DNOのプロコフィエフ「3つのオレンジへの恋」

もう、ほぼ毎日のようにTVでオペラを観ている。ほとんどは、DVDになっているものを放映している
だけであるが、DVDを買わずともそれらが見られるのは有難い。

今回は、プロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」@アムステルダム・ミュージックテアター(2005年)だ。
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musical direction Stéphane Denève
direction Laurent Pelly
sets Chantal Thomas
costumes Laurent Pelly
lighting Joël Adam
choreography Laura Scozzi

Le Roi de Trèfles Alain Vernhes
le Prince Martial Defontaine
La Princesse Clarice Natascha Petrinsky
Léandre François le Roux
Trouffaldino/Le Maître de Cérémonies Serghei Khomov
Pantalon Marcel Boone
Le Magicien Tchélio Willard White
Fata Morgana Anna Shafajinskaja
Linette Sylvia Khevorkian
Nicolette Magali de Prelle
Ninette Sandrine Piau
La Cuisinière Richard Angas
Farfarello/Le Héraut Alexandre Vassiliev
Sméraldine Marianna Kulikova

orchestra Rotterdams Philharmonisch Orkest
chorus Koor van De Nederlandse Opera
preparation Martin Wright

20世紀の音楽が好きなので、プロコフィエフはかなりお気に入りの作曲家である。
プロコの交響曲や協奏曲、バレエ音楽やピアノ曲は、19世紀ロマン派の深刻で自己陶酔的な
音楽からは一線を画す独特のクールさがあり、鋭利なナイフで切り取ったようなくっきりした輪郭が
感じられ、とにかくカッコイイのが特徴だ。今は死語になってるかもしれないが、トッポいのである。

しかし、このオペラは御伽噺のような喜劇なので、クールさには少々欠けるが、プロコの別の持ち味と
いうか彼が隠し味として使う鈍重さがあって、それもまたいいのだ。(普通の作曲家だったら、ピリッとした
シャープな隠し味を使うところだが、プロコの音楽自体がピリッとしているので、彼は逆に泥臭さを
隠し味に利かせる)

このオペラを見たことがなくても、「行進曲」テーマは、きっと耳にしたことがあるはずだ。
この「行進曲」は、とても愉快で痛快な音楽で、映画「インディ・ジョーンズ」のテーマと並ぶ傑作だと思う。

「トゥーランドット」の原作者でもあるカルロ・ゴッツィの原作を元にした、コメディア・デッラルト風の軽くて
洒落た喜劇オペラなので、ストーリー展開のテンポも小気味よい。

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メランコリーに悩み引き篭もりの王子を慰めるために催された宴会で、魔女ファタ・モルガーナを笑った
ために、王子は魔女の怒りを買い、オレンジに恋をするという呪いを掛けられる。

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オレンジを求めて砂漠を彷徨った末、やっと見つけたオレンジのうち、2つの中に入っていた王女たちは
喉の渇きで死んでしまう。

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3つ目のオレンジの中の王女は助かり、王子と恋に落ちる。しかし、目を離した隙に王女は魔女の毒針に
刺されて、鼠に姿を変えられてしまう。

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姦計と邪心に満ちた従姉妹の王女が王子と結婚しようとするが、別の魔法使いの力で悪事はばれて、
鼠になった王女も元の姿に戻り、めでたしめでたし、というストーリーだ。

ディズニーがアニメ化してもよさそうなお話で、古典的御伽噺に必要な全要素が盛り込まれている。
それを、舞台上でビジュアル化するとどうなるか。
ローラン・ペリーは、プロコの台本に実に忠実に、大真面目なファンタジーの世界を造形した。
すなわち、舞台はトランプの国で、悪い魔法使いといい魔法使いの争い、悪事の犠牲になる王女、
呪いによる王子の試練などの場面が繰り広げられるのは大きなトランプ・カードの大道具の間だ。

さほど長くないオペラで、ストーリー展開も速いし音楽も楽しく飽きさせないのだが、それだけに
演出には工夫が必要だ。アムステルダムのミュージックテアターのバカでかい舞台上を駆け巡る
登場人物とシンプルなセットは上手く調和していて、夢の世界に遊んでいるようだった。

