Albion, here we come

最初の2日間が悪天候だったおかげで、肝が座り、体も海に慣れた。
3日目にして、いよいよ、ドーヴァー海峡を横断するのだ。

狭い海峡は、フェリーや貨物船・タンカーがひしめき、潮流も速いため、小型ヨットには剣呑な海域だ。
最短直線コースは、カレー~ドーヴァーだが、カレーにはヨット・ハーバーの設備がないから、泊まるなら湾内に投錨し、満干の時間を計って入出港しなければならない。そうすると、夜中の2時出発が最適、みたいなことになるので、ダンケルクからドーヴァーに渡るほうが現実的なのだ。

c0188818_19314058.jpg

グィドのPCに搭載されたナヴィゲーション。プロ仕様で、最適ルートを計算できる。

しかし、一直線に渡ることはできない。
ドーヴァー海峡は、船の交通量が多いだけでなく、商業船のための北海のトラフィック・ラインというものも、真ん中を通っている。トラフィック・ラインはまさしく高速道路のようなもので、そこをヨットで渡るのは、高速道路を自転車で横断するほど、細心の注意を要する。
しかも、狭いということは、潮流が速いということでもある。

c0188818_19194584.jpg

    ドーヴァー城にあった、ダイナモ作戦の航路をタイルにしたもの。

奇しくも、わたし達がダンケルクからとった航路は、ダイナモ作戦と同様、まず、カレー近くまで海岸沿いに航行し、トラフィック・ラインの走行方向に逆らわないようにして海峡を横断する、というものだった。
しかも、ダンケルク~カレー間は、距離は短いのに潮流が激しく、流れに逆行したヨットはなかなか前進しないので、とても長く感じられた。

この日も、波は高い。しかし、前日2日ほどではないし、いつもフランスかイギリス側のいずれかの陸地が見えているから心強い。360度、どこにも陸地が見えないと本当に心細くなるものだ。

潮流と満干の時間を考慮に入れ、無駄なく進むため、朝はかなり遅く出発した。ドーヴァーに到着したのは夕方だった。

c0188818_19293589.jpg

   ドーヴァーの白い崖とドーヴァー城。その下がハーバー。

しかし、マリーナにはヨットを係留できるスペースがなかった。
無線で入港許可を求めると、「湾内に投錨して待機ください。バースに空きができ次第連絡します。」とのことで、仕方なく、広い湾内に錨を下ろした。ここからは上陸できないから、休むまもなく夕食の支度だ。ゆらゆらと不安定な船内で食事を作ったので、わたしは全然食欲が湧かない。皆は、疲れているのでわたしの分も全部食べてくれた。

ここからはドーヴァー城がよく見える。
しかし、錨ひとつでは船は安定しないので、風で360度まわる。このままじゃあ、気分が悪いままでいやだなあ、と思いつつ、だめもとで、もう夜遅かったがもう1度マリーナに無線連絡すると、空きができた、と言う。喜び勇んでマリーナに入り、桟橋にしっかり係留した。
現金なもので、船が安定して陸に繋がったとたん、空腹になり、チーズとワインをどんどん空けてしまった。

翌日もドーヴァーに留まり、ドーヴァー城の観光などをした。
ここには、ダイナモ作戦その他、第2次世界大戦中の司令部や病院設備が残っていて、見学できるのがよかった。
城からの海やハーバーの眺めも最高だ。

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ドーヴァー2日目の夕食も自炊で、野菜のリゾットとサーモンのソテー。
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by didoregina | 2009-08-03 13:03 | セイリング | Comments(8)
Commented by sarahoctavian at 2009-08-03 20:29 x
ドーヴァー海峡って世界(それとも欧州でだった?)で一番交通量の多い水路とか聞いたことあります。その上流れが急ときた。外海のセイリングとは運河や湖とは全く違いますね~。それに回り陸地が見えないのって結構恐怖感覚えそうだわ。
でも息子さんたちもこんなバカンスならやること一杯で退屈する暇ないですね~。よいよい。
Commented by レイネ at 2009-08-03 23:47 x
sarahoctavianさま、ヨットでドーヴァー越えができただけでも満足ですが、あの白亜の崖が見え、近づいてくると感慨もひとしお。

