ブラームスのオール・Vソナタ

ピアノの師匠ペーターが主催するお城コンサート・シリーズのシーズン開幕は、ペーターと相棒
ハンス(v)のコンサートというのが恒例・定番になっている。
今回は、ブラームスのアール・ヴァイオリン・ソナタである。
弟子としては、駆けつけないわけにはいかない。

9月中旬だというのに暑さがぶり返し、久しぶりに20度以上になったので、とうとう今まで
袖を通す機会がなかった夏着物を着ようかという気になった。黒の絽地に、白のストライプと
萩の花が描かれた、夏の終わりにふさわしい柄だ。しかし絽の長襦袢を着るので、その下に
肌襦袢を身に着けないといけない。そんな3枚重ねには、暑すぎる気温だ。
コンサート会場のライクホルト城の窓を閉め切ったサロンに100人くらいの聴衆が集まると、
熱気がこもり大変な暑さになることは、自分のコンサートでも実証済みである。
それで、前回の洞窟コンサートに着ていった綿紬の浴衣を今回も着物風に着ることにした。

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      前回とは帯と小物を変えたコーディネート。水色の疋田絞りのバッグは
      夏に重宝している。臙脂の絞り柄の鼻緒を選んだ草履型の桐下駄。

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      博多の献上帯、白地に黒で麻の葉模様の絽の帯揚げ、芥子色にパステル
      カラーの点々の入った帯締め。

薄くても張りのある織地で、ブルーグレーの先染めの紬に紺で細かい柄を染めてあるから、
ちょっと江戸小紋風でシックで、着物風に装える便利な浴衣だ。仕立てに出しておいてよかった。

さて、コンサートのプログラムは以下のとおり。
J. Brahms (1833 - 1897)
Sonate nr. 1 in G op. 78 (1878 - 1879)
- Vivace ma non troppo
- Adagio
- Allegro molto moderato

Sonate nr. 2 in A op. 100 (1886)
- Allegro amabile
- Andante tranquillo-vivace
- Allegretto grazioso (quasi andante)

Pauze

Scherzo in c WoO 2 (1853)

Sonate nr. 3 in d op. 108 (1886 - 1888)
- Allegro
- Adagio
- Un poco presto con sentiment
- Presto agitato

男性ヴァイオリニストのコンサートだから、このくらい渋めのプログラムは妥当だろう。
オール・ブラームスというのは、渋さとしてはかなり強く、濃茶なみに濃厚だ。

「ブラームスはお好き?」というフランソワーズ・サガンの小説がある。中学生の頃、サガンには
結構はまったものである。しかし、「ブラームスはお好き?」は、恋愛小説としての大人度が高く、
中学生のわたしには退屈というかなんというかピンとくるものがなかった。
今の年になって読み返してみたらどうだろうか。若さを失いつつある主人公の心情が身にしみて
胸に迫るものがあるかもしれない。
「ブラームスはお好き?」を原作とした映画「さよならをもう一度」(イングリッド・バーグマン、
イブ・モンタン、アンソニー・パーキンスという面子だけでもそそられる)も一度観てみたいものだ。

などと、思いをめぐらせながら聴いていた。
ブラームスのピアノ曲には、いまだにつぼにはまったことがないが、ヴァイオリン曲は、協奏曲にしろ
いいものだ。
ベートーベンの轍を踏むような熱情とロマンのほとばしる、少々古色蒼然とした展開のソナタ群である。
ロマン派ならではの憂いを帯びた調子が、夏の名残というか秋の初めのなんとはなしに物悲しい
空気に恐ろしいくらい馴染み、会場全体に満ち溢れる。もののあわれ、というのではないが、寂静が
ひたひたと満潮の水のごとく迫り来て、広がるのである。

この二人のデュオ・コンサートには、ブラームスの「スケルツォ」はいつも定番として入っているが、
ブラームスのみというのは初めてだと思う。大体、ベートーベンやシューマンやはたまた後期ロマン
派のさまざまな曲を入れていることが多い。

ペーターのピアノはいつでもハンスのヴァイオリンの邪魔をしないように、控えめである。
ヴァイオリン・ソナタのコンサートでは、どうしてもピアノは伴奏・添え物になってしまうのは否めない。
それに対して、ヴァイオリニストは役得である。ここぞと華やかな技巧を見せたり聴かせたりできる。
コンサートの最中や直後には、だからヴァイオリンの印象の方が強烈なのだが、後々、余韻として
残るのはピアノ・パートだった。

