フラメンコ・オペラ El Greco de Toledo

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2010年10月21日@Park Theater Eindhoven
El Greco de Toledo door Eric Vaarzon Morel
regie: Javier Lopez Piñon,
Eric Vaarzon Morel (flamencogitaar),
Eric Vloeimans (trompet)
Geronima Xenia Meijer (mezzosopraan),
El Greco Maarten Engeltjes (countertenor),
Carmelita Ginesa Ortega (flamencozangeres),
Juan/Filipo II Carlos Denia (flamencozanger),
Alma Eli la Truco (flamencodanseres)
strijkkwartet o.l.v. Oene van Geel

フラメンコ・オペラと銘打っていることと、割とひいきのオペラ歌手のクセニア・メイヤー(MS)と
マールテン・エンゲルチュス(CT)が出演するというので、興味を持った。
8月からオランダ国内の市立劇場を巡業しているが、TVでも紹介されたので、結構客の入りは
よかった。
客層は、普段のオペラとは全然別のようだ。また、わたしが行くような、地味なコンサートに
来る渋い客層とも異なる。おしゃれな若い人が多くて、カジュアルな華やかさが会場には漂う。
いかに、普段のコンサートに来る客にはおしゃれな人が少ないかが、よくわかった。

舞台中央に、フラメンコ・ギタリストでこの作品の作者(コンセプト、歌詞、音楽)エリック・
ファールゾン・モレルが座り、彼の左側にコントラ・バス、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン、
トランペットの順に弧を描いて楽隊が控える。
反対側に4人の歌手のための椅子代わりの立方体の台が置いてある。

フラメンコ・ギターが鳴り出したとたん、「あちゃ~」と思った。「しまった、これは、、、」とも。
マイクロフォンを通してびんびんにPAを利かせたサウンドは、不自然に大きく響き、耳をつんざく。
なんで、こんなに趣味の悪い音響にしなければならないのか、皆目わからない。自然なアコース
ティックだけでは、この会場には無理なのか。
フラメンコ・ギターだけならまだ我慢できたかもしれないが、PAを通した弦楽の音ともなると、もう
理解不能だし、クラシックの歌手の声もマイクを通すとまるでミュージカルのようにしか聴こえない。

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      10年くらい前までは、モーツアルトを歌ってたのに、最近は
      スペイン・バロックCDによく参加してるクセニア・メイヤー。
      エル・アイレ・エスパノールとかアドリアン・ファン・デル・スプールの
      ラテン・バロックに活動の場を見出したようだ。
      今回は、気位の高い貴族で、エル・グレコの愛人役。

エル・グレコとヘロミナ役のクラシック歌手の歌う部分の歌詞はオランダ語である。
それがまた、安手のミュージカルみたいな印象で、耳障りがよくない。
歌詞は、当時の神秘思想家アヴィラのテレサやフアン・デ・ラ・クルス、エル・グレコ自身の手記など
から取られたものだが、オランダ語と音楽の響きが美しくかみあっていない。というより、旋律の付け
方がクラシックっぽくないから、どうしてもミュージカル調で安っぽいのだ。オペラの作曲としては、
非常に稚拙である。

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      フェリペ2世役とジプシー娘で絵のモデルのカルメリータ役は、
      フラメンコ歌手がスペイン語で歌う。発声法がクラシックとは
      まるで違うし、独特のアラブっぽいヴィヴラートの響きが迫力ある。

舞台に字幕は付かないが、プログラム・ブックに歌詞対訳が付いている。しかし、歌の部分は
非常に少ないのである。断片を繋ぎ合わせている構成なので、場面が変わったことを示すため、
そのつどバックグラウンドと状況説明が、縦長のスクリーンに映し出される。かなり長い文章で
読むのに疲れるくらいだ。例えば、カトリックの宗教裁判や異端尋問の厳しさとか、カルメリータと
ヘロミナとのエル・グレコをめぐるジェラシーとか、歴史的背景とか。。。。

全部で8場になっていて、トランペットやギターの独奏に、歌、そしてフラメンコ・ダンスが各々
ほとんど相互関連なく登場する。フラメンコ・ダンス付き歌謡ショーみたいなものである。

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        場面展開だけは多いが、その8場の構成がいずれも同じで
        退屈。後半は眠くなってしまった。
        フラメンコ・ダンスはエネルギッシュだし、フラメンコの歌も
        味わいがあるが、どれも同じように見えたり聴こえたりする。

