ロベルタ・インヴェルニッツィ&ファビオ・ボニッツォーニ

ロベルタ・インヴェルニッツィのコンサートに行った。チェンバロ演奏はファビオ・ボニッツォーニ。
アントワープで日曜マチネーだったので、スティーブン・ジョーンズの展覧会と組み合わせた。

実は、ロベルタお姉様の歌声は、3ヶ月前にユトレヒトで聴いている。

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      清々しい8月の朝のユトレヒト市内の運河

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      同上。3ヶ月たってようやく使えたこの2枚の写真、、、

その時も、指揮はファビオ兄さんだった。(楽器演奏はラ・リゾナンツァ)
その時のプログラムは、リュリとカンプラであったようだ。(<-すごく、いい加減)
曲目が皆目わからないのは、ユトレヒト古楽祭では、詳細プログラムはコンサート会場でも販売・
配布してなくて、2週間以上にわたる全コンサートのプログラム・ブックという分厚くて重い本の
ような形式になっているものを買うしかないからだ。それが10ユーロ以上する。そこには、曲目・
演奏家はもちろん、歌詞や対訳も載っているようだが、お金出してまで欲しいとは思わなかった。
今年の古楽祭のテーマはルイ14世だったので、コンサートはLe gout Italienというタイトルで、
ルイ14世の宮廷で活躍したイタリア出身の作曲家によるイタリア風味のフランス語歌曲、という観点
から選ばれたようだった。

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      ユトレヒトのGeerte教会は、質素なインテリア

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              ファビオとロベルタ

今回は、前日にこのふたりによる古楽声楽およびチェンバロの公開レッスンもあり、ちょっと聴きに
行きたかったが、無理なのであきらめた。
そして、今回は、CDを買って事前勉強も怠りなくライブに臨んだのである。

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      インヴェルニッツィが歌う、バロック時代の女性作曲家による曲を集めたCD

CDにも何曲か収められているバルバラ・ストロッツィの曲が、Giro d'Italiaというタイトルのコンサート
ではアミューズでありメインのご馳走である。(しかし、CD収録曲は、結局歌われなかった。。。)

Roberta Invernizzi &Fabio Bonizzoni @Amuz  2010年11月21日

Barbara Strozzi (1619 - 1677)
Lagrime mie
Tradimento

Girolamo Frescobaldi (1583 - 1643)
Aria detta Balletto

Claudio Monteverdi (1567 - 1643)
Lamento d'Arianna

Girolamo Frescobaldi
Toccatta

Diovanni Cesare Netti (1649 - 1686)
Nella notte piu fosca

Girolamo Frescobaldi
Cento Partite sopra Pssacagli

Barbara Strozzi
Sino alla morte
Mi fa rider la speranza

会場のAmuzというのは、バロック様式の教会で、Augustinus Muziekcentrumというのが
元々の名前らしいが、略称が正式名になっている。MoMuからは、通り一本先ではしごに便利だ。
MoMuというのもMode Museumの略だが、どうもこれが正式名であるようだ。
ベルギーでは、文化施設にこういう略称をつけるのがなぜか好きというか、流行っている。
ルーヴァンに昨年リニューアル・オープンした美術館もMという名前。Museumの略。。。
ついでに、ブリュッセルの音楽ホールもBozarという略名になっている。Palais des Beaux-Arts
なんて綴りは長くて間違えやすいからか。。。

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        アントワープのAmuzは、ごてごてと装飾過多の元教会。
        いかにもルーベンスの町らしい濃さである。
        チェンバロの来歴はどこにも書いてないので不詳。
        蓋の内側にはアルカディアに遊ぶ人物たちの絵。

ロベルタお姉様は、ストロッツィ、モンテヴェルディおよびネッティの歌を歌い、合間にファビオ兄さん
がフレスコバルディの曲をチェンバロ演奏する、という形式だった。

いずれも嘆きの歌で、ほとんど演歌のように粘っこい情念あふれる内容なのだが、ロベルタお姉様の
歌唱は、まさにそれにふさわしく、あくまでも濃い。
これがもし、ヨハネット・ゾマーだったら、もう少し優しく可憐な歌い方で、思わず肩を抱きしめて慰め
てやりたくなる風情なのだが、さすがイタリア人のロベルタお姉様には、激しいものがある。
実際、2月に聴いたゾマーが歌うモンテヴェルディの「アリアンナのラメント」には、哀しみは自己内部
に向かうので、哀れな境遇を切々と訴える悲劇のヒロインらしさが漂っていた。同情と憐憫を誘った。
それが、インヴェルニッツィが歌うと、もう、嘆きというより恨み節である。
こういう女と関わりあいになると後が怖い、と思えるような、末代まで呪われそうなすさまじさだった。
それは、確かに、バロック初期のほとばしる情熱をストレートに表現する歌唱なのだった。一人芝居を
演じているような。
音に色を付けていく、ということを究極に追求しているようで、聴いていて少しくたびれてしまった。

それに対して、歌の合間に演奏されるチェンバロ・ソロは、肩を揉み解してくれるような柔らかさが漂い、
ほっと一息つかせてくれ、いかにも間奏曲にふさわしいのだった。
ファビオ兄さんには、怨念・情念などという単語ほど不似合いなものはない。

この教会の音響は、残響がわんわんと反響してきて、歌を聞き取るには最悪。

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       ひどい写真で、アーチストにはすまない。


コンサート終了後は、お約束のビールで、緊張を解きほぐした。

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       アントワープといえば、地ビールはデ・コーニンク。
       通は、ボレケと言って注文する。このグラスの形を指す。
       地元で飲むボレケは、どうも色・コクともに足りないような気が。
       不思議だ。。。
       