航行時間は毎日長かったんですが、長距離だと、クルーはあまりすることがないんです。グィドが刻々と最適ルートを言ってくるのに合わせて、主人が舵を取るのですが、風向きはあまり変わらないから。傾いたヨット上でバランスを取り、踏ん張るのに精一杯。
特にわたしと長男は、波が高くてうねりが激しいほど、自己防衛能力が働いて(船酔いを避けるため)、眠くなるんです。波が子守唄?
Commented by アルチーナ at 2009-08-04 10:06 x
ドーヴァー海峡、交通量が多い上に、流れが速いなんてちょっとどころかもの凄く怖いですね。
1年くらい前、東京湾で自衛隊の船と2人乗りの漁船が衝突し、沈没、2人とも多分亡くなられたようなのですが、ルール上、自衛隊の船がよけるべきだったようでテレビではかなり批判していましたが、雑誌では大きな船が交通量の多いところでよけると却って危ないから漁船がよけるべきだったという事を書いている方もいて、それも一理あるような気がしたのですが、実際にはどうなのでしょうか・・?
ナヴィゲーションの青い線よりも陸地側を通っていったのですか?
それにしても普段は決められた「道」を通る事に慣れてしまっているので、こういう全く「道」の無いところをどう進むのかという戦略を考えるのは難しいですけれど面白そうですね。
戦争は良くないことは大前提で、・・でも戦略を立てるというのは面白い事なんだろうなとちょっと思いました。
Commented by Mev at 2009-08-04 10:21 x
Wikiのダイナモ作戦からノルマンディー上陸にとんで、地図を見ていたら「ワクワク」感倍増で、まるで自分が船を駆るような気持ちになりました~。
それにしても、揺れる船内で料理するなんて私にはとても無理です。包丁で手を切りそう。クルージングはバランス感覚と三半規管も鍛えられそうですねー。
Commented by レイネ at 2009-08-06 04:00 x
アルチーナさま、東京湾の海難事故の2隻の状況がわからないのでなんとも言いかねるのですが、多分ルールではそうなんでしょう。でも、それとは別の船乗りエチケットみたいなものもあるので、世論は2分してしまったのでしょう。

ナヴィの青い線は、予定航路で、風向きと潮流の関係からベストのはずだったのですが、実際は、右上の緑の区域が、軍の射撃演習エリアで、わたし達が通ったとき、丁度射撃訓練が始まったのです。それで、無線で緊急連絡が入り、危険だから即刻、沖に逃げるように言われ、トラフィックラインぎりぎり(その下の紫色の線)まで、沖に出ました。
左のほうの同心円の中が、写真を撮った時点での、ヨットの位置です。

昔の海戦には、ロマンがそそられます。
Commented by レイネ at 2009-08-06 04:10 x
Mevさま、戦争って時がたつと美化されてしまうのが、ちょっと怖い。でも、史上最大の作戦とか聞くとロマンを感じてしまいます。
ノルマンディー上陸作戦のあった場所を訪れると、イギリスやカナダの連合軍兵士の墓地の規模に驚かされます。見渡す限り整然と並ぶ十字架の墓碑。呆然というか神妙な気持ちになりますね。

今回は、前回に懲りて、船酔い対策ばっちりだったので、なんとか乗り切れました。慣れると強くなるし。
でも、ヴェテランのグィドでさえ、ラムズゲイトからオステンドまでの10時間に及ぶ航海のあとは、陸に下りてレストランに入ってからもスクリューの振動感覚が足に残ったままで、震えが続きました。
Commented by bonnjour at 2009-08-09 18:10
いやー、大冒険でしたね。ヨットって頭脳と体力の両方が必要だからレイネさんを夢中にさせるのだと、納得。
Commented by レイネ at 2009-08-10 04:56 x
bonnjourさま、航海中は、舵を取るとき以外は眠ってばかりで、全然頭脳を使いませんでした。ナヴィゲーターが凄すぎてかなわないので、航路プランはグィドの言うなり。その代わり、肉体と精神を酷使した感じでした。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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