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テレマンの「ピンピノーネ」   超レア・バロック・オペラ

コンサートやオペラのシーズン・オフ(夏枯れの期間)は、有名なフェスティヴァルの高額チケットを
買うという気力も財力も持ち合わせない者には、TV放映されるオペラ鑑賞がチープで楽しい娯楽だ。
ブラーヴァという音楽(特にオペラ)専門のデジタルTV局が、契約しているプロヴァイダーのレギュラー
パッケージに再び入ったのは、喜ばしいことである。
この局は、週7日24時間ぶっ通しで、様々なオペラを見せてくれるのだ。(再放送も多い)
それで先週は、ヘンデルの「タメルラーノ」の素晴らしいプロダクション以外にも、プロコフィエフの
「修道院の結婚」(ゲルギー指揮マリインスキー・オペラ、ネトレプコ出演)その他を鑑賞できた。
その中でも特記すべきは、テレマンのオペラ・ブッファ「ピンピノーネ」の放映だ。

Pimpinone by Georg Philipp Telemann @ Fifteen Amsterdam

Combattimento Consort Amsterdam
conductor:Jan Willem de Vriend
stage director:Eva Buchmann
Vespetta: Julia Neumann
Pimpinone: Marcel Boone
chamber maid: Claudia Patacca

テレマンのオペラなんて、めったに上演される機会はないだろう。
そして、この短い喜劇オペラは、もともとヘンデルの時代ハンブルク歌劇場で「タメルラーノ」が上演された
時、インテルメッツォとして幕間に上演された作品なのである。その2作品を2日続けて放映したところに
ブラーヴァというTV局のこだわりが感じられる。
インテルメッツォというのは、丁度、能に対する狂言みたいなもので、登場人物は最小限の短くて滑稽な
喜劇オペラである。

あらすじは、聡明で美しい若い女ヴェスペッタが、年寄りで金持ちのピンピノーネに近づいて、最初は
女中として雇われるが、その魅力を発揮して奥方の座を勝ち取り、金と自由を手に入れて遊び放題、
わがまま女房の尻に敷かれるダメ亭主に成り下がったピンピノーネはため息をつきつつ家事を担当、
というもの。まるでペルゴレーシの「奥方女中」そのままのストーリーだ。当時流行った喜劇テーマらしい。



貼り付けた動画は、2008年8月に音楽ホール Muziekgebouw aan het IJでの上演。

わたしが見たTV放映版は、2009年5月のもので、ヴェスペッタ役だけ違う歌手だが、同プロダクション。
しかし、この「ピンピノーネ」は上演ロケーションが意表を突いていた。
ジェイミー・オリヴァーのレストラン「フィフティーン」@アムステルダムの中、壁際でオケ(コンバティメント・
コンソート・アムステルダム)が演奏し、客席はレストランのテーブル配置そのままで、その隙間で3人の
登場人物が家事をしたり料理したりしながらオペラを歌い演じるのであった。

客席のテーブルには、グラスやカトラリーのセッティングが整ってる。
あれ、と思うと、はたして喜劇のそのまた短い幕間に、レストラン厨房からどんどん料理が運ばれて
くる。その間、オケが優雅な器楽演奏をする。
ヴェスペッタが奥様になってから雇われた別の女中は、客席でパスタやサラダなんか作ったりして
給仕もしてしまう、という具合である。
詳しくは、リンク先の写真を参照されたい。

テレマンといえば、誰もが思い浮かべるのは「ターフェル・ミュージック」だろうから、テレマンのオペラと
レストラン空間、食事しながらの上演、というのは理に適っている。
オペラのストーリー上、台所や食卓が重要な小道具なので、違和感もない。

テレマンの「ピンピノーネ」   超レア・バロック・オペラ_c0188818_19471546.jpg

              ジュリエット・ビノシュ似のユリア・ノイマン

登場人物は、ヴェスペッタ(s)とピンピノーネ(b)と女中(s)の3人だけ。
ヴェスペッタ役のユリア・ノイマンは、ちょっと女優のジュリエット・ビノシュに似たキュートな味のある
ルックスで、コケットな表情の演技も上手い。声も軽くてすっきり、こういう軽いオペラにぴったりで
好感度が高い。モーツアルトのオペラに向いていそう感じだ。
バリトンのマルセル・ボーネもコミカルな演技で見せるし、歌もいい。

歌といえば、このオペラではイタリア語とドイツ語がちゃんぽんになっている。最初はイタリア語で
歌っていたのに、レチタティーボはドイツ語。そのうち、歌もドイツ語になったり、またイタリア語に
なったり、レチタティーボの掛け合いもちゃんぽんになったりで聞いてるほうは混乱するが、これが
当時の流行だったので観客は当然のように思って聞いていたようだ。

こういう洒落たプロダクションでテレマンのレアなオペラを鑑賞できたのはうれしかったし、その
意外な楽しさに驚かされた。
by didoregina | 2010-08-23 13:07 | オペラ映像


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


by didoregina

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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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