サラを見た

昔は、50歳を超えたら長生きの部類に入ったので、オランダでは、今でも50歳の誕生日は盛大に祝う。日本で還暦を祝うというのと、少々似ているかもしれない。

そして、50歳の誕生日を迎える人は、男性ならアブラハム、女性ならサラ、と呼ばれる。
神の恩寵を受け非常に長生きした、聖書に登場する夫婦である。
20年位前まで、わたしは(そして多分大部分のオランダ人も)、50歳=長生き、の象徴としてアブラハムとサラの名前を使い、長寿のお目出度さにあやかるのだと思っていた。しかし、この命名には、聖書に基づいた故事成語成り立ちの背景があるのだ。

ヨハネによる福音書8. 56に、ユダヤ人たちとイエス・キリストとの論争が書かれている。
様々なことを見てきたように堂々と話すイエスに対して、ユダヤ人たちは「あなたは、まだ50歳にもならないのにアブラハムを見たのか」とつっこんだ。

ここから、50歳になったら、アブラハムを見たと堂々と言ってもいい、というこじつけ解釈につながり、さらに、50歳の誕生日の人はアブラハム本人になっちゃうというふうに、変遷していったのだ。
サラは、アブラハムの妻だったので、女性で50歳になった人はサラと呼ばれる。このこじつけもまた凄い。

とにかく、友人Cがめでたくサラになった。
お誕生パーティ会場は、偶然ながら、主人が月に一度料理を習っているイタリア料理店であった。

総勢60~70人くらい集まったと思う。
夜8時からなので、テーブルに着席して食事が供されるわけではない。
しかし、飲み物はふんだんに振舞われ、立ったまま一口で食べられるイタリアンのつまみがいろいろ出てくる。例えば、リコッタを茄子の薄切りグリルで巻いたものとか、ガンバの串焼きとか、イタリア風フィッシュ・ボールとか、大判トルテリーニの揚げたのとか、チーズと葡萄ストロープの乗っかったトーストとか、、、、
自分で好きなものを取るビュッフェ形式でなく、こういう風に、一口で食べられるものや、小皿に乗せてフォークだけで食べられるものを給仕が配っていく、というのが最近のパーティの傾向である。

友人8人で200ユーロ分のプレゼントを贈ることにした。
親しい仲なので、お金は水臭い。劇場や映画やレストランや本屋の金券は、もらってうれしいものである。しかし、今回のサラは病気が重いため、外に出るのが難しいから、金券を贈っても使う時を逃しそうである。それで、全権を任せられたわたしがCDとDVDのセットものをどーんと選んだ。
モンテヴェルディのオペラ全集CD8枚組み、モーツアルトのダ・ポンテ3部作DVD4枚組み、音楽史講義CD11枚組み、名画解説DVD9枚組みで、いったい合計何時間分になるんだろうという代物である。

サラからのじきじきのお願いでもあったから、ひどい降りの雨で、積もった雪がびしょびしょに溶けているという最悪の天候にもかかわらず、着物で出かけた。例のごとく、皆さんに好評だった。

c0188818_19463870.jpg

    黒の泥染め縞大島に、弁慶格子柄(ギンガムチェック)の大島の長羽織。
    帯はK子さんのお母様から譲られた臙脂の紬地。
    半襟と帯締めの色をクリーム色で合わせてみた。

c0188818_19501585.jpg

    先日、お土産にいただいたあめ色の簪を挿した。
    大島に大島の組み合わせだと、長羽織の艶っぽさが出ないが、
    唯一持っている長羽織であるから、致し方ない。
    未使用の新古品、ジャストサイズをネットで購入したもの。
    格安だったが、着物雑誌によく出ているメーカーのタグ付き。
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by didoregina | 2010-01-17 11:59 | 着物 | Comments(10)
Commented by Mev at 2010-01-17 22:12 x
人生50年というのはかつては日本だけではなくて、キリスト教国もそうだったのですね。
半襟と帯締めのクリーム(ちょっとオレンジがかってみえますが)のアクセント、好きです~。格子柄の大島、どこか懐かしい。昔持っていた童謡絵本で「あめ、あめ、降れ、降れかあさんが~」のおかあさんが蛇の目を息子にさしかけていた姿が、そのような長羽おりであったような記憶が。
Commented by ロンドンの椿姫 at 2010-01-18 01:01 x
今年も順調な着物お出掛けのスタートされてますね。私は悪天候にめげてまだ一度も着てません。12月もゼロだったし、今年は極端に少ないかも。レイネさんのようにお友達に是非着物でとお願いされたら無理して着るんですけどね。お召しになってる弁慶格子柄、私大好きです。そう言えばロンドンでご一緒した時に私が着ていた赤白格子も似てますね。
レイネさんの染め直しの道行も素敵です。今仕事が忙しくて着物で出掛ける余裕のない私の分まで頑張って着物お召しく下さいね。
Commented by レイネ at 2010-01-18 01:13 x
Mevさま、50歳になった人の家の前に、アブラハムやサラの等身大の人形が飾ってあるのを、オランダでよく見ませんでした?他の国・地方ではどうなのか知りませんが、この辺りでは、けっこう盛大に祝います。

