Tempo Rubato@St. Jan

フォルテ・ピアノ4手のコンサートに行った。
フレイトホフ劇場が企画するMoments Musicauxという室内楽シリーズの第二回目。
演奏は、イタリア人のアントニオ・ピリコーネと日本人の丹野めぐみさんのデュオだ。
昨年のファン・ワッセナール・コンクール(オランダの古楽コンクール)で優勝したコンビで、
このモメント・ムジコー・シリーズには、今シーズンはエリザベート王妃コンクールの2010年
ピアノ部門優勝者(オランダ人で初めて)も来月登場するから、なかなか目が離せない企画である。

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      おなじみ聖ヤン教会が会場

Tempo Rubato: Antonio Piricone & Megumi Tanno   2010年10月10日

W.F. Riem - Ouverture uit Mozart's "Zauberflote" (1807)
Venanzio Rauzzini - Sonata Duet in D, Op. 12 No. 2 (1783)
Ludwig van Beethoven - Acht Variationen uber ein Them des Grafen von
Waldtein WoO67 (1790 - 92)

pauze

Tommasso Giordani - Sonata Duet in C major Op. 9 No. 1 (1782)
Wolfgang Amadeus Mozart - Fantasia for mechanical organ in F minor, K608 (1791)
Muzio Clementi - Sonata Duet in C major Op. 6 No.1 (1780)

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フォルテ・ピアノのデュオというのは、なかなか珍しいのではないだろうか。わたしは初めて聴く。
昨シーズンは、ジョス・ファン・インマーゼルとクレア・シュバリエによる4手のフォルテ・ピアノでの
シューベルトというのがあったが、なにか別のコンサートと重なって聞き逃した。

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       アントン・ヴァルター1790年代型のポール・マクナルティーによる1994年コピー。

モダン・ピアノより小型で鍵盤数も少ない(鍵盤の大きさもモダン・ピアノより小さめだ)から、二人で
並んで弾くと狭苦しくて、指がもつれないだろうか、などと素人は要らぬ心配をしてしまったが、
二人の息はぴったりと合って、どんな早いパッセージでもお互いの邪魔になることはない。

そんなことより、4手で演奏されるフォルテ・ピアノからは、思いがけないほどふくよかで深々とした
ダイナミックな音が出てくる。しかも、紡ぎだされる音色の変化に富む多彩さには、驚いた。
どうもフォルテピアノの音は、時に貧弱だったりヒステリックだったりピッチが外れて聞こえたりするもの
という偏見があったのだ。
前半は、典雅で優美な曲、後半はエネルギッシュな曲とメリハリがついていたように思う。
リームとかラウツィーニとかジョルダーニとか、初めてその名前を聞く作曲家の曲と、ベートーベンや
モーツアルト、クレメンティといった有名作曲家のしかし4手で演奏されるためあまり馴染みのない曲を
組み合わせたプログラムもいい。

まさに目から鱗が落ちた、といえるコンサート体験だった。
曲目と奏者と楽器と会場の音響が上手く作用して、相乗効果を出したという好例かもしれない。
古典派の鍵盤曲のフォルテ・ピアノ演奏という、相当地味で埃っぽくなりそうな音楽が、今回は
とてつもなくフレッシュで生き生き溌剌としたものになったのだった。
久しぶりに、心が弾むようなリフレッシュされた気分だ。
好天の日曜午後だったせいか、聴衆の数があまりに少なかったことが惜しまれる。若手奏者の
意欲的な企画のこのコンサートは、意外にも万人受けする内容だったのに。

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          音色だけでなく、胡桃材の色も美しくエレガント。

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          フォルテ・ピアノの持ち主ジャック氏(左)は、アントニオ(右)の
          師匠でもある。アンコールは、アントン・アルブレヒツベルガー
          (ベートーベンの師匠)の曲を、ジャック氏に献呈演奏。

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          めぐみさんの衣装は、黒とベージュの着物生地を片身変わりに
          使ったワンピース。ゆったりとしたデザインで演奏しやすそうだ。
          わたしも着物地(紬)のスカートだったが、写真には写っていない。


先々週、ウィッテムのヘラルドゥス修道院図書館で、フォルテ・ピアノ(バート・ファン・オールト)と
ヴァイオリンのコンサートがあった。
バート・ファン・オールトは、テンポ・ルバートのお二人も師事した、有名なフォルテ・ピアノ演奏家だ。
そのコンサートは、同日昼間に見た映画Io sono l' amore の印象が強烈過ぎて、頭が一杯になっ
たので、行くのをやめたのだった。一日に受容可能の感動の許容量を上回ったからだ。残念である。

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          ウィッテムの修道院ビール、ヘラルドゥス・ダブル(右)。
          修道院のライセンスを貰って近くのグルペナー醸造所が
          作っている。アルコール度7%、上面発酵のトラピスト風、
          カラメル色から想像するより甘みは少ない。
          一緒に写っているベルギー・ビールのグリムベルゲンに比べて
          苦味が勝ち、飲み比べるとヘラルドゥスの方がずっと美味しかった。
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by didoregina | 2010-10-11 15:59 | コンサート | Comments(4)
Commented by Mev at 2010-10-13 09:08 x
たしかに、フォルテピアノで連弾って窮屈そうなイメージです。
でも魔笛序曲なんかすごく楽しそう!

それにしてもトラピストビール、おいしそう!
Commented by レイネ at 2010-10-13 15:16 x
Mevさま、4手だと音に厚みが出るし、声部も多くなって複雑になるから、オペラチックに聞こえて面白いです。

上記写真のビールは、正確にはトラピストではありません。単なる修道院ビール。昨日は、オーヴァルの正真正銘トラピスト・ビールを飲みました。
Commented at 2010-10-14 01:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by didoregina at 2010-10-14 04:21
鍵コメさま、ベネルクスは古楽系のコンサートが盛んなので、またどこかでお会いできそうですね。次回は、もっと皆に声をかけて大勢で行きたいと思います。
12月のフィガロって、もしかしてヨハネット・ゾマーが出演するやつかしら。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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