Leif Ove Andsnes @ Muziekcentrum

エイントホーフェンのフリッツ・フィリップス・ミュージック・センターでのレイフ・オヴェ・アンスネスのコンサートに行ってきた。
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Schumann: 3 Romances Op. 28
Schumann: Novellette, Op. 21 No. 5
Kurtag: Selection from Jatetok
Schumann: Kinderszenen Op. 15
Chopin: Ballade No. 3 in Ab Major Op. 47
Chopin: Waltz in Db Major, Op. 70, No.3
Chopin: Waltz in cb Minor, Op. 64, No.2
Chopin: Walts in Gb Major, Op.70, No.1
Chopin: Waltz Op. 42
Chopin: Nocturne Op. 62 No. 2
Chopin: Ballade No. 1 in G Minor Op. 23

平日の夜にエイントホーフェンまで行くのは、やはりちょっと無理があった。
なんだかんだで開演までに入場できず、最初のシューマン2曲は聴けなかった。(「ノヴェレッテ」はドアから漏れる音だけ聴いた)

クルタークの曲は、1973年作曲の現代曲のため、アンスネスも暗譜できないらしく、楽譜がセッティングされた。その合間に入場させてもらったのだ。
なんだかとても短い曲が8曲くらい続く。ヘンな不協和音だとか妙なテクニックを強いることがない、割と聴きやすい現代曲である。高踏的でもなく、諧謔的でもなく、風刺的なところもない。
興味を覚え、ちょっと弾いてみたくなった。

楽譜をまた片付けてから、シューマンの「子供の情景」が、その後に続く。
アンスネスの弾き方、指使いを見ていると、なによりも目に付くのはその流麗さだ。余裕のある丁寧さで、アグレッシブだったり派手なハッタリとは正反対なのが、好印象を与える。
大きくて厚みのある手だから、何とも言われぬ温かみがある音が出せる。ビロードのタッチである。
また、重量のかけかたが安定して均整がとれているから、音は粒ぞろいで、聴くほうはゆったりと安心感に包まれる。
そして、グリッサンドのピアニッシモの嫋嫋たる余韻には、心がとろけそうになる。

彼の弾く「子供の情景」は、思い出を慈しみつつ辿るような内省的アプローチで、鮮やかな色彩感覚には欠けるが、こういう静謐な世界もいいなあ、と思った。
思いを内にこもらせて完結しているかのようで、モノトーンのグラデーションがかかった大人の目から見た子供の世界だが、枯淡ではなく、突き放してもいない。なんとも不思議な彼独特の解釈で、聴くほうも内省的にならざるを得ない。

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休憩後は、ショパン・プログラムだ。
まず、選曲からして、いかにも彼らしい。派手なポロネーズやソナタは入っていない。センチメンタルな曲も外されている。派手なテクニックの披露など児戯、名人芸を見せ付けるのも野暮、との確固たるセンスが感じられる。
演奏も、とにかく理知的で、感傷に溺れない。
しかし、それが、冷たく突き放した印象にはならないのは、真摯な態度と技術に裏付けされた余裕が上手くミックスされているからだ。
彼の演奏するショパンは、感情を溢れるままに流出させたり、またはいかにも高揚感を与えようという魂胆のかけらも見えない。
「思索の源泉としての音楽」という言葉が、頭に浮かんだ。

フィリップス・ミュージック・センターの音響には、今まであまり満足したことがない。木をふんだんに使った内装のせいなのか、ピアノのせいなのか、ピアニストのせいなのか、判然とはしないが、硬くて無機質かヒステリックに響く音に、不満が残ることが多かった。ピアノの音色にいちいちイラつかずに聴けたのは、今回が初めてだ。今までの不満の種は、どうやら、ピアニストのせいだったようだ。

拍手はかなり熱狂的に長く続いた。
アンコールは、結構長いバッハとショパンの2曲で、サービス心も旺盛のアンスネスだった。
終演後のCD販売とサイン会も盛況。

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          きっとサイン会があるだろうと思い、雨模様であったが、
          15分くらいで必死になって着物を着た。
          しかし、写真を撮る時間はなかった。
          泥藍大島には、いつも同じ帯を合わせがちなので、今回は
          薄い抹茶色の塩瀬の地に、埴輪のような不思議な絵が
          描かれた帯にしてみた。グリーン好きの母のもので、初おろし。

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          思ったとおり、サイン会があった。
          しかし、カメラを車の中に置いてきてしまった!残念。
          せっかく無理して着物を着て行ったのに、ツーショットが
          撮れなかった。。。
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by didoregina | 2010-02-24 11:29 | コンサート | Comments(6)
Commented by Mev at 2010-02-25 21:24 x
めちゃくちゃかわいい帯ですねえっ!不思議な模様が童話みたいで、ほんと魅力的。
男前のピアニストですねえ~。
Commented by レイネ at 2010-02-26 05:30 x
Mevさま、お褒めいただきありがとうございます。一体何を表現しているのか、童画っぽくもあり、不思議な絵柄です。
アンスネスは、デビュー時から、写真では男っぽいかっこよさを売りにしてますね。この写真はプロが撮影してるから、(実物よりも)美しく撮れてます。
Commented by takataka at 2010-02-27 14:00 x
今回のツーショットは、残念にも取り逃がしたんですネ。

アンスネスは、ボストリッチの伴奏で知った。大人の演奏をする
2枚組のショパンが出ています。(再発売?)
彼のこの写真はあまりにも若い時のものでしょうか。
帯のことは分りませんがメルヘンチックだな。
Commented by レイネ at 2010-03-01 04:24 x
takatakaさま、念願だったアンスネスの生演奏が聴けて大満足です。写真撮れなかったのは残念ですが。彼は、今もこんな顔ですよ。でも修正が入ってるかも。。。
ボストリッジとのCD、わたしも持ってますが、アンスネスのソロも入ってますよね。若さ一杯はちきれるような豪快な演奏ではない、という意味では大人の演奏だといえますね。静謐で蒼い翳のような音に痺れました。

メルヘンというより、なんだかよくわからないけど、母らしい趣味の帯です。。。
Commented by ロンドンの椿姫 at 2010-03-01 10:22 x
2月27日にロンドンのウィグモア・ホールで同じプログラムのリサイタルがあり、アンスネス大ファンの私はもちろんかぶりつき席でうっとりでした。その時のことは近いうちに書きますが、私もツーショットを期待して着物で行ったんですよ。結局色々事情でそれは叶わなかったのですけどね。3月には日本に行くそうです。
Commented by レイネ at 2010-03-01 17:10 x
ロンドンの椿姫さま、ヨーロッパ・ツアーの場合、オランダの後ロンドンというパターンが多いですね。今回も同じプログラムでしたか。
記事アップ、待ってます。
わたしは、ナマのアンスネス初体験だったんですが、好きなタイプのピアニストだということがよくわかりました。(ルックスではなく、演奏スタイルが)
丁寧だけど余裕が感じられる演奏なので、こちらの気分もゆったり。

着物着てたのに、CD販売兼サイン会では、CDの売り子と間違えられたりしました。ずうずうしくアンスネスの脇に控えてたからかしら。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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