対照的な2歌劇場の来シーズン演目

ベルギーは、言語的に南北ほぼ真っ二つに分かれている連邦国である。北がオランダ語(フラームス)圏、南がフランス語(ワロン)圏、首都ブリュッセルは、言語境界線上の真ん中に位置し2ヶ国語地域となっている。
ゲルマンとラテンという対照的な言語・文化・性格によって一国が分割されているから、悲喜こもごも様々な問題を抱え、隣から見るとなかなか面白い国である。政治的のみならず、オペラの世界も真っ二つに両断されているのだ。

フラームス圏の中心地アントワープおよびゲントを拠点とするフラームス・オペラ(フランダース・オペラ)と、ワロン圏の中心であるリエージュの王立ワロン歌劇場(ORW)の来シーズン演目を見比べるだけでも、その違いは一目瞭然である。


まず、フラームス・オペラから。

カイヤ・サーリアホ  「彼方からの愛」  
フィンランド人女性作曲家現代作品という希少性。演出はシルク・ド・ソレイユのダニエル・フィンジ・パスカ。

モーツアルト 「後宮からの脱出」

ロッシーニ  「セミラーミデ」

マスネ    「エロディアード」

シュトラウス 「影のない女」

モンテヴェルディ  「ウリッセの帰郷」
先日鑑賞した「ジャゾーネ」でも棒を振っていたサルデッリの指揮。

ヴェルディ  「アイーダ」 コンビチュニー演出!


そして、ORWは、以下の通り。 

ヴェルディ  「仮面舞踏会」

モーツアルト 「魔笛」

プッチーニ  「ラ・ボエーム」

ビゼー    「カルメン」 ホセ・クーラ再登場!

バルダッサーレ・ガルッピ「L'inimico delle Donne」
バロック後期または古典派のオペラらしいが詳細不明。アレッサンドリーニ指揮。主役はアンナ・マリア・パンザレッラ。

ロッシーニ  「セヴィリアの理髪師」 スミ・ジョーがロジーナ、アライモがフィガロ。

ヴェルディ  「オテロ」 ダニエラ・デッシとアルミリアートのコンビ。

シュトラウス 「サロメ」 ジューン・アンダーソンが主役。


どちらの歌劇場も、イタリアものを中心にフランスものにシュトラウスとモーツアルトを配したオーソドックスな演目である。バロックは一つずつと少ない。
フラームス・オペラの方は、歌手に有名人は持ってこれないかわり、演出で勝負のようだ。ちょっとだけヒネリを入れて、おしゃれな若年層開拓を狙っているような気がする。
ORWは、相変わらずのジジババ好みのマンネリ路線だが、盛時を過ぎた有名歌手を色々引っ張り出して客集めを図る。

小国ゆえ、首都から100キロ位しか離れていない地方都市の歌劇場だから、競争には厳しいものがある。しかも、補助金の出所も割り当ても、モネとは比べられないほど、つつましいものだろう。
三者三様それぞれになんとか特色を出して、がんばっているのだ。
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by didoregina | 2010-05-27 09:46 | オペラ実演 | Comments(10)
Commented by Mev at 2010-05-27 22:08 x
なるほど~。ベルギーは都会だなあ。ほんとに。豊かですよね。小さい国なのに。 モネはまたすごそうですけど。 地方でこれだけのだしものを用意できるところに文化の懐の深さを感じます。
Commented by レイネ at 2010-05-28 02:32 x
Mevさま、あと1ヶ月ほどで、こちらにいらっしゃいます?ベルギーは、オランダからみると面白い国で、いろいろジョークの種になってますが、おしゃれ度シックさではオランダは全然かないませんよね。ああ、アムスで食べたベルギーのパン屋のサンドイッチの美味しさが忘れられません。食は文化の基本です!
Commented by アルチーナ at 2010-05-28 11:47 x
なるほど~。
翻って日本はどうか?と考えてみましたけれど、日本は歌劇場そのものが無いんだった!
オペラ団体は沢山あるし、マイナーなものばかりをやっているところもあるのですけれど・・
色々とそれぞれのお国事情というか・・オペラも色々で興味深いです。
そういえば、以前読んだアーツマネジメントの本にはミュンヘンは保守的だと書いてありました。確か演目ではなくてシステムの事についてだったのですけれど・・(あ、それにオペラじゃなくてオケの話だったかも??)未だに定期会員にこだわってるとか何とか・・そういう事って結構演目にも関係あるのかな?とsarahoctavianさんの演目に対する嘆きを読んでいると思ったりします。
Commented by レイネ at 2010-05-28 16:10 x
アルチーナさま、ヨーロッパでは、歌劇は国の文化バロメータの一つとなっているので、オペラの制作・上演にはすごくお金が掛かるのに、公的補助金が大量に投入されてます。だから、首都の歌劇場のほうが魅力ある演目と演出で、いい歌手を揃えることができるわけです。
アーツマネージメントといえば、芸術監督や支配人のカリスマ性、ネットワークの強さ、プレゼン能力などで、補助金額が左右されるから、適材を持ってくるのが大切かと。モルティエの手腕は、いまだにブリュッセルでは語り継がれてます。
Commented by bonnjour at 2010-05-28 19:08
若くて元気のあるフラームス・オペラと、老年ファンを相手にクラシック&無難路線を狙うORWというのが、それぞれの地域の現在の状況を象徴するようですね。

