トルコでヨット三昧 その1

オランダ人には海洋民族の血が脈々と流れ続けているんだな、と実感できるのは、5月休みにギリシャ(去年)なり、トルコ(今年)なり、国内ならアイセル湖やゼーランド地方(おととし)をヨットでセイリングする時である。
4月最後と5月最初の週は、「5月休み」と称して2週間の休みになる学校が多いので、それにあわせてシーズンの始まったばかりのエーゲ海セイリングをすると、他の国ではまだヴァカンスの季節ではないので、行き交うヨットにはたいがいオランダの旗が翻っているのだ。

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個人でヨットを所有することが割と普通にできて、特別なことでもステータス・シンボルでもない国であるおかげで、わたしたちも6年前から長さ6メートルほどのオープンヨットを持っている。国内の水上用である。
とにかく水の上にいると心が落ち着き、波に揺られて潮風に吹かれるのが快感、水上では花粉症に悩ませられることもないし、とわたしと子供達にとって大層ありがたいことばかりで、家族揃ってできる数少ないスポーツでありホビーである。

5月休みや夏休みや秋休みには、太陽の下、地中海でセイリングしたくなるので、オープンヨットでは無理だ。それで、家族4人居住できるクルーザータイプのヨットを借りる。今回はBavaria 32という長さ約10メートルのマルス号。ドイツ製の普及型で帆走しやすいが、フランス製のに比べると居住性の面でやや劣る。

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今回のセイリング・エリアは、トルコ南西部、いにしえのリキア王国にあるフェキエ湾だ。
到着空港はダラマンで、チャーター・ヨットが係留されているマリーナは、グチェックという静かな町にある。
グチェックは、目抜き通りとそれに平行してレストランの立ち並ぶ海に面したブールヴァードと、かなり収容能力はあるが湾全部を利用した設計のおかげでゆったりしたマリーナだけの、観光的ではないこじんまりした町で、たたなづく山なみの姿が伊勢湾のように日本的で郷愁を誘う。

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オランダ人とイギリス人の間で特に人気のヨット・チャーターの形式に、蘭語でflottielje, 英語で flotillaというのがある。
個人でチャーターしたヨット同士が船団を組み、プロのリーダー船を中心に1週間なり2週間毎日港から港にセイリングする。到着の夕方と出発前の朝、顔を合わす以外は、各船自由にセイリングするのだが、リーダーからは、毎朝、その日の天候(風、波、気温・水温、荒天)、おすすめルート、ランチやシュノーケリングに適した投錨地、浅瀬に注意、などのブリーフィングを受け、エンジンや帆などにトラブルがあった場合は、リーダーが助けてくれるというシステムで、初めて航行する海域ではこれが安心の元なのだ。

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今回は、経済危機の影響か、1週目は3隻、2週目は4隻のみのフロッティラで、2週間セイリングするヨットは我が家だけだった。2週間とも8隻から10隻で組んだ去年のギリシャのフロッティラとは、たった1年なのに隔世の感がある。(ちなみに去年の5月休み初日のスキポール空港は、盆と正月がいっしょになった成田空港もかくやと思われる空前絶後の混雑で、空港建物内では満員電車のごとく文字通り身動きならず、建物の中に入れない人、チェックインできない人、チェックインしてもゲイトまでたどり着けない人が続出で、阿鼻叫喚の地獄図のようであった。もちろん飛行機の発着にも支障をきたした。)

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去年のギリシャ・レフカス島地方同様、今年のエリアにも港町はほとんどなく、毎日、このように静かな入り江の奥にたった一軒あるレストランの桟橋に係留するという、世塵から離れたまことに心休まる2週間であった。
リーダー合わせて12人だけの船団だし、入り江には1軒のレストラン以外全くないので、結局毎晩全員いっしょに食事をした。前菜とメインで一人30トルコリラというのがどこでもお決まりだった。約15ユーロである。トルコの一般的物価に比べたら高いが、係留料金とサポート料金込みだと思えば納得できる。何しろほかに選択の余地はない。

トルコ料理の調理方法は、炭火で焼くか煮込むかで、素材のうまみを生かしたシンプルなもので、口にあう。野菜が抜群に美味しく、ギリシャ料理のようにくどくない味付けなのがうれしい。