これをオペラと呼ぶのは、相当無理があるような気がする。
フラメンコ・オペラというコンセプトとしては、どっち付かずで、寄せ集めとしか思えない。
作曲も構成も詰めが甘すぎる。
クラシック・オペラ歌手とフラメンコ歌手の両方を出す、その必然性も効果もあまり感じられない。
個々の歌手やダンサー、器楽奏者は皆素晴らしい熱演で上手いのに、非常に残念だ。

トランペットが、まるで、笙やフルートやサキソフォーンやクラリネットに似た様々な音色を出せる
というのにはびっくり、感心した。

しかし、ショーは盛り上がりを見せ、わたし以外の観客は興奮しまくり、最後はブラボーの嵐だった。


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         秋らしい葡萄蔦葉の泥大島。
         地色が地味なので、小物を明るめに。
         クリーム色の半襟、帯、
         オレンジ色の帯揚げ、
         ミント・グリーンの帯締めは伯母が組んだもの。
         桜皮の草履型下駄。鼻緒は印伝。

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         洒落袋帯は、ちょっとメルヘン調の山模様を
         織り出したもの。
         錦秋と花木がいろいろなので春と秋に使える。
         地味過ぎるコーディネイトかなと思ったが、
         終演後、コートを着ていると、見知らぬ人が
         わざわざ寄ってきて「素晴らしい。褒めずには
         いられません。どうもありがとう」と言うので
         気分をよくした。
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by didoregina | 2010-10-24 12:06 | オペラ実演 | Comments(4)
Commented by straycat at 2010-10-24 22:12 x
こんにちは
私も一昨日ジャズを聴いてきたんですが、アコースティックギターなどはPAを通してもさほど不自然ではないですが、バイオリンとなるとちょっと下品になりますね。
フラメンコを歌う歌手は、日本の民謡の発声とちょっと似てませんか?私はそれはそれで好きですが。

今日のコーディネイトは又素敵ですね。
帯が・・綴れですか?泥大島の暗い色にカラフルな帯が映えて、とっても素敵。
私は高下駄みたいなものしか持ってなくて、それを雨の日に履くだけなんですが、こういう装いに下駄っていうのも合いますね。
桜皮ってところが又お洒落。
海外の方に褒められるって、やっぱり着物の美は普遍なんですね。
Commented by レイネ at 2010-10-24 23:52 x
straycatさま、本格的なフラメンコをナマで観て聴くのは初めてでしたが、絞り出すような発声とヴィブラートが、とてもアラブ風に感じられました。確かに、日本の民謡のような泥臭い味わいがありますが、朗々というより、ざらざらした印象の発声でした。クラシック(歌手と楽器)との組み合わせがイマイチ。

客席におしゃれな若い人が多い会場だったので、わたしの地味な着物は全然目立たないかと思ってましたが、帰り際、わざわざ「ありがとう」と声をかけにきてくれた人がいて、びっくり。うれしかったです。
Commented by アルチーナ at 2010-10-26 16:31 x
一時期フラメンコにはまり、(流行っていたので・・笑)何度か観に行きました。PAも使い方によってはそれ程うるさくならないようにすることができそうな気がするのですけれどね・・??オペラ公演のように上手に使えば・・・(しかし、本で読んだときはちょっとショックを受けましたが)

今回の公演は元々ミュージカル風の作品だったのでしょうね。あ、そうそう!アンドレ・リュウのコンサートがうるさくて大変でした!笑

観客がいつもと違うというのは面白いですよね。バレエ公演に行っても大分オペラの観客と違いますし・・

ゴリホフの『アイナダマール』、まだ聴いていないのですが、コチラは上手くフラメンコと融合出来ているのかしら?という事に興味が沸きました。
Commented by レイネ at 2010-10-27 02:58 x
アルチーナさま、この公演は「ちょっと我々のシュミとは合わないね」と主人も言ったほどで、かなり面食らいました。フラメンコだけなら、それなりによかったのではないかと思います。

しかし、PAって、本当に使い方が難しいものです。アントワープでの『ジャゾーネ』でも、使い方に違和感を感じました。足りない音響を補う程度で、不自然でないなら許せるんですが。。。

フラメンコを少しだけ味付け程度に使うなら、クラシック音楽とも合いそうですが、加減が難しそう。『アイナダマール』には、タンゴも使われてるんでしたっけ?興味は、湧きますね。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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