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Il Segredo di Susanna と La Chanson de Fortunio

夏休み直前には、学生によるオペラ公演がよくある。卒業制作も兼ねているのだろう。
マーストリヒト音大の学生によるオペラ・ザウドとの共同制作のオペラを観にいってきた。

Il Segredo di  Susanna と La Chanson de Fortunio_c0188818_18345480.jpgMuzikale leiding    Jeremy Hulin
Regie    Martin Schurr
Il Segreto di Susanna
Ermanno Wolf-Ferrari
Susanna    Donij van Doorn
Gil    Christoph Plessers
Sante    Johannes Muller
La Chanson de Fortunio
Jacques Offenbach
Fortunio    Johannes Muller
Marie    Evi Roelants
Valentin    Aline Lermytte
Babett    Amelia Jardon
Paul    Stefan Adriaens
Edward    Cynthia Knoch
Karl    Catherine Maufroy
Max    Joanna Budna
Louis    Amelie Hennecker

聞いたことのないオペラだったが、どちらも1幕の軽い喜劇調のものであった。
まず、エルナンノ・ヴォルフ=フェラーリの「スザンナの秘密」は、作曲されたのが前世紀初頭ということとポスターの印象から、なんだか、プッチーニの「外套」のような暗いストーリーかと思っていた。
スザンナの秘密とは、実はたわいのないものなのだが、年上の夫ジル伯爵は、タバコの残り香から、妻の不義を疑い、ジェラシーから妄想が湧き、それが喜劇になる、という構成であった。間男を殺して外套に包む、というようなおどろおどろしい展開にはならなかったし、音楽も予想では、なんとなく印象派風か後期ロマン派か新ウィーン楽派かと思ったのが肩透かしの、プッチーニ調の能天気なものだった。

主役二人は、学生とは思えないほど成熟した声で演技も抜群だった。特にスザンナ役のドナイ・ファン・ドールンが、掃き溜めに鶴、というほどのメッケモノ。華やかなルックスで、堂々としたスピント調の声が出る、スター性十分の歌手なのだった。
Il Segredo di  Susanna と La Chanson de Fortunio_c0188818_1992450.jpg

            休憩中に写真を撮らせてもらった。

変わった名前なので覚えやすい。地元のオペラ・ザウドではすでに端役(2年前の「外套」!)で出ているし、来シーズンのORWとオペラ・ザウドの共同プロ「ダイドー」にも侍女と魔女役で出る。声質からリリコとはいえないソプラノなので、ベリンダ向きではないが魔女役はうってつけだろう。
ググってみると、自分のブログにも行き当たった。昨年の地元LSOのメンデルスゾーンのコンサートでソリストの一人として歌っていたのだった。そして、なんと、アンドレ・リューのニューヨークと東京公演にもソリストとして参加したのだという。ここまでくると、もう地元では、オペラ・ザウドで主役を貰う以外、階段は上れないから、外国で研鑽を積むなりして、もっと大きな舞台を目指すべきだ。
Il Segredo di  Susanna と La Chanson de Fortunio_c0188818_19123299.jpg

             カイリー・ミノーグをふっくらさせた感じの美人

今回は、彼女を発掘できただけで満足してしまった。こういう新発見があるから、学生や若い無名の歌手の出るオペラやリサイタルは 、楽しいのだ。青田買いしておくと、これからどう成長していくのか、追っていく楽しみが加わる。

オッフェンバックの一幕オペラもたわいのない喜劇だったが、休憩前のオペラで堪能・満足してしまったのと、暑いのとで気もそぞろ。台詞も入るオペレッタだが、だれてしまった。
オペラ・ザウドのスタジオ、といって結構大きな戦後に建ったような教会をオペラの練習用に内部を造り替えた建物なので、音響は悪くないが、夏は暑く冬は寒いだろう。
オーケストラも音大の学生が演奏したが、室内楽の構成で各楽器1人ずつ位で、ヴァイオリンの子が上手かった。

Il Segredo di  Susanna と La Chanson de Fortunio_c0188818_19321219.jpg

マーストリヒトでもベルギーとの国境に近いこのあたりは、外国人労働者が多く住む地域で、公営アパートの窓から出ている衛星放送受信用の円盤がやたら目に付くことから、シックな地区ではないのは一目瞭然。そうなると、もともと住んでいたオランダ人も逃げ出して、その結果地価が下がり、住むのは比較的貧しい外国人労働者ばかりになるという悪循環になる。だから、キリスト教徒数が相対的に減り、信者が減ったせいで維持できなくなった教会が、オペラ・スタジオに使われているのだろう。

学生公演にはだいたい寄付が付き物で、今回のオペラの入場料12ユーロ50セントもザンビアのエイズ孤児の学資に充てられる。
by didoregina | 2009-07-04 12:31 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
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性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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