カーティス指揮オランダ・バッハ協会のコンティ「ダビデ」

このところ着物関連記事ばかりなので、ブログ名は偽りか、との疑念を抱かれても仕方がない。
しかし、ようやく、今年初めてのコンサートに昨晩行ってきた。
コンティのオラトリオ「ダビデ」という出し物は、新春にふさわしいのかどうか分からないが、期待は大きかった。
なにしろ、今シーズンは極める!とマークしたヨハネット・ゾマーが出て歌ってくれるのだ。
コンティの音楽も、実演にめぐり会える機会は少ない。それが、今シーズン終わりごろには、DNOもコンティのオペラを取り上げる。ちょっとしたリバイバルというより、このように日の目を見るのは初めてかもしれない。

c0188818_19231447.jpgFrancesco Bartolomeo Conti
(1682-1732)
- David
Azione sacra per musica
De Nederlandse Bach-
vereniging koor en orkest
Alan Curtis  dirigent
Yuri Minenko  countertenor
(David)
Matthew Brook  bariton (Saul)
Anna Maria Panzarella  
sopraan (Micol)
Johannette Zomer  sopraan
(Gionata)
Cécile van de Sant  alt (Abner)
Marc Pantus  bas (Falti)

初めて聴くコンティのオラトリオだというのに、全く予習をせずに出かけてしまった。
これは、大失敗。舞台上に字幕が出ていないのだ。何を歌っているのか内容意味不明である。
また、コンサート形式だから、各自私物の衣装を着ているため、役柄がどうもよく分からない。
しかし、プログラム・ブックには歌詞対訳が出ているから、それを読みながら聴いている人が多い。彼らは、オランダ・バッハ協会のやり方に慣れている通に違いない。
近くに座っていた知り合いもこれにはあせって、休憩中に急遽プログラムを買い、必死になってあらすじを読み、わたしたちに内容を説明してくれた。そのせいで、彼女はせっかくの飲み物を飲む暇がなく、大半を残したまま、後半開始のベルに急き立てられ座席に戻る羽目になった。

休憩中の泥縄式学習で知った驚異の事実は、こうだった。なんと、ヨハネット・ゾマーはソプラノなのに男役なのだった。道理で、黒のパンタロンに黒白太縞のブラウスという、きりっとボーイッシュな衣装だったのだ。このストライプは、ヴァチカンのスイス衛兵が着ている制服を連想させたので、イメージ的には当らずともいえども、遠からず。

男性歌手は、特に、バスの二人が上手い。特に、サウル王役の人は、顔だけでも感情表現が出来るほど表情豊かで、嫉妬心から疑心暗鬼のサウルとしての説得力がある。
しかし、主役のダビデは、特に前半は弱かった。可愛いとか、女っぽい感じの声質ではなく、かといって男性的でもないから、少年イメージのつきまとうダビデ役には向いていそうなのだが、際立つものがなく、聴衆を唸らせるにはいたらなかった。声も歌唱も個性に乏しく、印象に残らないのだ。
女性歌手では、ソプラノ二人が上手かった。金髪ショートカットで歌い方にも少年ぽさを出しているヨハネット・ゾマーと、赤毛でおばさんっぽい声とルックスのアンナ・マリア・パンザネッラとは、好対照でキャラクター的にいい組み合わせである。
アルトは、全く低音の魅力を感じさせず、この人一人のレベルが低く、足を引っ張る感じだった。

指揮のアラン・カーティスは、マリヤーナ・ミヤノヴィッチ(!)とシモーネ・ケルメス(!!)を歌手に迎えて、「ダビデ」CDを出している。
「この作品を選んだのは、傑作であることに疑いの余地がないからだ。」と豪語しているカーティスだから、作品への惚れ込みようには念が入っているはずだ。もう、コンティの「ダビデ」といったら、彼以外取り上げる人もいないから、一人勝ちのエキスパートだ。
しかし、その指揮ぶりは、淡々としたものだった。白髪のかなりの長身で、堂々とした姿勢も立派で、崩れない。淡々としたシンプルな指揮ぶりでオーバー・アクションとは無縁である。
全体的になぜか(似非)貴族的な雰囲気が漂う。昨晩はその理由がわからなかったが、今、それがなぜかに思い当たった。ヴィスコンティの映画「山猫」のバート・ランカスターそっくりなのだ。口ひげの感じが似てるし、どちらも、貴族っぽさを演じてる様子がどうも胡散臭さを感じさせる。