「あめ、あめ、降れ降れ」の挿絵は、きいちのぬりえの蔦谷喜一の絵みたいなイメージですね。たしかに、弁慶格子の長羽織が出てきそうです。蛇の目傘、欲しいけど、日本から持って帰りにくいのが難。
Commented by レイネ at 2010-01-18 01:22 x
ロンドンの椿姫さま、今月はあと2,3回、着物でコンサートに出かける予定です。姫の分もがんばって着ますね。
そうそう、赤白の弁慶格子のお着物は、レトロ・モダンでとてもキュートでした。浮世絵で歌舞伎役者がギンガム・チェック柄を着てるのを見て、おお、ポップでいい!と思ったものですが、江戸の町人っぽい柄とも言えますね。

来月の手術を控えて、お仕事の調整が大変でしょう。くれぐれも、ご無理をなさならいよう、お体をいたいつつ、オペラにお出かけくださいね。
Commented by アルチーナ at 2010-01-18 10:12 x
柔らかいモノトーンに帯と髪飾りの赤がとても素敵です。

50歳の男女をアブラハムとサラと呼ぶのはオランダだけなのでしょうか?確かにこじつけですね・・でも、こじ付けなら日本も負けていないですね。
あ、そういえば、先日教えてくださったサイト、見ました。
浴槽をぶった切って椅子に変えたものが気に入りました。
面白いものを教えていただき、ありがとうございました。
Commented by straycat at 2010-01-18 10:21 x
大島の長羽織ですか、大島のコートならよく見ますが羽織でもOKなんですね。身体に沿うというよりちょっとパリッとした感じになるんでしょうか。先日の道行きもそうですが、丈が長いと結構防寒にもなるんでしょうね。

臙脂色の帯は、更紗風?結構赤が勝ってて若々しいですね。今日のコーディネイトは先日の「オーソドックス&はんなり系」とは又違った、大胆でカジュアルな感じがプライベートなパーティーにぴったりですね。
Commented by alice at 2010-01-18 15:11 x
大島の長羽織、あまり見かけませんが、さらっとした感じが現代的で素敵ですね。

私も結婚のとき持ってきた雨ゴートが臙脂と鴇色の弁慶格子で、大好きなのですが、雨の日はあまりきものは着ないので、ほとんど箪笥の肥やしになっています。

長羽織は一枚だけ持っていますが、薬草染(何の薬草か忘れましたが)という珍しい綸子地です。これもなかなか着る機会がありません。今年こそは着なくちゃ~です。

最近ネットのきもの市場を覗いては眼の保養をしています。
そして・・・つい、指が滑ってしまいました。お安いのでそれなりなのですが、出来上がりが楽しみです。

50歳のサラが羨ましい年齢になりました。70歳を目前にすると、きものを楽しめる時期も限られてきましたから、高価なきものは卒業。(と自分に言い聞かせる 笑)
Commented by レイネ at 2010-01-18 20:32 x
アルチーナさま、お褒めいただき、ありがとうございます。
50歳になった人をアブラハムとサラと呼ぶのは、オランダ独特なのか、割とキリスト教国では一般的なのか、知りたいです。

廃品利用してオブジェ・アート、家具や照明など、実用的なものを作ってるのに感心しました。しかも、いずれも美しく、センスよく出来てるわ。
Commented by レイネ at 2010-01-18 20:41 x
straycatさま、1年半前に大島にハマリ、大島にやたらと目が向いてた時期にネットで見つけた羽織です。
長羽織本来の女性らしい優雅な雰囲気が、大島では出ませんね、やはり。つるりと薄く、パリッとしてるので。
ほっこりした結城の着物には、この質感が合いました。真綿の紬に羽織ると丁度いい感じ。
大島は着易く、大仰でないカジュアル感がしっくりくるので、ついつい手が伸びるんです。
Commented by レイネ at 2010-01-18 20:52 x
aliceさま、弁慶格子って、着物の柄としては、モダンでもあり、お茶目で可愛いですよね。臙脂と鴇色なら、明るく優しい雰囲気で、暗い雨の日に着たら、気分だけでも晴れそう。
憧れの長羽織、持ってる人が羨ましくって。どんな色なんでしょう、薬草染めって?どんどん、着て下さい。また、流行が変わって、丈が短くなる前に。。。

ネットのきもの市場って、見てるとあっという間に時間が経って、際限なくのめりこみますよね。どんどん新しい品物が追加されるし、昔なら信じられないくらいのお値段だし。
羽織に仕立てられそうな小紋を探してます。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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