ、コントラバスは主に
男性が担当し、ステージ左側に黒い衣装の女性たち、右側に赤シャツがユニフォームの男性たち、
と視覚的にくっきりと分かれた配置だ。チェンバロとチェロ、コントラバスなどの大型楽器以外は、皆
立ったままの演奏である。
バロックと偽バロックを演奏した彼らであるが、楽器はモダンで奏法はピリオド・アプローチがかってる。

グリークの『ホルベルク組曲』というのは、初めて聴く曲だ。1884年、物理学者ルードヴィヒ・
ホルベルク(1684-1754)の生誕200年を記念して、彼の生きた時代に耳にしたであろう古楽
風に作曲されたもの。クープラン、リュリ、ラモーなどの舞踏音楽コピーに19世紀末風味付けを
加味している。
はっきり言って、バロック音楽のおおまじめなパロディーである。面白い試みの音楽ではあるが、
後で思い出そうとしても、頭に何も残らないという、可愛そうな曲だ。アイデアは買おう、しかし、
出来はイマイチ、なのであった。

休憩中は、わたしたちも銀行からの招待客であるという名目なので、別室で飲み物を供された。
普段コンサートに来てる聴衆とは客層が異なるように感じられるのは、皆様、非常に洗練されてシック
な服装だからである。さりげなく高級品を身につけている。
普段着の長男は、「こんな格好だし、若い人は他にいないから、ちょっとなあ」と少々ひけていた。
某国立銀行から外資の某大手銀行に移った知人の名前が、コンサート・プログラムにスポンサー
として出ている。彼は金曜の夕方に「急で悪いけど、日曜日にコンサートがあるから、来てくれる?」
と電話してきたのだ。大企業向け接待部長みたいな仕事らしい。わたしたちはサクラとして招待された。
彼もピアノを弾く、音楽愛好家仲間である。

休憩後のヴィヴァルディ『四季』が本日のメイン・イヴェントである。
ヴァイオリンのソロは、アマーティ室内楽シリーズの主宰であるシャロンが担当だ。
地元LSOのコンマスとしておなじみの彼が、ルーマニア出身でエネスコ・プロジェクトも推進している
ということを初めて知った。道理で、ロンドンのルーマニア大使館の文化関連コンサートみたいなのに
も登場しているのに合点がいった。

エッジが利きすぎたりゴリゴリしたところのない滑らかな演奏で、刺激的な面は全く強調しない。
ヴィヴァルディ演奏の進化というか研究には、この20年ほど目覚しいものがあるから、こういうピリオド
的でない演奏も、また珍しいのではないだろうか。おっとりとした上品な聴衆の好みにぴったり合った。
ヴィヴァルディの責任ではないのに、皆が手を出すので垢まみれのような印象の『四季』だが、
ライブで聴くとやはりいいなあ、と思える名曲だ。
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by didoregina | 2010-12-15 10:24 | コンサート | Comments(0)


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