オランダ・バッハ協会のオケの面々は、きりっと引き締まった音を出す。それが、カーティスの指揮によって引き出されているとは感じられず、彼ら本来のやり方で、いつもどおりに演奏している感じだ。好感が持てた。
アンサンブルはしっかりしているし、全体的に気負いがなく、それでいて、びしっと決まるところは決まっている。先鋭的ではないが、そうかといって濃厚でもなく、だれてもいない。

コンティの「ダビデ」では、トロンボーンとテオルボが効果的に使われる。コンティ自身がテオルボ奏者出身だから、竪琴の代わりに、テオルボを爪弾くのが、ダビデのかきくどくアリアの伴奏になる。サウル王の心を和ませるというクライマックスにこれを持ってくるところが、コンティの作曲家としての面目躍如である。
全体的に曲調がさわやかで、飽きない内容のオラトリオだったし、ヘンデルの「サウル」と対になる名曲と言えるかも知れないと思った。予習しなかった代わりに復習として、CDを買おうと思う。

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by didoregina | 2010-01-21 12:33 | バロック | Comments(14)
Commented by Mev at 2010-01-21 22:46 x
魅力的なコンサートですねえ。バッハ協会のサイトみてみたら、パンフレットが載っていて、表紙がダビデ像で、これもまたよさげ。

そうそう、イースターにマタイ受難曲にいったとき、聴衆のほとんどのみなさんが歌詞を広げて見ながら聴き入っていたのを思い出しました。
Commented by sarahoctavian at 2010-01-22 00:08 x
来月バイエルン放送交響の定期公演(マレーナ様絡みで検索中に発見)でショル兄・マークパドモアそしてヨハネット・ゾマー他という顔ぶれでヨハネ受難曲があるのよ~。うっ行きたいっと思ったのに、オンライン予約サイトに「ただこのコンサートはチケット購入できない状態です」と出てる。売り切れってことなのかどうか不明。
ところで・・アランカーティス=バートランカスター@山猫って納得です。いろんなバロック系CDでお馴染みですよね。ワタシはカサロヴァのヘンデルアリア持ってる(が、あれは買って失敗作で、もう聴く気になれないのよ)。マリヤーナ&シモーネ姐のは気になるなぁ。このところまた欲しいCDやDVDのリストが長くなりつつあります。
Commented by レイネ at 2010-01-22 01:00 x
Mevさま、速攻のコメントありがとうございます。
オランダ・バッハ協会、コンサートだけでなく、本やCD販売にもがんばってます。コンサート会場のロビー特設コーナーでいろいろ売ってるから、びっくり。思わずクリストフ・ウルフとトン・コープマン共著の「バッハ・カンタータの世界」という分厚い本を買ってしまいました。たったの9ユーロよ!また、サイトから、「美術・音楽・文学に登場するオルフェ」という豪華(?)本が、送料込み7ユーロで買えるので、注文しようと思います。
Commented by レイネ at 2010-01-22 01:09 x
sarahoctavianさま、ミュンヘンで「マタイ」コンサートがあること、ヨハネット・ゾマーのサイトで知ってましたが、ショル兄とマーク・パドモアも出演とはびっくり。指揮はトン・コープマンだし、このメンツは凄すぎ!3日間あるから、売り切れってことはないような気もしますが、どうなんだろ。。。カトリックのミュンヘンでも、受難曲はポピュラーなの?とにかく、トライしてください。2月24日は13時から公開ゲネプロだそう。これ狙うのもいいかも。
コントラ・アルトのマリヤーナ様のダビデって、よさそうだし、シモーネ姐との絡みも興味津々。
Commented by アルチーナ at 2010-01-22 10:31 x
オランダ・バッハ協会のサイトを開いたら突然流れてくる曲が『ダビデ』の中の1曲なのかしら?特に書いていなかったのでワカリマセンがそうだとしたら、ドン・キショット(これも1曲聴いただけ・・)共々結構聴きやすくて素敵そうですね、コンティ。
カーティスは珍しい演目を結構取り上げているんですね。
いつ出るのか分からないのですがヘンデルの『ベレニーチェ』は買う予定です。
あ、そうそう・・ゾマーのCDって結構高いんですよね・・そちらではどうですか?
Commented by sarahoctavian at 2010-01-22 15:09 x
受難曲コンサート、ミュンヘンでも結構多いです。そう、私もゲネプロに注目してるの。ちょうど水曜の昼過ぎは都合も良いし・・ね。でも、どうもチケット販売インフォがあいまいで、一方で「反響大につき目下販売不可」とあるかと思えば、別のボックスオフィスには「ゲネプロは当日一時間前から会場窓口のみ販売」とあり。何なの~?問い合わせしてみなければ。。。とにかく、顔ぶれが凄いので期待薄です。気づくのが遅すぎ。
Commented by レイネ at 2010-01-22 20:49 x
アルチーナさま、そうです、「ダビデ」の曲です。初めてのコンティですが、今回のオラトリオ、気に入りました。ソロやオブリガート部分の器楽の扱い方が変わっていて、けっこうはまります。ヴィヴァルディよりよっぽど、聴きやすい。
カーティスは、ミヤノヴィッチと組んでるCDが多いのね。。。