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by didoregina | 2010-11-25 15:48 | コンサート | Comments(8)
Commented by REIKO at 2010-11-26 14:48 x
この二人だったら、むしろインヴェルニッツィの歌よりも、ボニッツォーニのチェンバロ・ソロに注目してしまうかも・・・?
彼のフレスコバルディだったら、すごく聴きたいと思います。
写真のチェンバロは、あちこちの様式が混ざっているような、不思議な外見ですね。
Commented by レイネ at 2010-11-26 16:58 x
REIKOさま、チェンバロ弾く人って、どうも草食系のイメージが。。。この人もやっぱりトン・コープマン門下生で、ハーグ音楽院で唯一のオルガンとチェンバロのダブル・ディプロマ取得卒業生とか。

鍵盤楽器はでかすぎて持ち歩けないし、チェンバロとかフォルテ・ピアノだとホールも持ってない場合が多いから、レンタルもしくは自前で持参になるんでしょうね。ユトレヒトのコンサートではこれとは別物でした。このチェンバロは、脚がごつくてルネッサンスやバロック以前のデザイン(ゴシックもしくはロマネスク風)の雰囲気ですね。
Commented by さわやか革命 at 2010-11-27 23:54 x
先日の来日コンサートとはまた違ったプログラムだったんですね。ストロッツィはアンコールでやったと思いますが。
声楽アンサンブルは色々聞いているんですけど、よくよく考えると歌手のソロ公演はあまり行った経験ないし、オペラ界の事情にも疎いので、この人の立ち位置がどういうものか今イチ分かりません。
日本で共演してたリュートの若いモンはもう本当に「弟分」みたいな感じでかわいがってるという印象でした。
Commented by レイネ at 2010-11-28 04:10 x
さわやか革命さま、お呼びたてしてしまいました。
アントワープでも、アンコールにまたストロッツィ歌いましたよ。

インヴェルニッツィは、まるでイタリアのヨハネット・ゾマーみたいだなあ、と思ってます。出してるまたは参加しているCDがやたら多いのとレパートリーの広さが。でも、ロベルタお姉様のは、ヘンデルとヴィヴァルディが基本的で、教会系のゾマーとは異なり、イタリア・バロック・オペラ系だから、歌い方も濃いんでしょうね。でも、オペラ実演に出演したという話はほとんど聞かないんです。声量があまりあるほうではないので舞台向きでないのかも。
Commented by アルチーナ at 2010-11-29 13:19 x
あ、この記事気が付きませんでした!!さわやか革命さんのとことのコメントで気が付いた次第・・

私もコンサートを聴きながら、イタリアって結構古楽奏者や歌手もいるようだけれどバロックオペラはあまり上演されていないようだし・・ハテ??などと思ったりしておりました。

私はインヴェルニッツィ、そんなに濃いとは思わなかったですが、youtubeで見た印象ではコロラトゥーラが荒っぽいのが気になっていたので、今回の日本でのコンサート、演目的にコロラトゥーラが殆ど無く、助かりました・・・まあ・・やっぱり激しいんでしょうね・・

それにしても日本とは違い、とても素敵な会場なのに・・歌には不向きだったんですね・・そういうのはやっぱり残念ですね。
Commented by レイネ at 2010-11-29 13:57 x
アルチーナさま、GT5音楽のランラン記事の陰に隠れてます、インヴェルニッツィ。。。
選曲のせいもありますが、今回のロベルタお姉様の歌い方は、非常に濃かったです。コロラチューラはほとんどないのですが、表現の仕方を練りこんでる風で、七色の声になってました。

イタリアは、その後のイタリア・オペラの伝統が強すぎて、古楽やバロック声楽、バロック・オペラはまだまだ一般的な人気を獲得できてないんでしょうね。だからバロック・オペラ上演の機会が少ないのではないかと。

Amuz、次回行くときには、直接の音が直に届く、もっと前の方の席を狙います。
Commented by momoneko at 2010-12-04 17:02 x
装飾過多のバロック教会で情念漂うイタリア演歌ですか。でもベルギーのフランダース地方の、あまりにも粘りのない人々の表情や牧場で草をはむ牛的な暮らしぶりにどっぷり浸かっていると、そんな体温の高そうなラテン歌手の濃い歌声もいいかもなんて思ってしまいます。たまには、特に寒い冬、そんな経験してみたいです。それで結局この日、ランチはどこで召し上がったのですか?
Commented by レイネ at 2010-12-04 23:15 x
momonekoさま、オランダやベルギーの古楽とは、やっぱりイタリア人の演奏はちょっと濃さが違いますね。とんがってたり、ねちっこかったりで。
アントワープのフラームス・オペラ、今シーズンのバロック・オペラはモンテヴェルディの『ウリッセの帰郷』(サルデッリ指揮)です。『ポッペア』や『オルフェオ』に比べると上演機会が少ないので見逃せないと思ってます。ただ、ウリッセ役はフリオ・ザナーシ(サヴァール指揮『オルフェオ』でタイトルロールだった人)で、歌は割りといいけど、ルックスが。。。。
そうでした、ランチの報告忘れてました。結局、時間がなくて、手じかのアイリッシュ・パブでサンドイッチ。。。でも、なかなか美味しかったですよ。次回は、AMUZかお勧めのフォアイエでブランチにしたいわ。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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