着物でペーターとハンスのコンサート@ライクホルト城

北ヨーロッパの冬は暗くて長い。
11月からは、冬時間だから夜明けは遅く日が暮れるのが早まり、雲が分厚いので太陽の顔を拝むことは少なくなる。それが、3月まで続くのだから、気分もどーんと暗くなる。
しかし、コンサート・シーズンは盛りに入るし、年末が近づくとパーティその他のお出かけの機会も増えるから、チャンスを逃さず参加して心を盛り立てるのだ。

冬の抗うつ対策として、一番効き目があるのは、着物でお出かけである。
あれこれ、コーディネートを考えるだけでも、心が華やぐし、絹の着物を纏うというその高揚感。
日本の女に生まれた幸せを噛み締める。
火曜日にはCoCo、木曜日にはアントワープでお寿司、土曜日にライクホルト城でのコンサート、日曜日にディナーと、この週は、4回も着物でお出かけが実現できた。


ピアノの師匠ペーターとヴァイオリニストのハンスのコンサートに出かけるのは、久しぶりだ。
しかも今回は、3曲も新レパートリーのプログラムであるから、聴きに行かずにはいられない。

W.A. Mozart Sonate in e KV 304
F. Busoni Sonate nr. 2 in e op. 36 A
F. Mendelssohn Sonate in f op. 4
J. Brahms Sonate nr. 2 in A op. 100

ブゾーニ以外は、この二人の演奏で聴くのは初めて。
ロマン派がメインのプログラムだが、わたしがやっぱり一番気に入ったのは、ブゾーニのヴァイオリン・ソナタだった。
後期ロマン派以降の、19世紀末から20世紀にかけて作曲されたヴァイオリン曲には、なんともいえない暗い観念が浮かび上がるような情感が漂って、妖しげな魅力がある。
ブゾーニのこの曲には、バッハからロマン派までの様々な要素が入り混じり、一筋縄でいかないから、聴いていて面白いのだ。ブゾーニのピアノ曲など、使われているモチーフが音楽史を俯瞰するかのようで、めくるめく世界に浮遊する心地がして、弾きながら気持ちがわくわくする。

お城の広間にコンサート用グランド・ピアノが置かれ、その前にヴァイオリニストが立つのだが、いわゆるステージはないから、奏者は客席と同じ高さで同じ空間にいる。
客側からすると、親密な音楽空間に身をゆだねることができ、贅沢この上ない気分になる。

ペーター主催のコンサートでは、ずいぶん昔から、休憩中にはコーヒー・紅茶とケーキ数種類が振舞われる。フリードリンク付きコンサートの先駆けである。
音楽会に出かけるというのは、日常生活とは隔離された世界でひと時遊ぶ、という要素も重要だ。休憩中もゆったりリッチな雰囲気に浸りたい。

コンサートの後は、ワインやソフトドリンクが振舞われ、演奏を終えてリラックスした奏者達とおしゃべりもできる。お得感があるだけでなく、社交の楽しさも味わえるのがいい。
知らない客同士も、パーティのようにおしゃべりに興じることになる。北ヨーロッパの冬を乗り切るためには、おしゃべりが精神安定剤の役割を果すほど重要なのだ。
その際、着物を着ていると、特に知らない人から話しかけられることが多い。ハナシの糸口に最適なのだ。(先日、お寿司を食べにアントワープまで出かけたが、着物だとお店の方も喜んでくれ、ちらし寿司の盛りも普段よりよかったようだ)

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     シンディーさんは、白地に臙脂の菊がびっしりと埋まった小紋。
     笛と紅葉が染められた、秋らしい古典的な柄の橙色の塩瀬帯。
     わたしは、黒地に赤の縞の泥大島。去年誂えたもので、自分サイズで
     自分好みの柄だから、着心地がいい。
     帯はネットでゲットしたヒゲ紬に牡丹の素描。季節的には外れてる。
     色半襟に初挑戦。といっても無難にクリーム色の無地。

二人で着物で出かけるときは、事前相談も重要だし、それも着物の楽しみのうちだ。
シンディーさんは着物キャリアが長く、沢山お持ちなので、大体わたしが先に決める。
そうして、色柄や素材が重ならず、お互いに引き立て合うようなものを選ぶのだ。
彼女は、コーディネートに季節感を出したり、演目に合ったものを盛り込むことが多い。

着物でお出かけをはじめてから、もうすぐ2年になる。大人の女の遊びとしては究極のものだし、今ではかけがえのない楽しみだ。
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by didoregina | 2009-12-01 15:03 | コンサート | Comments(6)
Commented by REIKO at 2009-12-02 12:13 x
写真を拝見して、「こりゃまたお2人、対照的な着こなしで素敵!」と思ったら、事前打ち合わせで互いに被らないようにしてるんですか!
なるほど、これには驚きました。
いわゆる「着物友達」がいないので、考えたこともなかったです・・・そうか、そうだったのか!
確かに、同じような色柄だと、並んで歩いててもイマイチになっちゃいますよね。
Commented by レイネ at 2009-12-03 17:01 x
REIKOさま、着物友達がいると、お出かけにも張り合いができて楽しいのです。でも、欲や見栄も張り合っちゃうということもあります。そして、欲しいものがどんどん増えていく。。。。

9月の上野では、わたし達も違う系統の色・柄・素材の着物で、会場の雰囲気にマッチしつつ引き立てあってたと思いません?
Commented by ロンドンの椿姫 at 2009-12-04 09:31 x
着物は仲間がいると楽しみ倍増ですよね。私もご一緒する方がいる時は事前に打ち合わせます。これが楽しいですもんね。レイネさんがロンドンにいらっしゃる時もしましたね。
1週間で4回もお召しになったなんて素晴らしいです。私も先週はなんと1週間に6回も着ました。その後、今は小休止どころか大休止かも。
他のお出掛け写真も楽しみにしてます。
Commented by straycat at 2009-12-04 21:21 x
レイネさん
>出かけにも張り合いができて楽しいけど、欲や見栄も張り合っちゃう。そして、欲しいものがどんどん
これ、よ~く分かります!
だって世の中にはステキな着尺や帯が一杯。
産地や素材や、織り方や、色んな染めもあるし、職人さんや工房によっても違います。
「こ~んなものがあったんだ」って毎回、目がランランとなってしまいます。
座右の銘は「足るを知る」
いつもこれを念仏のように唱えてますが、時々我慢してる分ば~っと買い物に走ってしまいます。日本は誘惑が多いです。
Commented by レイネ at 2009-12-04 23:28 x
ロンドンの椿姫さま、ああ~、ロンドンでの着物でオペラ、夢のような出来事でした。今年のイヴェント・トップ・スリーに入ります。コヴェント・ガーデンには着物が似合うゴージャスな雰囲気が漂うので、コーディネートには気張りました。
12月は、わたしも着物でお出かけの機会が、あまりなさそうなんです。アムスやブリュッセルには電車で行くので。。。
ところで、今日も一日中暗くて、雨がそぼふり、気が滅入りそうな典型的な冬の日です。
Commented by レイネ at 2009-12-04 23:36 x
straycatさま、織や染め、素材も、あまりに沢山色々あって、着物の世界は奥が深いし、踏み込むとずんずん深みにはまり、抜け出せなくなりますね。

もっぱら、ネットで注文しては、日本に帰る頃に仕立て上がるようにしてます。着物その他のサイトを見てると、ヴァーチャル・ショッピングで時間が経つのも忘れるほどで、海外に住んでいても誘惑は多いのです。今も、ネットの呉服屋の年末セールに惹かれる、煩悩の日々です。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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