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4月の終わりなので、夜は冷える。キャンプファイヤーの火がありがたい。
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by didoregina | 2009-05-13 12:27 | セイリング | Comments(8)
Commented by sarahoctavian at 2009-05-13 20:24 x
わ~い、セイリング・バカンス素敵だわ~。我が家はかれこれ7,8年前、アイルランドでモーターですがハウスボートを借りてシャノン川を行き来しましたのがすごく楽しかったの。いつかまたやりたいけれど・・ドイツでは自分のボートはやっぱりお金持ちしか無理です(レイネさんは謙虚なさってるけど、オランダだってある程度はそうでしょう?)
船乗りになるのが若い頃の夢だったとか言う我が夫は、それでも往生際悪くボートメッセや雑誌・新聞記事などチェックしてますよ。今年の夏(日本でお金使いすぎなければ)北海方面に旅行したら、息子をDHHのヨットコースに放り込もうと思ってます。夢は家族でセイリング。水側から見る風景って新鮮ですよね。心が休まります。
あ、それからトルコブルー色した秘密の入り江もとても綺麗。
Commented by レイネ at 2009-05-13 20:54 x
sarahoctavianさま、自分で操縦する船の旅は格別ですね。イギリスではカナルボートを個人で借りて川や運河を航行するヴァカンス形式がありますね。アイルランドっていうところがレアでいいわ。
デュッセルドルフで1月にある世界最大の水上スポーツ・メッセも楽しい。夢は広がりますね。

ヨットを始めたばかりでまだ免許がなかった頃は、スキッパーを雇ってスロヴェニアからクロアチアのイストリア半島をセイリングしました。免許を取った年にもいきなり家族だけでは怖いので、アテネからスキッパーを雇いました。

ベルギーの北海をセイリングするならお勧めのヨット・チャーター会社があります。ただで(!)スキッパーを付けてくれるのよ!(食費は当然全部こちら持ち)。それで2年前ロンドンに行こうとしたのが、荒天であきらめ、ゼーランド地方に変更したのです。ゼーランドは可愛い町が多くて風光明媚で波も穏やかなのでおすすめ。ベルギーからなので北海の荒波も味わえるし。週末、週日、および週単位で借りられますので、ご検討ください。www.channelsailing.be
Commented by sarahoctavian at 2009-05-13 23:31 x
ハウスボートだと、そうですよね~イングランドのあの細長いカナルボートやスウェーデンのゴータ運河、それに南仏のカナル・デュ・ミディ、ドイツ国内ならメクレンブルク湖水地方を湖から湖に・・とか調査済みなのよ~。そんなに行ってたら本当に日本旅行が後回しになってしまうわ(汗)。でも外海をセイリングするのはきっともっとスリリングだろうなと憧れます。ロンドンにヨットで入るなんて、まるでフランシス・ドレイクかティリアン・パーシモンか・・・ロマンだなぁ。
まずは私も免許とらなきゃいけませんかね。
Commented by レイネ at 2009-05-14 00:03 x
sarahoctavianさま、ヨットの国際免許を取るのは結構大変ですよ。海上ルールや航海術など、学科試験では覚えなきゃいけないことがかなり多くて。
だから、スキッパーを雇うってのが手っ取り早いし、ずっと安く付くかも。

海洋文学や映画「マスター&コマンダー」は、ロマンがあってい好き。でも原点は青池保子かも。
Commented by Mev at 2009-05-14 02:39 x
ヨットの旅!なんて優雅で素敵なんでしょう。 トルコの美しい海、気候、静かな入り江と素朴な料理という組み合わせも最高ですね。
ヨットの国際免許ももちろんお持ちなのですね。はあ~っ。うらやましい~。
Commented by レイネ at 2009-05-14 06:35 x
Mevさま、ヨットは、帆走するためエンジンを切ってモーター音が聞こえなくなると、残るのは風と波の音だけなので、その静けさに心が和み気持ちいいのです。特に夏前は、見晴るかす限り他に帆影もない、というのがホメロスの海を独り占めしてるようで最高。
Commented by アルチーナ at 2009-05-14 10:29 x
ヨット、いいですね~
学生時代、お遊びですが2人乗りのヨットに乗っていました。
エンジンと違ってスーッと海面をすべるような感じが気持ちよいです。
入り江がとてもキレイです!食事も・・こういう所で食べたら何でもおいしいのでしょうが、美味しそうです!!
Commented by レイネ at 2009-05-14 16:57 x
アルチーナさま、2人乗りだとかなりハードなスポーツですね。海だと特に。
風が動力源ていうところが、自然と一体になれるので爽快ですよね。フネも小さいほど水面と自分との位置が近いので、本当に水と遊ぶという感じになれて。
トルコ料理は日本人の口に合うのでうれいいんですが、食べ太り。


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
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音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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