Love and Madness 

ヨハネット・ゾマーのヘンデル・アリア集を、前回に書いたような経緯で(サインが欲しいがために)買った。
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ヘンデル・イヤーだった昨年の9月にリリースされたものだ。
皆がこぞってヘンデルCDを出したので、財布は軽いわ、食傷気味だわという最悪のタイミングだった。
しかも、このジャケット写真のイケてなさは、言語道断である。だから、食指は動かなかった。
しかし、コンサート後に、サインしてもらって16ユーロというのは、なかなかお得かな、と心が動いたのだった。

ヘンデル・アリア集は、雨後の筍のようにやたらと出た。だから、なにか、これだと言えるような特色がないと弱いから、財布の紐を緩ますことはできない。
このCDの売りは、バート・シュニーマンによるバロック・オーボエとの絡みである。
このアイデアは、わたしの想像だが、数年前にジョン・ガリヤードの「パンとシュリンクス」を録音した事から派生したのではないかと思う。
ガリヤードは、ヘンデルの同時期の作曲家で、オーボエ奏者としても名高かった。ヘンデルの「テゼオ」には、彼にオーボエ・パートを演奏してもらうため、オーボエ・ソロがやたらと多い。
それが、ヨハネット・ゾマーの頭にこびりついていたのではないか。それで、閃いたのだ、オーボエとの共演でヘンデル・アリア集を出そう!と。(単なる想像。本人に訊けばよかったのに、井戸端会議で終わってしまった)

• Chi t’intende?    Berenice’s aria from ‘Berenice’
• Morirò    Medea’s aria from ‘Teseo’
• Concerto a quattro
• Lascia ch’io pianga    Almirena’s aria from ‘Rinaldo’
• Oboe concerto in G minor
• Ah! Spietato    Melissa’s aria from ‘Amadigi’
• Cantate fragment ‘Languia di bocca lusinghiera’
• Dolce riposo    Medea’s aria from ‘Teseo’
• Io sperai    Bellezza’s aria from ‘Il trionfo del Tempo’
• Scherza infida!    Ariodante’s aria from ‘Ariodante’
• Cantata ‘Mi palpita il cor’ - Adagio/Aria
• Introduzione from cantata ‘Delirio amoroso’
• Caro, vieni a me    Costanza’s aria from ‘Riccardo Primo’

タイトルに「愛と狂乱」とあるのは、選んだ曲の歌詞を読むかぎり、激しい内容なので納得できる。
しかし、オーボエという楽器には、どうも狂乱のイメージは合わない。ほのぼのと牧歌的雰囲気の音色だと思う。

「テゼオ」から、メディアのアリアが2曲収録されていて、オーボエとの絡みもあるから、これが目玉であろう。
しかし、ヨハネット・ゾマーのノン・ヴィヴラートの高音で歌われると、いかんせんドラマチックではないので、禍々しい毒婦の印象を与えない。頭に浮かぶのは、清らかな天使である。だから、かえって、この2曲が一番弱かった。あんまり音量を大きくして聴くと、キンキン響いて不快になるほど。
それよりも、カンタータや「アマディージ」のメリッサのアリア、「リチャード1世」からコスタンツァのアリアのほうが、役柄に無理がないから、ずっと自然で、聴いていて違和感がない。

それから、「リナルド」から、お決まりの「わたしを泣かせてください」。
いつも不思議に思うのだが、女性歌手のヘンデル・アリア集では、これが漏れていることがない。
必ず収録すべし、とでもいう不文律でもあるのだろうか。
よよ、と泣き崩れる、か弱き深窓のお姫様の歌声、という感じで、バルトリ姐とか、マレーナ様とか、サラ様とか、その他の歌手による怨念あふれる嘆きとは、異なるアプローチである。

それから、「アリオダンテ」から、「不実な女よ」。
これも、超有名曲だから入れるべし、とプロデューサーが言い出したからか?
ゾマーのようなストレートに純粋古楽系のソプラノで歌われると、恋人の不実をなじる男の強さも嘆きも感じられない。きれい、きれいに終始した悲嘆調なので、まるで我が子を失った母親の歌のように聴こえるのだ。

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「愛と狂乱」というタイトルに惑わされると、がっかりするかもしれないが、ゾマーの声でヘンデルが聴けたので、許そう。
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by didoregina | 2010-02-03 13:03 | CD | Comments(10)
Commented by sarahoctavian at 2010-02-04 01:16 x
ヘンデルアリア集ってほんっと多いので、皆さん何か奇抜なテーマはないかと頭を悩ましてますよね。私はいい気になって買いこんで失敗した例が何度もあったから、すぐに飛びつくのはやめにしようと心に言い聞かせてるわ(笑)。かといって、オペラ全曲3枚組なんて高いし、下手すると間延びして寝ちゃうし(汗)・・・。
で・・・?ヨハネットさんは教会系のお声なの?ショル兄(もそうだと私は思ってる)と受難曲歌うんでした。あれ、どうやらチケット売り切れみたいよ~。最後の望みはゲネプロだ。
Commented by レイネ at 2010-02-04 01:52 x
sarahoctavianさま、よっぽどお気に入りの歌手とか、めったに聴けない選曲じゃないと、ヘンデル・アリア集はなかなか、ね。CDが多すぎる。ミヤ様のはアルトってのが珍しいし、ボストリッジ博士のテノールも捨てがたくて買いましたが。あと、チェンチッチの新譜は、聴いてみたい気がします。