ブラームスには苦手意識があるので、CDを聞き込んだりしたことも、自分で弾いた事もない。しかし、
これから迫りくる秋に向かい、寂寞とお付き合いせざるをえないヨーロッパでは、ブラームスの音楽に
浸ってみるのもいいかもしれない、と思った。
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by didoregina | 2010-09-12 11:47 | コンサート | Comments(8)
Commented by straycat at 2010-09-12 21:03 x
気温が20度を超えたから綿着物って・・羨ましい話です。
こちらはいまだに30度を超えてますから(^^;
最近日本は亜熱帯化しているので、長襦袢は5月あたりからもう麻という人も多いようですよ。
麻が一番涼しいです。

ブラームスにふさわしく、渋くて辛目のコーディネイトですね。
といってもブラームスってあまり聞いた事がなくて、一番好きなのがバイオリンコンチェルト二長調ってかなりありがちなんですが。
レイネさんは御自分でもピアノを弾かれるから、聞きどころも違うんでしょうね。それも羨ましいです。
そちらは演奏会も多くていいですね~。
日本は首都圏に住んでるのとそうでないのとで大きな開きがあることを関西に来て知りました。
Commented by レイネ at 2010-09-12 22:17 x
straycatさま、すみません、日本と違ってこちらはかなり涼しいんです。
麻の長襦袢は持っていないので、透けない夏着物や浴衣には、うそつき袖をつけたさらしの肌襦袢に半襟をつけて着ています。
絽の着物を最初着たんですが、長襦袢が暑くてやりきれずに脱いでしまいました。(来週末ウイーンで着る着物のコーディネート練習として)

私もブラームスではVコンが一番好き、というか、ほかに好きなものがないような。。。
日本は、東京にコンサートやオペラが集中してますよね。でも、同じ演目の公演やコンサートでも東京ほどチケット代が高くないのは、地方ならではの長所かも。わたしは、コンサート・チケットで30ユーロを超えると高いなあ、と感じます。
Commented by ロンドンの椿姫 at 2010-09-14 06:45 x
ブラームスの交響曲3番の第二楽章は「さよならをもう一度」の映画音楽にしか聴こえない私です。もう一度観てみたい映画ですし。

ロンドンも20度前後の涼しい日が続いていますが、週末のウィーンも涼しそうなので、どの着物にしようか今だに迷っています。日本じゃこの気温なら袷ですよね。
Commented by レイネ at 2010-09-14 15:28 x
ロンドンの椿姫さま、映画版「ブラームスはお好き」、ご覧になってるんですね!わたしは未見。TV放映してくれないかしら。

涼しくても9月に袷って、どうも肌になじまないような気がして。一応単衣(および紗)を3枚持っていって、その日の天候・気分&同行者との話し合いで決めようかと思います。
Commented by お城でブラームス at 2010-09-14 16:12 x
おお、またしても優雅な夕べでございますね。 ブラームスのヴァイオリン・ソナタ1番はどこか郷愁を誘う調べで大好きです。
Commented by straycat at 2010-09-14 17:54 x
レイネさん
度々出てきてスミマセン。
私、5月28日のロンドンでは、もしやと思って単衣も持って行ったんです(帯も)
でも気温もさることながら、日差しも日本のように明るく照りつける感じではなく、単衣だと見た目も体感温度も寒々しくてやめたという経緯があります。
生紬という素材のせいかもあったかもしれませんが。
なのでお節介ですが、一枚は袷をお持ちになってみてはいかがでしょう?
でも帯との組み合わせもあって、荷物がかさ張ってしまうでしょうか?・・
Commented by レイネ at 2010-09-14 19:55 x
お城でブラームスさま、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ、ファンが結構多いですね。交響曲など重厚な印象のブラームスですが、コンチェルトだとソロ・ヴァイオリンが活躍する分、少し軽くなるからかしら。秋の調べですね。
Commented by レイネ at 2010-09-14 20:05 x
straycatさま、今日は薄曇で、ヨーロッパの秋の寂しさが忍び寄ってきています。先ほど、着物コーディネイトしてみたんですが、どうもまだ袷を着ると暑そうで。オペラハウスの中も暑いところと涼しいところがありますよね。ROHはどちらかというとかなり涼しいようですが、それでもわたしには暑く感じられました。。。
ううむ、5月や9月は中途半端で難しい。単衣で、持って行こうかどうか悩んでる草木染の紬は、素材と織のせいで体感温度が暖かいのですが、今だと少々暑く感じるのです。
いろいろ、ご心配・アドヴァイスありがとうございます。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
性別:女性
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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