無伴奏リコーダーの饗宴       演奏中のXXX厳禁

c0188818_22363730.jpg2009年9月15日
フランドル楽派の曲集 (フォルムシュナイダー写本「3声曲集」より)
リチェルカータ (ジョヴァンニ・バッサーノ)
2つのファンタジア (ゲオルク・フィリップ・テレマン)
ソナタ 変ロ長調 (ゲオルク・フィリップ・テレマン)
無伴奏フルートのためのシランクス (クロード・ドビュッシー)
ソナタ5番 変ロ長調 (ジョセフ・ボダン・デ・ボワモルティ)
はやく座って (クリストファー・タイ)



出演: ヴァルター・ファンハウヴェ
田中せい子
ダニエレ・ブラジェッティ

さわやか革命さんのマイナー・コンサートのお知らせに載っていたので、リコーダーのコンサートに行ってきた。ルネッサンス、バロックおよび20世紀のリコーダー曲ということで、興味を持ったのだ。
場所は、浜松の楽器博物館で、恒例のレクチャーコンサートの一環であった。

ヴァルター・ファンハウヴェは、フランス・ブリュッヘンよりは10歳以上若そうなオランダのリコーダー奏者だが、昔は、「サワークリーム」でブリュッヘンといっしょに活動していたそうだ。
田中せい子女史はファンハウヴェの弟子で、ブラジェッティ氏は、ミラノで田中女史とデュオを組んでいる。

前半の4曲は、ルネッサンスおよびバロックの曲(トリオとソロ)だったが、集中して演奏を聴くことができなかった。それは、以下の理由による。

地下の楽器展示室の一角にしつらえられたステージから2,3メートルほど離れた、最前列中央の席に座ったのだが、隣の小学校高学年もしくは中1くらいの男の子が、演奏が始まったとたん爆睡して、しかも、上半身を激しく前後左右に揺さぶるのだ。わたしの体にぶつかるし、もし、前に席があれば椅子の背に頭をひどくぶつけただろう。最初は、音楽にあわせて体が自然に動くのかと思ったが、平日の夜、オヤジに連れられて部活の後にやって来たコンサートで、日中の疲れが出たのだろう、演奏開始と同時に眠りこけたのだった。
演奏家の目の前だし、演奏してる人や、後に座った人たちはどう思っただろう。きっと、みんなわたしのことを非常識な母親だと思ったに違いない。というのは、その男の子は、清涼飲料水のペットボトルを持っているのを係員に見咎められ、かばんの中にしまわせられ、ついでに隣でガムをかんでいたわたしも、注意を受けたのだ。たしかに、「演奏中、会場での飲食は固く禁じております。」とアナウンスが入ったが、ペットボトルは持っていただけだし、ガムは演奏が始まる前に捨てるつもりだった。こんなに厳しいチェックの入るコンサート会場は、初めてだった。
それなら、「演奏中の睡眠はご遠慮願います」とでも、言ってもらいたかった。この男の子のおかげで、まったく演奏に集中できなかった。しかし、演奏が終わると同時に目が覚め、拍手をするとまた爆睡、という繰り返しは、お見事であった。

レクチャーコンサートだから、説明のトークが入る。今回が90回目という盛況のレクチャーシリーズで、反対側の隣に座った常連らしき人たちが、熱心にメモを取っているのにも、驚かせられた。
ファンハウヴェ先生の英語によるレクチャーを弟子の田中女史が日本語に訳す。楽器の種類や、どういう曲かとかを簡単に説明する程度で、まあ、レクチャーと言うほどの内容でもない気もしたが、とにかく、拝聴すべし、という雰囲気の横溢したコンサート会場だった。ガムなんか噛んでたら、国賊扱いだ。

休憩中は、暇なので、楽器博物館の展示物を見ていた。コンサートチケットを持っていると、当日は博物館もタダで入場できる。
レクチャーコンサートとはいえ、2時間びっしりと演奏とトークがあるのに、お値段は2000円と、とてもお得なお値段だ。定員100名限定で、当日は、丁度100席埋まったそうだ。リコーダーという楽器は、演奏人口は多いだろうが、この楽器だけのコンサートは、結構マイナーなものではないだろうか。

後半は、ドビュッシー作曲のモダンフルートのための曲でスタート。これが、なかなかいい。
ドビュッシーのピアノ曲、オーケストラ曲とオペラ以外のものには、ほとんどなじみがないが、あまり20世紀らしくない印象である。パンとシュリンクスの物語にちなむ曲だから、たしかに笛のソロにはぴったりだ。

ボワモルティエのフラウト・トラヴェルソのためのソナタも、リコーダー3本で演奏だ。3人の息が文字通り合って、目線を交換しアンサンブルを整えているのが見て取れ、楽しい3重奏である。

最後のタイの「はやく座って」は、ルネサンスの曲だが、複雑なポリリズムが20世紀的で、聴いていてこれが一番面白かった。
解説によると「ある声部が2拍子で動いている時に、もう一つの声部は3拍子で動くという作曲法で、極端な場合には、5拍子対4拍子、7拍子対6拍子といったような非常に複雑なポリリズムが発生します。このような箇所は聴いていても混沌として分かりづらいのですが、その後必ず各パートが同一の拍子に戻るセクションが置かれていて、そこに到達すると大きな安堵感と安定感を感じることができます」とのこと。