しかし、15年以上前に観た別のプロダクションでは、もっと楽しい工夫が凝らされていた。
入り口で観客は3枚のカードを手渡された。狂言回し・進行役の役者がサッカーの審判よろしく舞台で
カードを掲げると、観客は手に持ったその色のカードを擦る。そうすると、場面にふさわしい匂いが
カードから漂うという仕掛けであった。
最初の2枚は、台所の魔女の煮る不味そうなスープの匂いと、おならの臭いだったと記憶する。
そして、最後3枚目のカードを擦ると、オレンジの中から出てきた王女にふさわしいオレンジの香りが
漂うのだった。
楽しいオペラを観てご機嫌の客の多くは、例の行進曲を口ずさみながらホールを出て行った。
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by didoregina | 2010-08-27 15:00 | オペラ映像 | Comments(6)
Commented by アルチーナ at 2010-08-28 10:33 x
まあ!毎日ですか!!
日本でも、有料放送だったのですがレアオペラばかり放送している局が以前あり、見てました。
多分、制作費をあまり持ってない局だったのでしょう・・公演の内容もかなり落ちるような感じでしたけど・・
確かモンテヴェルディ以前の音楽劇やオーベール、グレトリなども放送していたと思います。
コチラの局はレアで尚且つ公演の水準の高そうなものが多くて良いですね!

それから・・なんとなく私もバロックと古典派、そしてロマン派をすっ飛ばして20世紀の音楽はもしかしたら好きかもしれない??と思っているところでしたので、プロコフィエフも聴いてみたいです。交響曲は古典交響曲しか知らない(笑)です・・トホ・・面白くて好きですけれど・・
Commented by レイネ at 2010-08-28 14:31 x
アルチーナさま、ブラーヴァTVは、2年前にデジタルTVプロヴァイダーに加入したとき、半年ほど実験的に放映してましたが、再放送ばっかりで内容がジリ貧になってパッケージからはずされました。それが、今年の7月から再びほぼ全国のデジタルTVで見られるようになったんです。まだこれからどうなるか、不安ですが。

日本の有料レア・オペラ局も、なかなか凄いレアものやってたんですね。

バロック・古典派好きな人は、ロマン派はあんまりピンとこないということが多いようです。19世紀末から20世紀初頭の音楽は、複雑なのもあるけどちょっと先祖帰りする感じで、受け入れやすいのかも。
プロコは、バレエ音楽とピアノ曲、ピアノ協奏曲もいいですよ。
Commented by straycat at 2010-08-28 16:01 x
あ、プロコ好きです~
ピアノ協奏曲しか知りませんけど。
アシュケナージのプロコのピアノ協奏曲全集を持ってますけど、今密林を見たら、いろんな人が弾いてるんですね。
情緒に溺れるみたいなところがないのが私も好きです。
とても視覚的な気もします。そういう点で、オペラ向きなのかもと思ったりもします。
ロラン・ペリーは連帯の娘でもファンタジックで、でもちょっとピリッと風刺を利かせた演出で、とても洒落てました。その時も衣装も担当していたんですが、これもそうなんですね、センスいいなあ。
オレンジの中に人がいるの、ヒエロニムス・ボスを連想してしまいました。
Commented by レイネ at 2010-08-29 03:59 x
straycatさま、プロコ好きがまた一人見つかり、うれしいかぎり。
アシュケナージのCD、わたしも持ってます。ピアノ版「ロメオとジュリエット」もいいですよ!プロコのピアノ曲は、技巧的に非常に難しいし、鋼のような硬質なイメージで美しい。緻密で、確かに情緒が入り込む余地が少ないですね。

来週、ブラーヴァ局でローラン・ペリーの「連隊の娘」@ROHを放映してくれるんです!この人、衣装はいつも自分でデザインするみたいですね。

オレンジの中から出てきて一人だけ助かる王女は、サンドリーヌ・ピオーでした!歌は非常に少ないのですが。
Commented by Mev at 2010-08-30 14:55 x
行進曲ってどんな?と、思いましてYoutubeあさりましたら、作曲家本人の演奏があったので。 http://www.youtube.com/watch?v=mlwYfMU-kkM
この曲聞いたことはなかったんですが、どこかで聞いたイメージがあって。なんだったっけなあと思ったら、ピーターと狼でした。

ひとりだけ助かる王女がピオーだったんですか。でも歌の出番が多くなければもったいないってかんじですよね。
Commented by レイネ at 2010-08-30 15:25 x
Mevさま、プロコ本人による演奏、ご教示ありがとうございます!プロコ・オタクにはマスト・アイテムですね。
プロコ自身が優れたピアノ弾きで、交響曲などの作曲ももちろんピアノで行い、最初にピアノ曲をつくってからという場合が多く、ピアノを弾くものには彼の曲にはピアノという楽器の特性がとことん生かされ、凝縮されてるという感じを受けます。この「行進曲」、2年前に練習したんですが、こんなに短いのにテクニック的には濃い内容で難しいんです。端から端まで鍵盤全てを使う、離れた鍵盤への跳躍が多いし、指10本では足りない、という感じで一人でオケ演奏しなくちゃいけないんです。

ピオーに限らず、歌を聞かせる場面が少ないオペラなんです、これ。アリアらしいアリアなんてなくて。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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別名: didoregina
性別:女性
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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