どちらにしても天下り官僚がマネージメントを務めるというトンデモナイ日本の新国立劇場よりは、ずっと適切なマネージをしているのでしょうが。

Commented by sarahoctavian at 2010-05-28 22:46 x
こうしてみると、オペラ劇場ごとに得意分野あるのがよく分かります。伝統的な傾向に加えて、芸術監督の意向というのをヒシヒシと感じてます。ミュンヘンも新しい演目・演出に積極的だと思うんです。でもバロックファンとしてはピーターヨナスが去った後、意地でも二番煎じしまいという強がりじゃないの?などと勘ぐってしまうの。後任としては当然考えられことなんですが・・・。昨秋に学生オペラによる「オルランド・フリオーゾ」を聴きに行ったとき、あそこまで大反響とは期待してなかったのでビックリしました。これは皆さんバロック・オペラに飢えてる・羨望してる証拠だと思いましたよ。
アルチーナさんの保守的な経営というのはもしかしてオケのほうかもしれませんね(私はそのへんのことには詳しくないですが)。つい昨年、ミュンヘン・フィルは常任指揮者騒ぎで内部の泥沼が表沙汰になってました。
Commented by REIKO at 2010-05-29 03:18 x
両方とも、割とフツーの演目の中に、一つだけ「何だコリャ?」的なのが入ってる点で共通してますね。(笑)
今辞典を見たら、ガルッピって112もオペラを書いてるらしい・・・そんなに!?
オペラ・ブッファっぽいタイトルですが・・・。
チマローザ(←こっちのオペラなら多少は有名?)の「前」って感じではないでしょうかね???
Commented by レイネ at 2010-05-29 04:53 x
bonnjourさま、今シーズン、リエージュでのオペラは、例のシャビーな会場にショックを受け、それ以来行っていません。クーラは悪くなかったのに。来シーズンのフラームス・オペラ、う~ん、イマイチ。ORWのほうは、キャストと値段に魅かれていくつか観に行きそうです。(サーカスみたいなテントでやってるから、メチャ安なんです)

オペラは、文化分野での公共事業としては最重要だと認識されてるように思えます、こちらでは。
Commented by レイネ at 2010-05-29 05:01 x
sarahoctavianさま、ミュンヘンの歌劇場は、演出面ではかなり’らしさ’を鮮明に打ち出してると思えますよ。ただ、演目がわたし達の好みとあまり一致しないだけで。。。数年はこの傾向のままで突っ走り、新しい芸術監督就任とともにまた別路線になるんでしょう、きっと。
若い人を引き寄せるには、バロック・オペラが手っ取り早いとわたしは思うのですが。だって、いかにものオペラ・イメージからは一番離れてるし、長いということを除けば、音楽的にはストレートだから聴き易くすんなり入れるはずですから。だから、バロックをやらないというのは、客層ターゲットを若年層に絞ってないということかも。
Commented by レイネ at 2010-05-29 05:10 x
REIKOさま、そうなんです、あまりにフツーの演目ばかりでがっかり。
「アイーダ」なんて全然観たいと思わないオペラの代表で、でもコンビチュニー演出というのには惹かれるし、「彼方からの愛」って、一体どんなものだろうと興味はあります。
リエージュでガルッピのオペラなんて超マイナーなのをやる、何か深い意味があるのかと勘ぐります。きっとチケット売れなくて、叩き売りするんじゃないかと。。。レア好みのわたしは、それを待ってます。


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