ファンハウヴェ氏はトークで、「ヤマハ製のあるリコーダーで、自分の持っているものと同タイプが製造中止になったのが惜しい。木材がメープルのため割れやすいという理由から、もっと堅いオークにモデルチェンジになったが、色や木肌の感触が異なり、音質もメープルのほうがいいから、ぜひ世界中の演奏家のために再製造して欲しい。ヤマハの品質は優れ、プロが使うシェアは非常に大きいのだから」と本音も語った。浜松は、楽器の町で、ヤマハの本拠地である。

コンサート終了後、演奏家に挨拶に行った。そこには、ヤマハ関係者の方たちもいらっしゃった。ファンハウヴェ氏はまたも、件の楽器の再発売のお願いをしていた。「自分が使った限り、割れやすいという問題はなかったのだから」と。

わたしは、「オランダから、聴きに来ました。リコーダーだけのコンサートは初めてですが、後半の3曲が特に素晴らしかった。ルネサンスの曲も20世紀の曲も、思いがけないほど複雑で美しく、目が開かれた思いです」などと、ファンハウヴェ氏に話した。氏は、そうですか、ありがとう、そう思いますか、と相槌を打ってくれたが、インタビューになりそうな、面白い話は聞けなかった。
レクチャーのトークを聴いた印象でも、あまり話すのは得意ではなさそうだったから、わたしは自分の感想を述べただけで、またお会いできますよう、と言って別れた。
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by didoregina | 2009-09-25 17:49 | コンサート | Comments(6)
Commented by bonnjour at 2009-09-26 06:41
演奏中のXXX厳禁って、もっとスゴイことを想像してしまいました。爆睡少年の保護者と間違われたに違いないレイネさん、とんだ災難で。

曲目の組み合わせが渋くて素敵です。
Commented by さわやか革命 at 2009-09-26 08:55 x
楽器博物館の公演に行かれたのですね。爆睡少年の件はホントに災難でした。どうしてそういう子どもを前の方に座らせるんですかねー。私が遭遇したのでは、前から2列目で隣りの親の膝の上に寝てしまった子、携帯ゲーム機をずーっとやってた子なんてのがいましたな。
でも、ガムをわざわざ注意しに来るというのも厳し過ぎのような気が……。近江楽堂の公演の方は非常にリラックスした雰囲気で、仲間うちのサロンでゆったりと聞いているような印象でした。さすがにヤマハのリコーダーの話は出ませんでした。
やはりブリュッヘンよりずっと年下なんですね。ということは、一緒にやってた頃は「新進気鋭のリコーダー奏者あらわる」という感じだったんでしょうか。
Commented by レイネ at 2009-09-26 20:18 x
bonnjourさま、ウケ狙いのタイトルでした。でも、少年の隣に座ってた父親が何もしないってのが、解せませんでした。係員にしょっ引かれても仕方ないくらい、泥酔みたいにひどい状態なのに。

リコーダーだけのコンサートなので、印象がちょっと軽めですが、いろんな種類をとっかえひっかえだったのと、選曲のよさで楽しめました。
Commented by レイネ at 2009-09-26 20:25 x
さわやか革命さま、近江楽堂のとは多分同じプログラムだと思いますが、こちらは3000円ほど安めで、ごめんなさい!
ガムを注意しに来た係員は、ご丁寧にもティッシュを差し出すんですよ。「いえ、もう捨てましたから」と辞退しました。

ファンハウヴェ氏は、リコーダー界では、優秀な教育者のようです。アムステル音楽院で後進をどんどん送り出したし、教則本も出してるし、楽器博物館の館長さんも、氏のことを「先生」と呼んでましたし。
ヤマハに一言どうしても言いたいために、ここでのコンサートを行ったんでしょうかね。
Commented by Mev at 2009-09-27 23:52 x
爆睡する少年とは我が家の長男のことかと思いました。一瞬。 あやつはコンサートへ出かけてもいつも半分くらいは爆睡していますが、船はこがず、うずくまるように寝てしまうのです。
私はオランダで日本人リコーダ プレーヤのコンサートへ行きました。片手に収まるほどの小さい笛からファゴットサイズの大きさのリコーダまでさまざまな演奏を一人で聞かせてくれて楽しかったです。
Commented by レイネ at 2009-09-28 14:59 x
Mevさま、演奏中にうとうとしてしまうことが、わたしもありますが、他人に迷惑をかけるいびきと舟こぎだけは、勘弁してもらいたいです。起すわけにもいかないし。コンサートは普通夜で、聴くほうも疲れがでてるから、眠ってしまうのは理解できますが。

やっぱり、リコーダー留学のメッカというと、オランダなんでしょうね。色々な大きさと色・形のリコーダーを、とっかえひっかえ演奏してくれるのは、見ていても楽しいですね。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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名前:レイネ
別名: didoregina
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オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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