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I Capuleti e i Montecchi @ ROH

憧れのロイヤル・オペラハウス・コヴェント・ガーデンでの、わたしのオペラ・デビューは、なんともすごいキャストによるベッリーニの「カプレッティとモッテッキ」である。
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Composer  Vincenzo Bellini
Director   Pier Luigi Pizzi
Revival Director   Massimo Gasparon
Designs   Pier Luigi Pizzi
Fight Director   Mike Loades
Lighting   Bill McGee  Pier Luigi Pizzi

Conductor   Mark Elder

Giulietta   Anna Netrebko
Romeo   Elina Garanca
Tebaldo   Dario Schmunck
Capelio   Eric Owens
Lorenzo   Giovanni Battista Parodi

アンナ・ネトレプコによるジュリエットとエリーナ・ガランチャによるロミオという、空前絶後の夢のようなコンビをナマで観て聴けるというのは、ロンドンならではの醍醐味であろう。しかも、座席は舞台袖脇、指揮者を真横から見る最前列。上階はロイヤル・ボックスになっている、その真下である。
だから、声はびんびん直接耳に届き、オペラ・グラスなしでも歌手の表情がよく見える。
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            こんな位置で、専用の字幕付き。

気になるお値段は、54ポンドと、信じられないほど手ごろである。ただし、誰もが鵜の目鷹の目で狙う席なので、チケットをゲットするのは非常に困難だ。ロンドンの椿姫様のような修羅場をくぐりぬけてきたヴェテランでないと手に負えない。または、幸運の神が微笑むという千載一遇に巡りあうかどうかにかかる。

こんな幸運を今回は、他に4人の日本人の方と共有できた。こうやって、大勢でオペラ観劇というのがまた楽しい。始まる前から盛り上がるし、幕の開く前のちょっとしたおしゃべりで気分は否が応にも高まる。
I Capuleti e i Montecchi @ ROH_c0188818_423940.jpg

              着物姿が3人なので人目を引いた。

このオペラは、ナマで聴くが初めてなのに、CDによる予習もしてこなかった、ぶっつけ本番である。
なに、ストーリーは「ロミオとジュリエット」でおなじみだし、ベッリーニの音楽の美しさに酔いつつ主役二人に集中していればいいんだから、という、不勉強・不謹慎な態度で臨んだ。

そんな態度のわたしなのに今回のオペラに関してしっぺ返しは食らわなかった。主役二人は、このプロダクションを5,6回観ていらっしゃる椿姫さんやdognorahさんのおっしゃるには、その晩が最高・絶好調だったという。

映像なしでCDやラジオから聴くネトレプコの声は、わたしにとって重苦しすぎる感じがするが、それが映像といっしょになるとぷっくりと可愛らしい顔立ちとの対比で弱まるので、歌う顔を見ながらだとまあまあ好きだ、という程度。声というのは、相性というか好みの問題だからいた仕方ない。
今回は、実物が間近で歌うのを観て聴けるという、願ってもない体験ができたので、彼女の声がずっと好きになった。音響がいいせいか、ダイレクトに耳に届く声は、意外にもかなり心地よかった。ナマだとこんなに印象が変わるし、座席位置による音の違いもあろうから、CDだけで好き嫌いを決めるのは早計だと思った次第である。

基本的にはソプラノよりメゾの声のほうが好きなので、期待はガランチャに大きかった。
肌理が柔らかく、温かみがあるため年齢よりずっと成熟した印象の声は、声量が大きいのにコントロールが抜群に利いている。ほとんど欠点が見つからないほどである。メゾには甘い、というか、好きになる確率が高いわたしではあるが、ガランチャにはまず満点に近い点数を与えたい。マレーナ様とどっこいの勝負である。
長身の立ち姿も凛々しく、表情にも若者らしい美しさが溢れているので、ガランチャのロミオにはきっと他の誰も敵わないだろう。
これからもナマで相見まえることはあるだろうか。これからどういう方向に行くのか、結構気になる。

演出で気に入ったのは、殺陣である。コーラスにきちんと殺陣の専門家をつけて訓練した成果で、ケープを翻すカプレット家とモンテーギュ家の若いもんたちの争うシーンは、わたしをルネッサンスの世界に誘ってくれた。
ガランチャもまるで騎馬警官のような伊達姿で絵になる美しさだった。
ジュリエットには可憐さが不可欠だが、ネトレプコはぴったりだったと思う。不自然な動きのない要所を押さえた演出のせいだろう。
ちょっと古めかしいほどオーソドックスな舞台装置や演出は、音楽を邪魔せず雰囲気を添えるだけという、こうあるべき見本のようだった。
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ストーリー展開も音楽もくどくなく、クライマックスに到達するまでが長すぎないいいオペラだ。
全てに堪能でき、夢見心地のまま幕が下りた。
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by didoregina | 2009-04-05 22:22 | オペラ実演


コンサート、オペラ、映画、着物、ヴァカンスなど非日常の悦しみをつづります。


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プロフィール

名前:レイネ
別名: didoregina
性別:女性
モットー:Carpe diem

オランダ在住ですが、国境を越えてベルギー、ドイツのオペラやコンサートにも。
ハレのおでかけには着物、を実践しています。
音楽、美術、映画を源泉に、美の感動を言葉にしていきます。


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