ヨハネット・ゾマーがCDを主に出してる、Channelというレーベルの商品が、今月28日まで、イギリスのオンライン・ショップで20%オフです。新譜でも12ユーロくらいになるので、大人買いしちゃいます!www.prestoclassical.co.ukをご覧下さい。
Commented by レイネ at 2010-01-22 20:54 x
sarahoctavianさま、「マタイ」じゃなくて、「ヨハネ」でした、この豪華メンバーのコンサートは。とにかく、問い合わせてみてね。人気爆発でチケット・ゲットは困難かしら。ゲネプロが無理だったら、本番のほうにもトライしてください!
Commented by アルチーナ at 2010-01-27 09:35 x
お返事送れて申し訳ございません・・
イギリスのサイト、拝見しました。フランコ様が優勝したコンクールのCD&DVDも見かけて心が揺れ動いております・・
『パンとシュリンクス』もゾマーだったのですね!
コンティの『ダヴィデ』も気になりますが、両方ともそれ程日本と値段が変わらないようなのでそちらは今度に譲ろうかと・・色々と思案中でございます。もうあと1日しか残っていないのであとちょっとだけ悩んでみます・・
本当にありがとうございます!!
Commented by レイネ at 2010-01-27 16:52 x
アルチーナさま、このオンライン・ショップは、新着情報が素早いのと、送料込みでもオランダよりずっと安いのと、発送が迅速なのでよく利用してます。
28日までのセールはChannelですが、いつでも何か期間限定のセールをしてます。それでつい買ってしまうというわけで。。。

コンティ「ダビデ」は、オランダ・バッハ協会のコンサートでも売ってましたが、高かった。2枚組み22ユーロは、まあまあかと。ヘンデル「テオドーラ」は、3枚組み32ユーロで、ビミョーというか、やっぱり高いわ。
Commented by アルチーナ at 2011-10-01 11:08 x
ユーリ・ミネンコで検索したら、ここに辿りつくましたよ!!生で聴いてらっしゃるんですね!でも・・印象が薄かったようですね、うむ~・・
Commented by レイネ at 2011-10-01 11:19 x
アルチーナさま、ユーリ・ミネンコって一体誰って感じですが、何か?例の若手CTオンパレード企画に参加してるんでしたっけ?たまたま、わたしが聴いたときは調子が悪かったのかもしれませんが、CTってナマで聴くとがっかりすることが結構多いような気がします。
Commented by アルチーナ at 2011-10-02 21:20 x
あ・・スミマセン・・携帯で見つけたので忘れないうちにコメントしようと・・言葉が足りませんでした・・そうですそうです。ヴィンチの『アルタセルセ』に参加するCTです。
youtubeのCara sposaが良いんじゃない?っておっしゃってたので・・
確かに・・・CTは色々と難しいですね・・
先日、ようやlく『聖アレッシオ』を見て、なかなか良いCT多いじゃない?とも思ったのですがチェンチッチも意外と声量無さそうでしたし・・CTばかりだと兎も角、他の声種の人が混じった場合にどれだけ訴求力があるのだろうか・・など、色々と考えてしまいますね・・
Commented by レイネ at 2011-10-03 00:21 x
アルチーナさま、そうそう、貴ブログでご紹介の動画に、「このロシア人CTなかなかよさそう」とコメントしたのを思い出しました。しかし、実際に聴いていたとは。。。よっぽど印象が薄かったのね。。。

コンセルトヘボウでの『スザンナ』では、チェンチッチは明らかに不調でした。でも、声は生ものなのだし一期一会なので、来年、懲りずにチェンチッチ主演の『ファルナーチェ』聴きに行きます!bonnjourさんは、一足お先にパリで観賞されたのでしたっけ?


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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