ヨハネット・ゾマーは、バッハのカンタータでいろいろ参加してる、教会系の声です、まさに。ミュンヘンの「ヨハネ」売り切れですか、やっぱり。わたしは、なんとか彼女が歌う日に行こうと思ってますが。(オケも指揮もその他の独唱者も違うけど) だめもとでゲネプロに、ぜひ行ってみてください!
Commented by REIKO at 2010-02-04 02:34 x
確かにヘンデル・アリア集って、いざ録音となると、簡単なようで難しいんでしょうね。
音域や声質、キャラクター?などの向き・不向きに加えて、(売れ行きも気になるから)できれば「あの曲」は入れたほうが・・・みたいな算段も必要だし。
このCD、去年から気にはなってるのですが、SACDのために値段が高くって・・・。
最近、こういう新商品が結構あるので悩ましいです。
CDの値段が下落してるので、少しでも付加価値?をつけて、高いものを売ろうとしてるのでしょうけど。
SACDよりも「サイン付き」の方が、まだ付加価値としては歓迎だわ~♪
Commented by sarahoctavian at 2010-02-04 03:59 x
何々?チェンチッチの新譜!?ボーっとしてました。出るんですねっ。ドイツリリースは2月26日だ~。情報ありがとうございます。これは買うかも・・・チェンチッチはやはり気になるCTですし。。。そういえば彼のヘンデルアリア集はまだ出てませんでした。
Commented by アルチーナ at 2010-02-04 14:32 x
一概には言えないですけど、ビロードのような声はいいですよね~と
ツェンチッチの名前も出ているし、勝手にそういう方向だと・・ゾマーもそうではなかったでしたっけ?
ティム・ミードもビロード系なので好みです。アリア集を出してくれたら欲しいかも?と思いましたよ!図書館で「リチャード1世」を借りて聴いてみた所では・・

このCD,送付しましたというメールが昨晩、届きましたので楽しみにしています。そういえば「不実な女よ」もyoutubeで見かけたサラ様のバージョンもなじるという感じでなくて、呆然としているような様子で、それも又とても良かったですね。
Commented by レイネ at 2010-02-04 17:39 x
REIKOさま、メゾばかり気にかけてたし、出てるCDも多いと思うので、ソプラノというのは意外と盲点でした。声質から、彼女は絶対、天使・お姫様・マリア様系キャラなので、狂乱のアリアというのは、ちょっと違和感があります。収録のイタリア語カンタータは、合格です。全体的に、算盤使ってよーく考えて選んだような、収録曲目ではあります。
お安くなったら、お求め下さい。

サインは、丁寧な字で「よろしくね。ヨハネット・ゾマー」と、よく読めます。
REIKOさんも、ルセとのお宝ツーショット、お持ちでしたね!
Commented by レイネ at 2010-02-04 17:45 x
sarahoctavianさま、わたしもチェンチッチの新譜のこと、REIKOさんの「ヘンデル何でも掲示板」で知ったんですよ。まだまだ、出ますね、ヘンデルCD、無尽蔵の金鉱か。。。
パリで、チェンチッチのロッシーニ・アリア集が安くなってたけど、なんだかゲテモノっぽい匂いがしたので買わなかった。彼のヘンデルは、聴きたいです。
Commented by レイネ at 2010-02-04 17:54 x
アルチーナさま、教会古楽系の声で、オペラ・アリアを歌われると、高音聴くのがちょっとしんどいと思うことがありますが、このCDの数曲がまさにそれ。
彼女の声質・個性と選曲がイマイチうまく合ってない気がしました。
ティム・ミードいいですね!「リチャード1世」では、ローレンス・ザゾを食ってました。
プレスト・クラシカルは、名前にたがわず迅速です。

そういえば、藝大「アリオダンテ」のあの場面でも、サラ様動画に似た、演歌っぽい演出でしたね。18世紀の演歌なんだから、ファド歌手かだれかが、現代っぽいアレンジで歌ったら面白そうだわ。
Commented by アルチーナ at 2010-02-14 14:49 x
数日前にCD届きました!
ああ!もの凄い勘違いをしていて・・ゾマーはビロード系ではないですよね。でも本当にキレイな声です。
確かに選曲はあっていないような気がします。
CDのデザイン、ジャケットもそうですが、CD面に印刷されたビジュアルもかなりなモンですね。

あ、そうそう、ドリス・デリエの『アドメート』、画質、音質は保障できませんが、ご興味あれば、DVDに焼きますよ!
何かあればご遠慮なくおっしゃってください。
Commented by レイネ at 2010-02-14 17:31 x
アルチーナさま、そうです、薄絹系とでも申しましょうか。低音部を甘い声で歌うとビロード系にも聞こえますが、このCDでは、薄絹を切り裂くような感じ。。。
いかにもオランダ的で、スナップ写真は全然構えない生を撮っちゃうみたいな傾向ですね、
注文した新譜Endless Tearesが、イギリスでは版切れ(?)でまだ届きません。これは英語で歌うパーセルなどですから、ゾマーの声質に一番合ってると予想するんですが。

「アドメート」DVDに焼いてくださるって、本当!?4月中旬に里帰りの予定なので、グッド・タイミングです。お願いしちゃいます。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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